第17話 準備

竜也だ。

今日は正の奴と学校屋上で飯を食ってる。野郎二人で並んで飯を食うなんて花が無いが、まぁ、誰にも見せるわけでもねぇから良いだろ。


「あのさ、竜也君。」


「おい、竜也で良いって言っただろ?」


「あっ、ごめん。どうも慣れなくてさ。」


ダチ同士が君付け呼びなんて気持ち悪いんだが、どうにも正は君付けが直らなくていけねぇな。


「それでなんだよ?」


「あ、あのさ、知り合いからこんなの貰ったんだ。良かったら一緒に行かないかい?」


差し出された正の手には遊園地のチケットがあり、俺はその意図を理解した。


「俺と遊園地に行こうってのか?」


「う、うん、竜也が良ければだけど。」


男二人で遊園地なんて、普通に考えれば行くもんじゃねぇと思う、けどな……。


「いいぜ行こう。ダチなんて居たことねぇから、楽しみだぜ♪」


「えっ?……あぁそうなの。行くんだね。」


正の顔が何か微妙なのは気になるが、遊園地に行ってやろうじゃねぇか。



栗山 美鈴(くりやま みすず)です。

今、下校中なのですが、最近なんだか心がモヤモヤするのです。

というのも幼馴染の正君が私の好きな竜也君と仲良くしており、その姿を見ると無性に腹立たしくて、正君の顔をぶん殴りたくなるのです。


「よ、よぉ、美鈴。」


不意に後ろから声をかけられて思わず振り返るとそこには憎い恋敵……いえ、正君が居ました。


「何か用ですか?私、今帰るので忙しいんですけど。」


「つ、冷たいな。仮にも幼馴染だぜ。まぁ、話を聞いてくれよ。」


この泥棒猫め、よくもいけしゃあしゃあと。

まぁ、幼馴染のよしみです。話ぐらいなら聞いてあげても良いでしょう。


「何ですか?内容次第によっては私の逆鱗に触れますが。」


「だ、大丈夫、そんなに悪い話じゃない。ほら、これ。」


正君はそう言うと、私に一枚のチケットを渡してきました。

これは近所の遊園地【コネコーランド】のチケットです。


「ダ、ダブルデートしようぜ。」




はい、こちら佐伯 正。

只今、自室にてある人を待っている。


"ギシギシ"


床の軋む音、どうやらあの人が来たようだ。

スーッと襖の扉が開いて、そこには白銀の髪の美少女が立っていた。言わずもがな、白金さんである。不敵な笑みを浮かべて、まるでドラマやアニメの悪徳令嬢のようだ。


「作戦の方は順調かしら?」


「はい、二人にチケットを渡し、次の日曜日に約束を取り付けました。」


「宜しい。これで【遊園地、推しカップルが急接近で、私どうにかなっちゃいそう作戦】の準備は整ったわね。」


長いし、欲望を隠す気もないロクでもない作戦名である。さすがは白金さん、そこに痺れもしないし、憧れもしない。


「フッフフフ♪推し達がイチャイチャする姿が目に浮かぶわ♪ふふふ♪あはは♪あーっははは♪」


高笑いを上げる白金さん。

あの、近所迷惑なんでやめて下さい。




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