第2話 ショクジ/ふたりで朝食を食べよう

○主人公の家・リビング・朝

   #ふたりで食卓を囲み、朝食を食べている。


七咲

「(卵焼きを食べて)はむっ……んん、おいしくできてます。」

「先輩、だいぶ上達しましたね。」

「ふふっ、すぐに得意になるんですから。」


「最初の頃はどうなることかと思いました。」

「包丁やフライパンの位置が全然わからなかったり、お皿を割っちゃったり。」

「卵ひとつ割るのにも大騒ぎしてましたよね。」


「焦げ焦げのお魚をかじったこともありましたね……すっごい苦くて。」

「そうそう、食べた時先輩そんな顔してました。」

「でも、ちょっとずつ上手になって。」


「今ではちゃんと卵焼きも焼けるようになって。」

「《わたしの教え方のおかげ》、ですか?」

「違いますよ、先輩が本気で取り組んでいて、ちゃんと練習をしたからです。」


「どんなに優秀な指導者がいても、本人のやる気がなければ無理なんだって。」

「以前教わった水泳のコーチも言ってました。」

「それに、上達してるのが分かるの、わたしもうれしいんですよ。」


「なによりおいしいご飯が食べられますし……ふふっ。」

「毎週通って教えている甲斐があります。」

「あ、でもあんまりお料理に入れ込みすぎて。」


「学業をおろそかにしちゃダメですよ。」

「春から大学で自由に時間が使えるからって。」

「お昼休みに家に帰って作ったりとか。」


「《それいいね》じゃないです!」

「(ひとりごと)余計なこと言っちゃったかも。」

「え? 《進路って》……わたしの、ですか?」


「そうですね、そろそろ決めないと。わたしももう3年ですし。」

「……なんですか先輩、急にうれしそうな顔して。」

「(照れつつ)はい……先輩と一緒に暮らすのだけは、確定してますね……」


「これは、仕方ないんです。」

「先輩が一人暮らしとか、心配で心配で。」

「だからですね……もう、ニヤニヤしないでください!」


「……そ、それより今日は先輩のご両親、なかなか起きてこないですね。」

「いつもはこの時間には……」

「え? 《もう会社に行った》?」


「あの、美也ちゃんは……はあ、朝から遊びに。」

「(徐々に声小さく)ということは……ひょっとしてふたりきり……」

「(ドギマギして)えっと、先輩、その……」


「あ、そ、そういえば!」

「今日、塚原先輩が来るんです!」

「部活の練習を見学するんですよ。」


「《卒業してるのに学校に入れるの?》って。」

「もちろんです。輝日東のOGですし。」

「なので、今日は塚原先輩に部長としてちゃんとやれているところを見せないと。」


   #学校に行こうとしてバッグを手にする七咲。カチャ、とバッグの金具がなる音とか。


七咲

「《まだ七時だよ》って……」

「帰宅部だった先輩はピンと来ないかもしれませんけど。」

「遅れるわけにはいかないです。(少し得意げに)なにせ、部長ですし。」


「それじゃ先輩、行ってきます!」



《第3話へ続く》


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