第21話 遊園④

「子猫ーランド楽しいねぇ♪フ―――――――♪」


「はい、とっても楽しいですね♪」


どうも正です。只今コネコーカフェという園内の飲食店でコーヒーを飲みながら休憩中。

四人掛けのテーブル席の長椅子に僕と黒姫さんが一緒に座り、向かい合うようにテーブルを挟んで反対側には竜也と美鈴が座った。


コネコーデッドコースターの後、黒姫さんと美鈴はすっかり打ち解けたらしく、にこやかに会話をしている。

あの後、役目を終えたオムツから下着に交換を果たした黒姫さんから「言うまでも無く、バラしたらどうなるか分かってますよね?」と素に戻った彼女からそんなことを言われて、俺は即答で「もちろんです!!」と良い顔で答えた。

というか天下の白金 姫子がお漏らししたなんて、そんな情報を洩らした所で誰も信じるわけはあるまい。白金さんの心配は杞憂である。


「次は何乗ります?」


美鈴がテーブルにコネコーランドのマップを広げながらニコニコしている。

何でも良いが絶叫系のアトラクションは勘弁して欲しい。じゃないと黒姫さんが再び洪水を起こしてしまう。


「俺に決めさせてくれねぇか?さっきはジェットコースターで情けない悲鳴上げちまったので、別の何かでリベンジしてぇ。」


そう言いだしたのは竜也である。その顔は真剣そのもので汚名を一刻も早く返上したいようだ。というか、この不良はすっかりこのメンバーに馴染んだな。


「竜也君、何にしますか?」


「そうだな・・・これなんかどうだ?」


竜也の指さしたのは【怪奇!!子猫館!!】というお化け屋敷であり、このファンシーなコネコーランドの世界間に合っていない廃墟型の本格お化け屋敷である。


「ここって本当に出るって噂あるんですよね。少し怖いですが興味あります♪」


「私も♪私も♪お化け大好き♪」


「なら決まりだな。次はココに行こう。」


えっ?俺の意見とか聞かないの?

いくら多数決で決めるにしても俺にも意見を聞くのが筋というモノじゃないだろうか?

だってこんなにも冷や汗が止まらないのに。誰か助けて下さい。



あげぽよー♪黒姫だよー♪

・・・と、すっかりギャルキャラに慣れてしまった。

お漏らししてからテンションは二段階ぐらい落ちてしまったが、やはり推しの二人のツーショットは何よりも尊い、私の目に二人の尊い姿を焼きつけ過ぎて、もうメモリーが足りなくなりそうである。

只今、【怪奇!!子猫館!!】に移動中であり、私の足取りも軽い。

ジェットコースターとかの機械系の絶叫は苦手な私だけど、お化け屋敷はちゃんと地に足を付けて楽しめるアトラクションである。偽物の幽霊だろうが、本物の幽霊であろうが恐れるに足らず。ギャルキャラを守りながら楽しめそうである。

あぁ、それにしても推しが尊い♪


「あ、あの黒姫さん。」


私の隣で蚊の鳴く様な声で私に気安く話し掛けてくる男。勿論その男というのは正君である。全く私の至福の時間を邪魔するなんて万死に値するぞ。

まぁ、制裁を加えるにしても後からだ、私とコイツはラブラブカップルという設定なのだから、ここで私がコイツの頭を勝ち割ったらダメよね。


「どうしたの♪マイダーリン♪」


私がギャル声で話し掛けると、マイダーリンは小声でこんなことを言い始めた。


「あの、オムツってまだ余ってたりします?」


「・・・はっ?」


思わず素に戻ってしまう私。もしかしてお化けが怖いのだろうか?

全くあんなものを怖がるなんて肝っ玉の小さな男である。


「シニアタイプのMとL、あと赤ちゃん用のパンパースもありますがどれにしますか?」


「・・・実に用意周到で助かります。」




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