第9話 赤銅色バッタ駆除
一週間後、仁は何種類かの言語を用いて自分たちの技術の紹介とその応用方法について記した手紙を陵、リナと手分けして世界各国の数百の研究機関や大学に送付した。
このアナログな方法は意図せず効果を発揮した。一ヶ月語彼らは中東地域の国オーツピエにある国立大学の古代文明研究所から電子メールでの相談をもらったのだ。
その国では3年ほど前から赤銅色に光るバッタが小麦の収穫時に大群をなして現れ小麦を喰いつくしているが、駆除することも捕らえることもできないという現象が起きていると言うのだ。政府もバッタの駆除に力をいれようとしているが今のところ解決する有力な手段もなく人々は手をこまねいて見ているしかない。そこでこのバッタの駆逐に是非力を貸してもらえないだろうかと書かれていた。
仁はメールの前半を読み、何故この研究所はそんなことを依頼してきたのか分からなかったが、後半を読んで理解した。その地方の伝承ではこの事象は三千年以上前に も起こり有力な国さえ滅ぼしたというのだ。
その撃退方法は現在研究所が保持し半分ほどは解読されている古代文書に書かれている可能性があり、国立の研究所としては是非解読したい。しかしその文書は特殊な文字で書かれ、現在の世界のあらゆる言語体系に属していない言語構造を持ったもので、十分なリソースがない研究所ではその文の解読が進んでいないというのだ。
このメールをよこしたキャロル・ワルターという研究者はアイシーの提供するAIの力を使って古代文書を読み解きバッタの撃退方法を見つけてもらえないだろうかと依頼してきたのだ。
そのメールを読むとこれ凄い話だと陵は喜んだが、仁とリナは本当にそんなことができるだろうかと半信半疑の面持ちとなった。しかし令に相談すると「アイはそれくらいなら、もう出来ますよ」との答えであった。
そこで、ともかくもこの初仕事に挑戦することにした。
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