第13話 愛しの彼

とある不良がアメリカンショートヘアの捨て猫を拾っているところを目撃しました。

それが私、栗山 美鈴が黒神 竜也君と出会ったファーストコンタクトであり、初めて恋に落ちた瞬間でもありました。

ベタなシュチエーションですが、私は、こういう人に白馬の王子様以上の憧れを持っており、ぶっちゃけストライクゾーンど真ん中でした。


「捨てられたのか?俺も似たようなもんだ。」


またこんなベタな台詞言ってくれちゃって、胸のキュンキュンが止まりませんでした。

黒神君が同じ高校の人だということは、すぐに分かりましたが、何ぶん不良なので接触するのが躊躇われました。

どうやって声を掛けようかと一人で悩んで帰るある日の通学路、どうやら恋の神様は私に微笑みかけてくれているらしく、ゴミ捨て場に倒れて気絶している竜也君を見つけました。恐らく他の不良達にリンチにされてゴミ捨て場に捨てられたのでしょうが、捨てる神あれば拾う神あり、拾うのは勿論私です♪


「あの、大丈夫ですか?」


そう言って声をかけても、瞼がピクリとも動かなかったので、きっと私の予想以上に手痛くやられてしまったのでしょう。

こうなると起こすのも忍ばれたので、とりあえず傷の手当だけは済ませましょう。

こんなこともあろうかと、包帯とカットバンはいつも持ち歩いているんです。

そうして私が竜也君の手当をしていると、流石に気がついたのか、竜也君がゆっくりと目を開けました。


「・・・ここは何処だ?」


開口一番の彼の問いに私は正直に答えます。


「ここはゴミ捨て場です。アナタはここに倒れていたんですよ。」


「お、お前は誰だ?何で手当なんてしてやがるんだ?」


よくぞ聞いてくれました。ここぞとばかりに私は自己紹介を始めます。あぁ、好きな人に自己紹介出来るなんて、こんな幸運があっていいのでしょうか?


「私の名前は栗山 美鈴。アナタと同じ高校に通う一年生です。」


「同じ高校?・・・お前って高校生なのか?てっきり中学1年生かと思ったぞ。」


やっぱりか、そうじゃないかと思いました。自分が他人からどう見えているかは私が一番良く分かっているつもりです。ハッキリ言って私ってロリキャラですから。


「よく言われます。でも、ところがどっこい高校一年生なのです。」


「そ、そうか。」


どうやら竜也君は困惑しているようですが、私は真実を述べているだけです。これだけは厳然たる事実なのであります。

そのあと、嫌がる竜也君に無理矢理手当をして、彼は「余計なことしやがって」とその場を足早に離れたのですが、次の日、登校中の私を見つけて駆け寄って来て、缶コーヒーを一つ手渡し、顔を赤らめてバツが悪そうにこう言いました。


「これ、とりあえず礼だ。別に頼んでねぇけど、手当して貰って、そのままなのは目覚めが悪いからな。」


"キュン"


はい、一つトキメキを頂きました。この不器用な感じが堪らないですね♪

やっぱり竜也君は私の運命の人なんだと、この時、私はハッキリと確信したのです。




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