第19話 遊園②

どうも栗山 美鈴(くりやま みすず)です。今日はダブルデートなので緊張します。


「おっはー♪正っち♪おはよー!!」


そんな陽気な声が聞こえてきたかと思ったら、肌の黒い派手なギャル風の女性が、後ろから正君に抱きついてきました。


「わ、わぁ!!ちょっと!!誰!?」


突然のことに動揺してあたふたする正君。知り合いじゃないのかな?


「えぇ、酷いなぁ自分の彼女忘れちゃったのー?アーシよ、アーシ。黒姫(くろひめ)でーす♪チョリーっす♪」


口の下に右手で逆ピースマークを作り、ウィンクする黒姫と名乗る人。あぁ、この人が正君の彼女さんなんですね。


「あ、あぁ、く、黒姫ちゃん。お、おはよう。」


正君の妙に辿々しい態度は気になりますが、どうやら本当に彼女の様です。派手で明るそうな美人です。


「どうも初めまして、栗山 美鈴と申します。今日は宜しくお願いします。」


「あはは♪何その挨拶、ダイヤモンドー♪マジカチカチなんだけど、ウケるー♪」


ダイアモンドというのは、よく分からないけど、楽しんでもらえてるなら幸いですね。


「おい、正。なんだこの珍獣は?俺と二人で遊ぶんじゃなかったのか?」


竜也君は黒姫さんを警戒しているらしく、ギロリとメンチを切っています。しかしながら、黒姫さんは少しも怯む様子もなく、ケラケラと笑い続けているのです。


「珍獣て♪君、辛辣なこと言うよねー♪」


「あぁん!!舐めてんのかテメー♪」


竜也君がキレて一触即発の雰囲気ですが、ここで正君が二人の間に割って入ります。


「ストップ!!……ちょ、ちょっと黒姫ちゃん、あっちでお話ししようか?」


「おけまるー♪」


「じゃ、じゃあ二人とも、ジュースでも飲んで待ってて。」


そう言うと黒姫さんを連れて、いそいそと人混みに紛れていった正君。

あっ!!これって私が竜也君と二人っきりになってる!!


「たくっ、どうなってんだこりゃ?訳わかんなぇ。」


どうやら竜也君には今日ダブルデートすることは伝わってなかったらしく、かなりイラついています。

どうしよう?竜也君と会えたのは嬉しいですが、何を話せば良いんだろう?


「はぁ、とりあえず、あっちのベンチに座って帰ってくる待ってようぜ。」


「は、はい。」


竜也君の突然の提案にビックリしてしまいましたが、二人でベンチに座るなんて本当にカップみたいで良いですね♪




はい、ところ変わって正です。

今は人気のないトイレの裏の草むらにて、黒姫という俺の彼女らしき存在と相対してます。


「もう♪こんなとこに連れ込んで何する気♪エッチなことは、まだ時間が早いだけど♪きゃあああ♪」


「ちょ、ちょっと、声がデカいですよ。」


この人何考えてるんだよ全く。

彼女はこんな場所でもキャラを演じ続けるのかと思ったが、暫くすると今までのテンションが嘘の様に静かになり、死んだ魚の目をして、深いため息をついた。


「ふぅ……ギャルを演じるのも疲れますね。」


その声はいつも二人っきりの時に聞く、紛れも無いあの人の声であり、やっぱりこのギャルがあの人だったんだと100%理解できた。


「もう、何をやってるんですか、白金さん。」


そう、黒姫さんとは白金さんの変装した姿なのだ。

……だからといって何でギャルなんだろう?


「あげぽよ、おけまる、チョベリバ、予習はしてきましたが、こんな言葉がどうして出来たのか理解に苦しみます。ですが、やってみると案外楽しくて、いつか自分は本当のギャルになるんじゃないかと心配になるのです。」


「じゃあ、ギャルなんてやらなけりゃ良いじゃないですか。喫茶店の時みたいにメガネとオサゲで良いでしょう?」


「文学少女フォームは学校近辺でも度々使用している息抜きの姿なのです。だから、あの姿はあまり目立たせたくないんですよ。それに正君の彼女になるとすれば、頭の悪そうなギャルが最適解。これはアナタに合わせた姿なのです。」


「な、なるほど。」


つい、なるほどなんて言ってしまったが、僕に合わせると頭な悪そうなギャルになるとは、一体どういう意味だ?名誉毀損で訴えるぞ。


「さぁ、いつまでもあの二人を待たせるわけにはいきません。我々はイチャイチャするフリをしつつ、推しの2人をくっつける手伝いをするのです……行くわよ、ダーリン♪」


「お、おう、マイハニー。」


再びギャルモードになった白金さんこと黒姫さん。これは前途多難な感じだ。

あと本人には言えないのだが、ギャルのチョイスが大分古い。言動もそうだけど、ルーズソックスは不味いって。



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