第9話 承諾
"カッチカッチ…"
時計の秒針の音が聞こえる。俺は未だにお願いを打ち明けられないでいた。
「フライドポテトお持ちしましたー♪」
「はーい♪」
その間に白金さんは注文を追加し、テーブルにはサンドイッチ、ハンバーグ、カレー、フライドポテト等、10皿近くの料理が並べられている。
それらの料理をモグモグパクパクと頬張って行く白金さん。普段の清楚な感じからは想像も出来ない程の大食いである。
「あの、白金さん。それだけ食べて支払いは大丈夫なんですか?」
「大丈夫よ。だってアナタが支払うんだから。」
「えっ?」
それは初耳である。この大量の料理の支払いを僕一人が払う?そんなことすれば、俺の今月のお小遣いは一気にパーになってしまうではないか。
俺が不服なのを顔から察したのか、白金さんはポテトを片手に俺を睨みつけた。
「あのね、これはアナタが早く本題を言わないからなのよ。こっちは急に呼び出されて不快だし、美鈴ちゃんの後も追えないしで散々なわけ。それなのにいざ来てみれば何も喋ってくれないって、そりゃドカ食いしたくなるでしょうよ。」
正論過ぎて何も言い返せない。何故ドカ食いに行き着いたかは全く分からないが。
「あっ、デザートも頼まないと、店員さーん♪」
「わ、分かりました。話しますから、これ以上の注文はやめてください。」
僕がそう言って制止すると、彼女はニッコリ笑って「でも、最後にティラミスは頼むわよ」と言い放った。
「はぁ!?私が龍也君と決闘ですって!?」
私は思わず大きな声を出してしまった。変装して気が緩んでいるというのもあるが、それにしたって、そんなアホみたいなことを言われれば、こんな声も出るというもの。
「あっ、そうなんですよ。話の流れで仕方なく…僕は最後まで止めたんですけどね…あはは。」
「はい、ダウト。アナタなら『ボコボコにしちゃって下さいよ』ぐらい言ってそうだわ。」
「ギクッ、そ、そんな馬鹿なこと言うわけ無いじゃないですか、やだなぁ……メロンソーダも飲みますか?」
ふぅ、こんな分かりやすい人間もそうそう居ないわね。
「要らないわよ。それより決闘なんて私しないわよ。何が悲しくて推しの想い人と戦わないといけないのよ。下手したら美鈴ちゃんに嫌われちゃうじゃない。」
それに【ひょっとこ仮面】はあくまで緊急措置である。もう二度とあんな仮面を被って戦うなんて御免被る。
「そ、そこをなんとか。戦ってくれないと、俺が龍也から何されるか分かりませんし。」
「そんなこと知らないわ。アナタがどうなろうが髪の毛ほども興味がないわ。」
決闘なんて絶対にしてやらないんだから。
ここで語りがこの佐伯 正に戻る。
俺になんか興味がない発言はショックだ。せめて髪の毛ほどは興味を持ってくれ。この人の本性って生粋のドSだ。
仕方ない、こうなったら奥の手を出そう。
「白金さん、美鈴の写真欲しくないですか?」
俺のこの一言に、白金さんの体がピクッと反応した。
「しゃ、写真って、そんなの自分で取れるし、遠くからの美鈴ちゃんの隠し撮りのアルバムは3冊目だし。」
隠し撮りのアルバム3冊目はゾッとするが、思ってたより良い反応だ。ここから畳み掛ける。
俺はテーブルの食べ終わった皿を左右に退けて、ある写真を一枚テーブルの上に置いた。
「こ、これは!?」
写真を見て目を見開いて驚く白金さん。
その写真というのが3歳の頃のあどけない美鈴がボール遊びしている写真だった。
写真を見ながらゴクリと生唾を飲み込む白金さん。こんな姿は決してクラスの皆には見せられないなぁ。
「これは美鈴ちゃんなの?それとも天使かしら?」
彼女の口からそんな台詞すら出てくる始末である。
「なんてったって俺は美鈴の幼なじみですからね。他にも海で遊んでる写真や、七五三、入学式、卒業式、あんな写真やこんな写真まで各種取り揃えてますよ。決闘を引き受けてくれるなら全てあげますがどうします?」
こんな幼なじみを売るような取引はしたくはないが、これも自分の身を守るためだ。致し方無い。さて白金さんの返答は如何に?
「ば、馬鹿にしないで!!こんな写真ぐらいで私を買収出来ると思ってるの!?舐められたもんね!!」
激昂の白金さん。クソッ、チョロいと思ったのに。
「でもね。舐められてもいいわ。その写真が貰えるなら、ペロペロ舐められても……うん、大丈夫。プライドなんてゴミ箱に捨てれる♪私、白金 姫子は決闘します!!」
……よしよし、結果チョロかった。
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