第4話 路地裏 後編

どうも正です。

謎のひょっとこ仮面の登場に戸惑いを隠せない今日この頃。

ひょっとこ仮面はジャージの首元から背中に手を突っ込み。一本の長い赤い棒を取り出し、それを両手に持って構えた。

「へん、なんだその棒切れはよ。それで俺たちとやる気かよ。」

「笑わせてくれるぜ♪」

ひょっとこ仮面を嘲笑する不良達。確かに棒一つで6人の不良を倒せるなんて、それこそ漫画である。

ひょっとこ仮面はそんな嘲笑など関係ないといった具合に無言のまま不良達に向かって駆けて行った。

"タッタタタ"

軽快な足取りは無駄がなく早い。走るだけで様になるなんて、この人物は只者じゃない。

不良達は不意に突っ込んできた、ひょっとこ仮面に驚いたのか、あたふたしている。どうやら不良の中でも見掛け倒しの連中らしい。

そんなあたふたしている不良連中の一人に目掛けて、ひょっとこ仮面はブンッと棒を振った。

"バキッ!!"

「がぁ!!」

いとも簡単に吹っ飛ばされる不良。飛ばされた際に頭から壁に激突して、そのまま仰向け倒れ込んで動かなくなってしまった。どうやら気絶したらしい。

「次っ!!」

どよめく不良を他所に凛とした、ひょっとこ仮面の声、今更だが声は女性のようである。

「舐めやがって!!」

「死ねや!!」

今度は二人がかりで、ひょっとこ仮面に殴りかかる。だが、ひょっとこ仮面は慌てた様子もなく、並んで走ってきた不良が棒の間合いに入ると。

"ビシッ!!バシッ!!"

棒を左右に振って、不良二人の頭を素早く叩いた。

叩かれた不良二人は脳震盪でも起こしたのだろうか?そのまま二人共膝から崩れ落ちて動かなくなった。

ひょっとこ仮面は無駄の無い動きであっという間に三人の男をやっつけてしまった。その姿に敵の不良はもちろん、俺も怖くてぶるっと震えてしまった。

「あと3人。」

顔は笑っているのに淡々とした調子で話すもんだからギャップで倍怖い。

「ひぃ!!」

ひょっとこ仮面の迫力に腰を抜かす不良3人。見掛け倒しとはこのことだろうか?いやでも、僕が同じ立場ならオシッコ漏らしてたかもしれない。あんまり調子のいいことは言えないな。

「よし、手間が省けた。」

棒を右手で持ち直し、ポンポンと自分の右肩を叩くひょっとこ仮面。そうして腰を抜かした不良達に説教を始めた。

「君達、これからは改心して真人間にならないと、今度はこの程度では済まさないからね。この棒で叩き回すからね。分かった?」

「ひいっ!!」

「ひぃっ!!じゃない。返事はハイでしょ?」

「は、はひぃ!!」

ひょっとこ仮面を前にしては、不良達も怯えた子羊のようになってしまっている。もう、ひょっとこ仮面に逆らう気なんて一ミリも無いだろう。

「じゃあ、のびてる人を運んで早々にココを立ち去りなさい。はい、急ぐ。」

「分かりました!!」

不良達はのびてる仲間を一人一人ずつ抱えて、すごすごとその場を去った。

こうして事態は収拾したようで、俺はホッと胸を撫で下ろした。

展開の速さに着いて行けずに、途中から放心状態だった美鈴も正気を取り戻し、自分の想い人を助けてくれた人に御辞儀をしながら感謝の言葉を述べる。

「何方か知りませんが、あ、ありがとうございます。助かりました。」

ひょっとこ仮面はその声に反応し、美鈴の方を向いた。

「いやいや♪大したことはしていませんよ♪アナタとアソコの男の子が無事ならそれで良かったんです♪あっははは♪」

上機嫌に上ずった声を出す、ひょっとこ仮面。ようやく仮面の笑った顔と中の反応がシンクロした。

「へん、誰が助けてくれって頼んだんだよ!!」

突然叫んで、和やかなムードをぶち壊しにする竜也。助けてもらっておいてツンツンするんだから本当に不良というのは始末におえない。

「りゅ、竜也くん・・・すいません、あの人本当は優しい人なんです。」

ツンツン竜也のフォローに入る美鈴。その様子はまるで竜也の母親のようである。

「お前もお前だ!!男の喧嘩にしゃしゃってくんじゃねぇ!!うぜぇんだよ!!」

美鈴のせっかくフォローしても、竜也の悪態が全てをぶち壊す。本当に何なんだこの男?いけ好かない。

「ちっ!!」

竜也は舌打ちしながら立ち上がり、その場を足早に去って行く。

「あっ、竜也くん待って!!」

その後を追いかける美鈴。恋は盲目というが、今の美鈴を見る限り、その話は本当のように思える。

かくして、その場には俺とひょっとこ仮面だけが残された。

「・・・。」

「・・・。」

互いが無言で非常に気まずい。話す話題を探すのも難なので、俺は抜けた腰を何とか元通りにして立ち上がろうとした。

だが、ここで事態は急変する。ひょっとこ仮面が付けてる、ひょっとこの仮面がポロリと外れたのである。仮面の中にあった顔は俺の全く予想だにしていなかったクラスメートのモノであった。

「し、白金 姫子さん。」

そう、なんと【推し姫】こと白金 姫子その人が、ひょっとこ仮面の正体だったのである。白金さんは仮面が取れたことに気が付くと、特に慌てた様子は無く。腕組みをして少しうーんと考えた後、僕に微笑みかけてきた。

「君、少し何処かでお話できるかな?」

笑顔を裏に何か恐ろしいものを感じて、俺はぶるっと体を震わせた。

これからどうなるなんて予想もつかないが、おそらく面倒なことになることは間違いない。










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