第7話 アイの永遠の仲間と相談相手を作る
何とかマシュマロでのコンピューターの作業継続にめどが付いた頃、令はこれからの作業でメンバーに協力をお願いしたい事があると言い出した。前にリナに言ったのだが、今度はメンバー全員の日記を提供してほしいと言う。陵が何でそんなものが欲しいのか聞くと、それは、そういった人の考え方の詰まった記憶データーベースを作り、それをアイの意識に参照させて様々な思考パターンを学習させると言う。
今は取り敢えず自分の日記など自分に関する記録を入れているが、更にもっと多様に現代人の考え方を詰めたいと言う。歴史上の偉人の伝記などもデーターベースに入れていくつもりなのだが、現代でアイが知る人間の考え方も是非取り込みたいと言うのだ。陵が何故そんなものを入れたいのかと繰り返して言うと、令は「アイが成長する過程で悩み事を相談する仲間を作りたい」と答えた。
リナはとんでもないないと思ったが、ふと思い当たって言った。
「それって、ひょっとして、私たちもアイが作った仲間と話をすることができるということかしら」
令は答えた。
「もちろん、アイを通してだけど。―――アイを入れてアイの友達と話すような形になる」
「ふうん、そうなんだ」とリナは言い、ちょっと考えて言った。
「わかった。若い女性の考え方が分かるようなものを提供するわ」
仁がちょっと意外そうな顔をした。リナがそれを見て言った。
「私は日記なんか付けてないから無理なんだけど。昨年亡くなった姉が日記を残していて、私がもらったの。姉と私は似ているところも多かったし―――それなら見せてもいいわ」
令が言った。
「え、いいの?そんなもの」
「いいのよ。私と違って、姉は哲学者のようにいろいろなことを深く考えていて、日記にそれを記していたの。それを何かの役に立たせることが出来れば姉もきっと喜ぶと思うの」
令は「ありがとう」と言った。結局、アイシーの創始者の高弦、SF的なことが大好きな山田も自らの考えの情報を提供することになった。リナはすでに亡くなった姉にまた会えるかもしれないと思い、高弦は自分がアイの中で、ひょっとするとずっと生き続けられるかも知れないと思い、令はアイが自分の分身となり必ず未来を生き続けるのだと考えていた。
仁はそのことが意味することに気が付いた。それはアイが自発的に学習していき、その成長過程でそれを阻むことがあっても、仲間と意見を交わすことで解を見つけ成長を続けていくことであると。そして、やがてそうして意志をもったアイの意識は、人間と同等の存在になり、やがて人間を超えた存在となり得ることを。
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