第3話 オトドケ/忘れ物のお弁当を届けに行こう

○輝日東高校・校内・プール・午前中

   #七咲がプールから上がる水音。


七咲

「ふぅ……(ひとりごと)タイム、少し縮んだかな。」


   #ぱちぱちと拍手する音。


七咲

「え……先輩!? どうしてプールサイドに?」

「お弁当……あっ! 私、持ってくるの忘れてましたか!?」

「……はりきりすぎて、うっかりしちゃいました。」


「それで届けてくれたんですね。ありがとうございます。」

「(切り替えて、問い詰める感じで)ところで。」

「なんでしれっとプールに入っているんですか?」


「ここは関係者以外立ち入り禁止ですよ?」

「《顧問の先生に、お弁当を届けに来ましたと言ったら、OKしてくれた》」

「……はぁ(ため息)。先生、それはさすがに緩すぎるんじゃ……」


「細かいこと言わなくてもって、言いたくもなります!」

「まさかとは思いますけど……お弁当を届けに来たってことにして。」

「他の生徒の水着姿が見たかった。」


「なんてこと……さすがにないですよね、先輩?」

「え、《桜の木》? あぁ、確かにプールから見えますね。」

「満開を過ぎて散り始めちゃってますけど……って話をそらさないでください。」


「《見たかった》」

「はぁ、あの桜をですか?」

「あってるけど違う?」


「《桜の木を背にした、七咲の水着姿を見たかった》」

「……へっ? な、なにを……!?」


   #純一、七咲にグッと近づく。急に純一の顔が目の前にあってドギマギする七咲。


七咲

「! あのっ、先輩、急に近づいてきてどうしたんですか?」

「あ……桜の花びら。肩についてたんですか。」

「その、取ってくださってありがとうございます。」


「……あの、先輩。すごい、近いん、ですけど……ううっ!」

「あ……ほ、ほら!」

「みんなこっち見てないで残りのメニューをこなしなさい!」


「え? もうおわっ……」


   #七咲、純一の手を掴む音。


七咲

「先輩、ちょ、ちょっと来て下さい! いいですから!」



《第4話へ続く》


★mimicle(ミミクル)にて配信中★

『ASMRボイスドラマ アマガミ Vol.4 七咲逢編』(CV・ゆかな、CV・浅川悠)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る