第2話
法事から家に帰って来たが陸は居ない。
喪服を脱いでいるときフウッとお焼香の匂いがした。
ああ私法事に行ったんだと我に返り思った。
「疲れたあ」とメイクも落とさずソファに倒れる。
あ~あ陸はどこに居るのやら。
陸とは馴染みのバーで出会った。
すーごい泣いている子が居てなあんか可愛いなあと思ってその日に声をかけた!
千鶴子の変なモノセンサーが頭と身体にビビビと反応しまくったのだ。
この男子は私のモノだ!そう感じ取った。
何故泣いていたか?
それは芸術大学の初めての受験の不合格通知のせいだった。
その日も打ちひしがれてボロボロだった。
話し掛けて、その日に作品の写真を見せて貰った。
この泣いている男子のように繊細でこぼれ落ちそうな純粋な感情がこの子の絵にはあった。
このまま生きて絵を続けていけば何者かには成れる!
そう変なモノセンサーでは無く千鶴子の魂が感じ取った。
そして千鶴子その場に居た客達に誓う!
私はこの子を一流のアーティストにしてみせると!
イヨッそれでこそ千鶴ちゃん!絶対叶えてね!陸このおばちゃんに全て捧げろちょっとちゃんと面倒みてあげてね!私の陸あげるんだからぁ
最後の一言を言ったのはずーっと陸を見てきた里美だった。
この里美って女は千鶴子の敵だった。
里美の方がずーっと昔から陸を知っていて陸に気があったのだ。
今日みたいに千鶴子に傷付けられる度に陸は、このイヤラシい里美の所に行き癒して貰いに行っていた。
だから今日もきっと里美とイチャイチャしてるに違いなかった。
弱小才能隠し持ち弱弱青年のバ~カと独り、エアコンの音に紛れて呟いた。
私を何だと想ってんだろうね。優作?2人で飼ってる三毛猫○優作から名を取ってそう名付けた猫に話し掛ける。
あ~あむーなしっ。
でも自信がある。帰ってくるのは自分の所だと。
さて。陸は今どこか?
期待に応え里美の部屋だ。
陸、完全に甘えてペット状態である。
陸君!今日は家泊まっていきなね!
そう強く来られると押されてしまって女の言う通りになるお馬鹿君だ。
うん。そうする。
お馬鹿が返事をする。
陸、いつもこう成ると僕はもうあんな束縛婆とは縁を切る!!!!
と本気で思うが結局はあの束縛婆の所へ帰ってしまう。
そういう自分が嫌いで仕方なかったが経済力があるわけでも無く千鶴子に頼るしか無かった。ねぇ、今日チーズハンバーグ作るから楽しみにしといてね!
うんっ。
コイツは簡単だ何度か寝て遣りゃ上げ膳据え膳で居られる。
馬鹿な女。
そーんな最低なことを無意識に呟いているコイツは腐っている。
でもなぜがコイツには他の誰にも無いコイツだけが持っている純粋で広くて深くて崇高な何かがあってそれに皆惹かれるのだった。
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