第2話 精霊界の食事

リンゴーン……

リンゴーン……


魔王様は、無事に精霊界への入り口に着いた。


ため息混じりの魔王様。

『おぉ、なんと美しい。これは素晴らしい。』



そう言いながらも、

辺り一面に咲く花々に手を添えながらも香りを堪能していた。



『ふぅ、これが精霊界の入り口かぁ。どーれ?私の手で開けて見せようぞ。』


手をかけるが、



押しても引いても開かない。

(なにかヒントがあれば。さて、どうしたものか……)


魔王様はしゃがみこみ考える。



と、そこに花の蜜を吸いに来た

美しい蝶々を見付ける。

魔王様はすかさず蝶々に質問を投げ掛けた。



『そこの美しい蝶々さん。こんにちは。私はからやって来た旅人です。精霊界への入り方を、教えて下され。』



蝶々はハタハタと、飛びながら

蜜をたっぷり吸い

不思議な時空の中へ入って行った。


慌てる魔王様。

『待たれや、蝶々。』



時空が消えかける時に、

間一髪で蝶々の後を追う魔王様。



ハタハタ。と精霊界へと案内する美しい蝶々は、

どんどん精霊界の奥へ奥へと

進んでいく。



『蝶々さん、早いぞよ。』


惑わすような蝶々の仕草を魔王様は楽しんでいた。



精霊界に着く頃には、魔王様は

皆から変な眼差しを一身に受けていた。



魔王様はクビを傾げる。

(私はどこか変かな?変化したはずだが…)



精霊界の女王と、魔王様が初対面となる頃には、



時空が思い切り開いていた。

女王は言う。


『あなたは魔界から来ましたね?さぁ、お帰り下さい。姿形は美しくとも、匂いで分かります。あなたからは血の匂いがプンプン致します。さぁお引取りを。』




魔王様は、思わずひざまずいて、

許しを乞いました。



『確かに、女王の言う通り。私は魔界から来ましたが。あなたがたと仲良くしたいのです。』


周りはザワ着きました。



【汚らわしいわ…ヒソヒソ】

という声にも魔王様は耐え忍びました。



確かに、真っ赤な唇に

真っ赤な瞳……。

血の香り。魔王だとは思うけど、

少しだけ様子を

見ましょうかね?



そう女王は考え直して、、、魔王にある飲み物を提供した。



黄金に光るツボに、たっぷりの

花の蜜が入っている。

『コレを飲んで血の匂いを消して。それが出来ないのなら出て行ってくだされ。』




魔王様は、花の蜜の香りが甘ったるくてベタベタする肌触りに

一瞬考えたが、


精霊界へ遊びに来たかった。




という夢を捨てきれずに、

花の蜜を一気に飲み干して見せた。


あたりはザワつく。


《おぉ〜素晴らしい。》

《新しい仲間ね!》



皆は口々に喜びをあらわにした。


女王は、手を伸ばす。

『さぁ、私のてのひらに口づけして誓うのです。』



魔王様にとって、誓いの口づけは

ある意味魔界との決別を表すのだが……


羽根をパタパタさせる精霊達を

見ていると



まんざら悪い気はしないな。と、

既に魔王様は


精霊界の魔法に掛かっていたのであった。

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