探し物が得意な能力の便利な使い方

 3つ数えた直後、幻覚が見えた。これを一般的には走馬灯と言うのだろう。だが、走馬灯に関してはこの世界に来た時点でリセットされているらしく、この世界の事のみ流れた。お陰で内容が薄く、走馬灯と言うよりといった方がいいスピードだった。

 事故直前の事も流れた。そこは他よりもっと遅いスピードで、という具合だった。

 そんなのろまな映像を見ていると、とあることに気づいた。

「窓がない。」

 前から知っていたことだが、少し忘れかけていた。そして、こう思った。

「ここから抜け出せば衝撃をまともに食らわなくて済む。」



「ふぁ~ぁ。次の世界かな。また死んだよ~。さあ、次の世界はどんな感じかなぁ~!」

 僕はそう言いながら目を開けた。周りを見渡すと、病室のようだ。すると、見覚えのある顔を見つけた。国王だ。国王は少し引いたような顔をしている。口を開いた。

「君って、なんか変な趣味してるんだな。」

 ――――――――――気まずい。


 死んでいなかったらしい。どうしてだろう。そこで、

「自分って、どういう状況だったんですか?」

 と聞いてみた。国王は、

司令コマンダーから、家にぶつかった車の横に君が落ちてたと聞いている。多分ぶつかる前に飛び降りたのではないかということだ。ちなみに、君の車がぶつかった家に住んでいた人が轢かれて亡くなったのだが、問題はない。」

 ――あるだろ。問題。十分に。

そういえば、消えかかる意識の中で飛び降りれば助かるかもと考えた記憶があった。周りの車の欠点の記憶に埋もれかかっていた、特に大したことない(わけない)記憶を掘り起こして、窓を思い出して。

そんな中、隣にいた看護師が話し出した。

「そういえば、貴方って特殊能力ありますか?」

は?

「なんか今までの勇者って一つ特殊能力を持ってたんですよ。一兆分の一秒だけ過去にタイムスリップできる能力、子どもに気にされない能力とかそんな感じで。」

後者に関しては影が薄いだけのようにしか聞こえないのだが。

「この生還って特殊能力を使わないとできない気がして。」

「確かに。だけど思い当たるものと言えば探し物が得意な能力くらいですが。」

そういった瞬間、はっと気づいた。

探し物が得意な能力、探しているものがすぐに見つかる能力――つまり、探しているものだったらすぐに見つかるんだ。物でも、人でも、助かる方法の手がかりとなる記憶でも。

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