第18話 遊園①
日曜日が来た、来てしまった。
どうも正だ。朝起きてから憂鬱で、今日は嫌な予感しかしない。
遊園地とは遊ぶために行くところだと思うが、何だか戦地に赴く心境である。
出掛けにパン屋マロンに寄って、美鈴の出て来るのを待つことにした。
「おっ、正君。おはよう。」
美鈴の親父さんの栗山 大吾(くりやま だいご)さんが挨拶して来た。この人が自分の義父になるのだと一時期思っていた時もあったが、多分そうなることはもう無いだろう。
「美鈴の奴、今日はダブルデートだと浮かれてたけど、相手は正君か?って聞いたら、真顔で否定されたよ。あっはは♪」
グサリと大吾さんの言葉が俺の胸に突き刺さる。真顔で否定する美鈴の顔が頭に浮かんできて、嫌われたものだと再認識した。
「でも、正君も相手が居るらしいね。正君も中々隅に置けないね♪」
「ははっ……」
作り笑いちゃんと出来てるかな?
もちろん俺の彼女というのは仮初の存在であり、今回の計画のために出来た架空の存在である。あとあと登場するので乞うご期待。
美鈴の準備が終わるまで、店内の飲食スペースで買ったソーセージパンとサービスのたこ焼きパンを頬張っていると、可愛らしいフリフリの白いワンピース姿の美鈴が店の奥から出てきた。薄らと化粧もしているので、今回のダブルデートに対する意気込みを感じる。
「あっ、正君♪待っててくれたんだ♪ありがとう♪」
上機嫌だな。泥棒猫認識の俺に笑顔を見せてくれるなんて、そんなに竜也とデート出来るのが嬉しいのだろうか?
俺がパンを食べ終わると、マロンを出て遊園地【コネコーランド】に向かう。歩いて行ける距離に遊園地があるのも中々珍しいことなのかもしれないが、近所にあっても意外と行かないもので、俺は今まで片手で数えられる程しか行ったことが無い。
「この格好おかしくないかな?もっとセクシー系の方が竜也君は好みかな?」
歩く道中、そんなことを聞いてくる美鈴。知らない、知らない、何にも知らないよ。
結局15分ぐらい美鈴は一方的に竜也関連の話を喋り続け、いきなり俺の精神力がガリガリに減らされたのは言うまでもない。
はい、そんなこんなでコネコーランドに到着した。
コネコーランド創業25年になる遊園地で、黒猫のクロネちゃんと白猫のシロネちゃんのキャラは、その可愛らしい外見から一時期全国的にブームになったこともある。
「おーい、正ー!!」
入り口で大きな声で声を掛けられた。声のした方を向くと、白いTシャツに青いジーパン姿の竜也が立っていた。とりあえず学ランじゃなくて良かった。不良もどうやら年がら年中学ランというわけでも無いらしい。
「た、竜也、おはよう。」
「おぅ、おはよう♪今日が楽しみすぎて、昨日は徹夜しちまったぜ♪ここにも三時間前に来た♪」
約束の時間の3時間前に来るとか、この不良どんだけ楽しみにしてたんだよ。
「た、竜也君、お、おはよう。」
「ん?何でお前が居るんだ?」
美鈴はモジモジしながら竜也に挨拶したが、竜也は真顔の塩対応。竜也にはダブルデートの話をしていなかったので、この対応も仕方ない。
美鈴にはダブルデートと言っていたから、どういうことだ?と、俺に冷たい視線を向けてくる美鈴。困った俺は咄嗟に目線を逸らした。
そのタイミングを見計らってか、今回のダブルデートの首謀者がゆっくりとコチラに近づいてくるのだった。
つづく
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