寸評&結果発表
多くのご参加ありがとうございました。
僭越ながら寸評を書かせていただきました。
以下短くはありますが、よろしくお願い致します。
【寸評(参加順)】
1 あなたを、永遠になりたい/偽教授さん
https://kakuyomu.jp/works/16817330652034473632
ストレートに刺さる鋭利な重さ。倒叙視点で当事者(激重ちゃん)の思考が追えない得体の知れなさも相まって、ラストの狂気が際立っていた。企画開始からわずか3時間足らずでこの作品を投じてきた作者に敬意を表したい。
2 砂糖化症候群/棗御月さん
https://kakuyomu.jp/works/16817330652038260556
身体が砂糖化する奇病に侵された世界で、お互いの味を確かめ合う(とはいってもプラトニックな)少年少女の話。SFな風景描写が個人的に好み。二人はこの先も依存しあっていくのだろうが、重さで言えばかなりライトな部類ではなかろうか。
3 Too Heavy To Love/山野エルさん
https://kakuyomu.jp/works/16817330652040168130
絶対に1作はあると思った、物理的に重い彼女。前半のプラトニックな関係を貫くけれども「私のことを嫌いにならないで」という無理難題に「おおメンヘラ彼女の常套句ですな」と勝手に頷いていたが、最後にこう着地すると思わなかった。
4 愛してるの響きだけで/惟風さん
https://kakuyomu.jp/works/16817330652033356554
裏切られた彼氏に私の身体の一部を送り続けるという狂気から、しんしんと降り積もる雪のような重さを感じた。バンドマンの薄い言葉を拡大解釈して受容する女の子が重くなるのは一種の様式美だな、と新たな知見を得た所で畳み掛ける後半。正直このラストを予想出来た方はいないと断言出来る。突き抜けてて好き。
5 遠い呼び声/霞(@tera1012)さん
https://kakuyomu.jp/works/16817330652033832852
異世界転移した魔力のない魔法使いと、彼女の前に現れた美しい謎の男とのラブロマンス。初志貫徹で男側が主人公を愛し抜くが、重いというよりかはかなり純愛だった。参加作の中では心穏やかに読めた作品。
6 不揃いな前歯/押田桧凪さん
https://kakuyomu.jp/works/16817330652048685247
彼氏の前歯を叩き折るところから始まる、無自覚激重彼女の一人称小説。狂った思考が脳に直接流し込まれる感がもういっそ清々しい。彼氏は一方的に受容しているので、彼は何も思わなかったの? 一緒に狂ってしまったの? と思っていたところ、B面に当たる続編が投稿された。
7 【短編】いのち、果つるまで/壱単位さん
https://kakuyomu.jp/works/16817330652123723403
ポストアポカリプス的な世界観かな、と思い読んでいたら彼女が狂っていたパターン。こちらもそうだが、今企画の参加作を読みすぎて、作中に何らかの肉類が出てくると「あっ(察し)」となる体質になってしまった。
8 不揃いな前髪/押田桧凪さん
https://kakuyomu.jp/works/16817330652126381231
押田桧凪さん2作目。「不揃いな前歯」で前歯を叩き折られた彼氏側視点での作品。一方的にされるがままかと思いきや彼は彼で激重で相思相愛だった。であれば前作のラストは彼にとって本望であっただろう。前作とセットで読みたい作品。
9 許嫁がキツくあたってきて心身共にボロボロなので婚約解除したら泣いて謝ってきたがよりを戻す気は無い/みことやけんさん
https://kakuyomu.jp/works/16817330652036797820
タイトルから分かる通り「ざまあ」系小説。恐らく振られたヒロインがこれから激重に変身する、ということなのだろう。もう少しそのヒロインがデレてるところがあった方が読みやすかった気がする。
10 世界でいちばん幸せの歌/折り鶴さん
https://kakuyomu.jp/works/16817330652325332351
激重彼女に監禁される男の話。一方的にされるがままの状況に疑問を抱くことを許されず、ただ従順に日々を過ごすばかりの男と思いきや、捨てられた途端に自分が重くなるパターン。押して駄目なら引いてみろの応用型だった。
11 彼女ができたが胃が痛い/@miaさん
https://kakuyomu.jp/works/16817330652147187964
なりゆきで付き合うことになった彼女が主人公のために弁当を作る話。多分この彼女も初彼氏だったに違いない。読みながら、重い人って自分の事を客観視できていないが故に己の想いを押し付けてしまうことで愛情の不均衡が起こるのだな、と原点回帰するような思いだった。
12 Leucanthemum paludosum/中田もなさん
https://kakuyomu.jp/works/16817330652453729403
清純派BL。相手の男の子に淡い恋心を寄せる話かと思ったら違った。タイトルはノースポールの学名だが花言葉がいくつかあって、そのうち一つが今作のテーマになっている(ネタバレになるので書かないが)。
13 ビリオンステップ・タイムループエスケープ/山野エルさん
https://kakuyomu.jp/works/16817330652438708462
山野エルさん2作目。少女がいつの間にかタイムループに巻き込まれ、見知らぬ女に殺され続ける話。物語が進むにつれループが10回や100回で終わらず1億、10億をはるかに超えていく。通して主人公に対する想いが重いか重くないかで言えば重くないが、作品としては面白く読ませてもらった。
14 ディエス・イレ/三寿木 春さん
https://kakuyomu.jp/works/16817330652687815964
夢と現実が入り乱れ、虚実の中で彼女に縛られ続ける男の話。オルゴールなどもそうだが、思いに縛られ続ける円環構造と同じ動きを続ける観覧車って相性がいいなと感じた。
15 その想(おも)いは重いですか?/転生新語さん
https://kakuyomu.jp/works/16817330653171121974
物理? 物理的に重いやつか? と見せかけ、正統派の着地を見せたGLラブコメ。重いか重くないかで言えば重くはないが、朗々とした語り口でボケ続けられるのがすごい。未来ちゃんの必殺技でちょっと笑ってしまった。
16 激重彼氏・彼女 まとめたーの/染谷市太郎さん
https://kakuyomu.jp/works/16817330652033245274
短編集での参加。全8篇にわたり堪能できるオードブル的味わい。比較的軽い話も重い話も収録されているが、量的にくるものがある。個人的に3作目の「ねえ、せんせい」で先生から罪悪感を引き出し続ける彼女が最重だった。一途と重いって本当紙一重。
17 左目/尾八原ジュージさん
https://kakuyomu.jp/works/16817330652049721943
今作の激重彼女の激重シーンは、読みながら丹念に脳をすり下ろされているような感覚になった。助けて、早くこの悪夢よ覚めてと泣いて懇願したくなるような作品。激重彼女が思い描く二人の終点を自他の境界を越えた先に置いているところが、他作と一線を画す重さだった。
18 「君」と付き合えて、ま、よかったと思うよ?/赤井風化さん
https://kakuyomu.jp/works/16817330653187162996
実体験? 実体験なのか? とドキドキというよりハラハラしながら読んだ。彼/彼女を追いかけ追われる主人公の心情やそのやり取りが妙にリアルで、エンタメとして純粋に楽しんでいいのか悩むレベルだった。確かにお洒落カフェにいるOイシMサヨシ顔のイケメンに碌な奴はいない。
19 巡礼/押田桧凪さん
https://kakuyomu.jp/works/16817330652669696244
押田桧凪さん3作目。観覧車で彼氏を弔いながら2人の思い出を振り返る話。激重彼女の根源たるクズ男の解像度が高い。彼の薄っぺらい言葉に夢を見ていない、淡々と語られる彼女の冷静な愛情に「こういう重さもあるのか」と新鮮味を感じた。
以上寸評でした。
【結果発表】
どの作品も非常に読み応えがありました。
さて、激重彼氏・彼女選手権栄えあるグランプリは…………
左目/尾八原ジュージさんです!
おめでとうございます!
圧巻でした。読みながら息が止まりました。
文句なしの激重彼女オブザイヤーです。
トロフィーなんかは出ませんが、そんなものより重たい重たい彼女を書くことに特化した作家であると今後も誇ってください。
そして準グランプリも選出しました。
「君」と付き合えて、ま、よかったと思うよ?/赤井風化さんです!
おめでとうございます!
グランプリしか選出しない気でいたのですが、企画で求めていた重さにドストライクだったのと、あまりのリアルな重さに思わず選出させていただきました。
以上簡単ではございますが、激重彼氏・彼女選手権2023の締め括りとさせていただきます。
次項は私の独り言です。
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