第17話
島田涼真は紗良からゴミ袋を受取り、自宅に帰ってから中身を確認した。
ゴミ袋には紗良の変装道具の他に真帆の衣類も入っていた。少し考えて自分が紗良の計画を知ったのは真帆の机の上にあった紗良の作った計画書だったと思い出した。真帆も紗良を殺人者にしたくなくって自分がやったんだろうと想像した。そして紗良は事後にそれを知って真帆の服を全部捨てるために袋に入れて持ってきたのだと考えた。紗良の苦悩と真帆の心情を思うと、可哀想で涙が零れた。
翌日、燃えるゴミは島田自身の物と一緒に大都城市の焼却場へ直接持ち込んだ。
ガラス切りは燃えないゴミの日に自宅の物と一緒に捨てた。スプレー缶は市内を流れる大都城川の河原へ行ってすべて出し切り潰してコンビニの缶用のゴミ箱に捨てた。服と一緒に入っていた8万円の処分に迷ったが、大西と真帆と紗良の指紋がついている可能性があるので灰皿の中で一枚ずつ燃やした。
靴と竹包丁だけはそのままゴミ袋に入れて置いた。
ただ、自首する前に、自分は殺害現場にはいなかったので、状況を紗良か真帆から聞く必要があった。
それで、その日の深夜危険だとは思ったが、再び真帆の部屋の窓から室内に侵入した。そして階段を下りて紗良の部屋に入りドアを閉めて「紗良!」と声を掛けた。
「誰?」と怯える声がしたので「俺だ、涼真だ!」と言うと、電気が点いて紗良がベッドから起きて来た。
「涼真!」俺の名を呼んで抱きついてきた。俺も力一杯抱きしめた。
しばらくそのまま抱き合っていた。
それから紗良を椅子に座らせ「紗良、殺害計画に真帆が絡んだ部分を教えてくれ」と言った。
「どうして?」と訊く紗良に自分が自首することを伝えた。
「ダメよ、それなら私が自首する」そう言う紗良に「ダメだ。それだと真帆にまで捕まる可能性が出て来る。同じ家に居て何処かに痕跡が残ってるかもしれないだろう」そう言って説得した。
「分かった」瞳を濡らしながら紗良は頷いた。それから、紗良が見た殺害現場の状況と大西の8万円の有った場所を聞いた。計画書と大きく違ったのは、机にあったトランプを落としてから大西が仰向けに倒れたことくらいだった。
計画書には書いていなかったが、紗良は、漬物石2つとぺットボトル2本を入れた約14キロの重さのリュックを背負って大西を殺す積りでいたのだ。
紗良によれば、漬物石は使っていたものを犯行の2日前の燃えないゴミの日に有料のゴミ袋に入れて捨て、新しく買っていたものを使ってリュックに臭いなどが付かないようにし、またペットボトルは冷蔵庫の中に2本分の空きを作っておいて、常温で保管していたものを背負ってリュックが濡れないようにした。そしてゴミを捨て家に戻ってから漬物石は漬物の中へ押し込み、嵌めていたビニール手袋は漬物樽の横に置いて、ペットボトルを冷蔵庫に入れたのだった。
また紗良の倒れていた場所が足跡から遠いと不審がられたとも聞いたので、後は自分で警察にどう話すか考えようと思った。
帰りがけにもう一度紗良と抱き合ってから玄関からそっと帰った。
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