第22話 遊園⑤

竜也だ。

端的に言えば俺はお化け屋敷というモノを舐めていたんだと思う。

舐めた結果、栗山に肩を借りながら移動し、顔を青ざめさせる結果になったわけで、こうなれば不良としても男としても格好悪くて仕方ない。

まぁ、小便を洩らさなかっただけでも御の字か。


「大丈夫、竜也君?」


ベンチに座る俺の顔を覗き込む栗山。この女はスゲー奴だ。お化けが出て多少の悲鳴は上げても、お化けが居なくなるとケロッとしてやがる。小さいと思って侮れない。情けないことに俺なんかもう子猫を見ただけでも悲鳴を上げそうだ。


「だ、大丈夫だ。ただ少し休ませてくれ。」


「そう?じゃあ飲み物買って来るね。竜也君はいつものブラックコーヒーだよね?」


「お、おぉ、頼む。」


そう言うと栗山はトコトコと自動販売機の方に走って行った。気が利く女だな。にしても、どうして俺がブラックコーヒーを好きなのを知っているんだろうな?一緒に居る時にブラックコーヒーなんて飲んだこと無いと思うのだが。まぁどうでも良いか。

今日は正の奴とサシで遊園地だった筈で、最初に女共がやって来た時はイラっとしたが、こういう大人数で遊ぶのも悪くねぇな。

いつも一人で一匹狼気取っていたが、本心では誰かとツルみたいとか、俺自身思っていたかもしれないな・・・だとしたら笑えるぜ。


「きゃあああああああ‼」


ん?悲鳴?しかもこの声は栗山じゃねぇか?

声のした方を見ると、遠くの方で栗山と五人の集団の男達の姿が見えた。

もしかして言い寄られてるのか?だとしたら男として放っておけない。俺は未だ震えが止まらない体で何とか立ち上がり、栗山の居る方に向かった。



どうも美鈴です。只今大ピンチです。


「君、可愛いね。おじさん達と遊ばない?」


「きゃあああああああ‼」


自動販売機でジュースと缶コーヒーを買おうと思ったら、鼻息の荒い男の人達が私に話し掛けてきました。他にも女の人は居るのに私の様な幼児体型に話し掛けて来ると言うことは、彼らはまごうことなきロリコンです。

ロリコンなのは趣味の様なモノなので好きにしてくれていいのですが、喋り掛けてくるのは勘弁して欲しいのです。男性に五人に言い寄られては、思わず気の弱い私は悲鳴を上げちゃいました。


「はぁはぁ、大丈夫怖いことはしないから、お兄さんたちは安全安心だよ。やましい気持ちなんて一ミリも無いよ。」


その一ミリにやましい気持ちが一体どれだけ濃縮されているのでしょう?五人とも鼻の下を伸ばしているので、ハッキリ言って性的な目で私のことを見ていると思っても過言では無いでしょう。本当にガチで怖いです。


「そ、そうだ飴ちゃんあげよう。薄荷キャンディーお食べ♪」


「ち、近寄らないで。」


ジリジリ迫って来て怖過ぎます。あと薄荷キャンディーは嫌いなので絶対要らないです。


「おい、テメーら栗山に近づくな。」


この声は竜也君。竜也君が私を助ける為にわざわざ来てくれたことに感動した私は、笑顔で彼の方を見ました。しかし、助けに来てくれた竜也君の顔は未だに青ざめたままで、足もガクガクと震えています。

どうやら先程のゾンビ猫マタに追いかけられた恐怖が抜けていない様です。あの時の竜也君は口から泡を吐いていて気絶寸前でしたからね。けど苦手なモノに立ち向かう彼もまた格好良くて、増々好きになってしまいました♪

状況的には最悪ですが、次回に続きます。


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