第2話

「我々は強盗殺人事件だと考えています」警部が言うので「なんで内みたいな平凡な家庭が狙われたの?」思わず紗良の口から出た言葉に警部はにやりとして「それは犯人でないと分かりません」と返されてしまいました。

「それで、娘さんに訊いても分からないと言うので、奥さん、一度自宅へ戻って被害を確認して欲しいのですが?」

娘と聞いてドキッとして「娘は大丈夫なんですか?」と尋ねると、警部は頷いて「お爺ちゃんとお婆ちゃんが事件の翌日から来ていて面倒をみてますから」と聞かされほっとしました。

警部が自宅に戻れるかを医師に訊くと、医師は「まだ、ちょっと無理ですね。先ほど起き上がろうとしたとき頭痛がしたようなので、起き上がって歩く練習をしてからでないと認められませんね」と有無など言わせない強い口調で説明するのです。

警部は渋い顔をしつつも頷いて「じゃぁ先生、いつ頃になりそうですか?」と訊くと「まぁ、3、4日っていうとこだと思いますよ」そう言って先生は病室を出て行きました。

警部は鼻を指先で擦って、しょうがないと呟き「その頃来ますから」と言い残して行きました。

 そこへ、友達の水野芽衣が「あんた、大丈夫?」と言いながら顔を見せてくれました。

「迷惑かけてごめんね」謝ると芽衣は手を振って「なんもさぁ、玄関開けたら真っすぐあんた倒れてるの見えたから、靴脱ぐのも忘れてリビングに飛び込んだの。血は沢山流れてたけど息してたから救急車呼んだのよ、そしたら警察にも知らせてって言われてさぁ、それで110番もして、外で待ってたら警察の方が早く来て、『室内を見せてください』って言うからどうぞって言ったの、何人かの刑事さんが家の中を調べ始めて、すぐよ、奥の方で『男性が殺されてる!』って刑事さんが叫ぶからびっくりしてたら、『確認してもらえますか』って私を連れて行こうとするのよ。で、入口から怖々覗いたら、血が首から物凄い飛び散ってて、でも顔は間違いなく旦那さんだったから、そうだって警察の人に言ったの。私は、もう見てられなくってリビングに戻ったのさぁ・・・いやぁ怖いわねぇ」そんな風に状況を説明してくれたのでした。

「でも、ありがとう、通報したり救急車呼んでくれて。あなた来なかったら私も死んでたわ」

「止めてよ、縁起でもない。これからあんた一人になるんだからしっかりしないとダメよ。真帆ちゃんもいるんだしね。今言う話じゃないけど、心配でさ。で、いつまで入院なの?」

「分かんない、まだそう言う話はまったく聞かされていないのよ」

「そうかい、あんた携帯持ってる?」

私はそう言われて枕元やベッドの横にある収納棚の引き出しを探ると、携帯が入っていたので「えぇ、あったわ」と返事をしたんです。

「そう、そしたら何か困ったり、やって欲しい事あったら私に電話入れて、出来るだけの事はしてあげるから」

芽衣のその優しさに目が潤んできました。

「ありがとう。色々出てくると思うのよ、その時お願いね」

私がそう言うと芽衣は頷いて、「お大事にね、また来る」と言って帰って行った、と思ったら直ぐ戻ってきて「あんた犯人捕まえたいでしょ。知り合いに探偵さんいるから紹介するね」と顔を近づけて言うの。

「いやぁ、警察が捕まえてくれるでしょうからいいです」断ったのだが、・・・

 次の日、「この人、私の友達で岡引静さんって言うの」って芽衣が言うから、一応ちょこっと頭下げたら「でさ、静さんの旦那さんは警察内でも有名な探偵さんなのよ、ねぇ静さん」と芽衣さんはどうしても探偵さんに事件の調査を頼みたいようだが「いえ、事件は警察に任せてますので・・・」そう言って断ろうとしたけど、「ダメよぅ、あんた警察何て大して役に立たないからさぁ、頼みなさい」って強引なの。

「芽衣さん、そないに無理に押し付けちゃあきまへんえー」静さんが初めて口を開いたのよ。京都弁か大阪弁か分からなかったけど、着物姿だし物柔らかな感じだったから「京都の方なんですか?」って訊いたの。

「へぇ、京都生まれで、大学に入ってからは東京なんですが、言葉が抜けへんのです」

私、何かその京都弁が気に入っちゃって「奥さんの旦那さん、有名な探偵さんなんですか?」って訊いたら「うちは家族5人で探偵しておましてな、そやさかい内の人一人の活躍じゃおまへんのや」そう笑って言うのよ。

それが正直と言うかなんて言うか、それでつい「お願いしても良いですか?」って言っちゃった。

次の日にその旦那さんが静さんと来て、調査を頼むことになってしまったのよ。

 

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