第9話
真帆はお風呂から上がって身体にバスタオルを一枚巻いただけで、お母さんにそれを言おうとしてお母さんの部屋のドアを開けたがいない。その時、何となく机の上の文書が目に入った。ちょっと気になって覗くとお母さんが大西を殺そうとして立てた計画書だった。びっくりした。真帆はお母さんを誤解していたと気付いた、急いで部屋から携帯を持って来て写真に撮った。そしてキッチンに居たお母さんに「お風呂空いたよ」と告げて、部屋に戻りそれを印刷してじっくり読んで、泣いた。お母さんはパパの事を忘れてあんな男と結ばれようとしている、ぱぱを裏切った、と思ってぐれたふりをしていたのだった。でも、もうそれは止めだ。お母さんを殺人者なんかにさせられない。あんなに優しいお母さんがここまで思い詰めてたなんて、これまでお母さんに反抗してきたことを悔いた。同時に大西に対する怒りが湧いてきた。自分がお母さんを助けようと決心した。殺害の手順は一度見ただけで頭に焼き付いていた。
でも、殺人なんてドラマでしか見たことはない。本当に自分にできるのか自信もない。
実際に自分がやるのかと思うと手が震えた。怖かった。殺害手順の始まりは、寝ている大西を叩き起しドア近くまで歩かせ、そこで催眠スプレーを吹きかけて眠らせることだった。でも、それがちゃんと効くのか心配だった。
それより殺害の道具が何処にあるのか書いてなかった。お母さんの部屋だろうと想像はつくけど、何とか手に入れないと拙いと思い、考えて取り敢えず手近なとこから探そうと思い布団に入った。が、頭の中に殺害場面が浮かんできて眠れなかった。
実行の予定日まであと5日だ。
次の日、手順の中で「ガラスを切る」とあったが、そんな経験を一度もしたことが無かったので、不安だった。それでホームセンターへ私服で行って一番安いガラスを1枚小遣いで買った。ガラス切りは台所の下の扉の中にあるのを見つけていた。新聞紙にくるまれたガラスを立て掛けて刃を当て引いてみる。ガラスには軽く傷がついた程度だった。今度は力を込めて引いた。ガラスの切れるような音がした。しかし、その後押しても引いてもガラスは割れなかった。もう一度同じところを力を込めて引いてみる。同じような音がした。そしてガラスを押すとパキッと音がしてガラスが割れた。他の位置でも繰り返して何となく切り方が分かってきた。それから1時間以上掛かって一回でガラスを切ることが出来るようになった。ホームセンターの燃えないゴミの箱にガラスを捨て家に戻った。
実行の予定日まであと4日だ。
あとは窓から入るには腕力とジャンプ力がいると思って、部屋の中で腕立て伏せやスクワットを繰り返した。
学校の帰り、門に繋がる塀が自分の背丈より少し高いくらいだと気が付いて、友達を先に帰してそれを乗り越えてみようと思った。何回やってもできなかった。自分にはできないのかと思い始めた頃、家の窓下へ庭に用意してある棒を立てかけると計画書にあったのを思い出した。あちこち探し回って棒を拾ってきて塀に立てかけ、やってみた。出来そうだが難しい。何度も挑戦してやっとできたのは、もう日が沈みかけ辺りが薄暗くなってからだった。急いで棒をその場に寝かせて、走って帰った。
実行の予定日まであと3日だ。
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