編集後記

 こんな企画を立てておきながら身も蓋もないが、私は激重彼氏彼女に耐性がない。


「ダーリンダンス/初音ミク」「薄ら氷心中/椎名林檎」辺りを聴いていて、「世間様の思う重い彼女ってこんな感じ? あれ、私意外と好きかも」と新たな性癖開拓でもすっかと安易に計画したのが始まりだ。


 新作書き下ろしのみで期限も1ヶ月ないのに激重ちゃんを書けと、レギュレーションも厳しいし10作も来れば多い方かなと思っていた。


 結果、甘かった。

 Twitterで「企画立てました」という宣伝をするや否や瞬く間に拡散され、アクティビティはほんの1日で1,000超(普段の100倍。こわい)。


 さらに某フォロワーの方々から「そういえば昔書いた激重ちゃんはこちらです」とご提示いただいた作品が、もう既に想定する重さを限界突破していた。私は戦慄した。

 もしかしてとんでもない企画を立ててしまったのではなかろうか……。


 続々と参加する粒揃いのクソ重い彼氏彼女に2、3作目辺りにも関わらず早くも冷や汗が出始める始末。それでも「○○さんがあなたの企画に参加しました」の通知は鳴り止まない。


 なんで皆そんなに重い彼氏彼女に覚えがあるの?? 何なの?? 義務教育なの??? 私だけ履修漏れてたの??? と生きる世界の違いに怯えながら、しかしページを捲る手は止まらない。

 多少の食欲の減退はあったものの、どの作品も楽しん怖いもの見たさで読むことができた。


 募集の時、私は確かに「付き合ったことや出会ったことを心の底から後悔する相手、こちらの精神を蝕む相手、泣いて地面に頭を擦り付けるほどに勘弁願いたい相手」を例に挙げた。

 がしかし、本当にそんなレベルの作品に出会えるとは思わなかった。少なくとも今回グランプリの『左目』に出てきた激重彼女は来年のバレンタインデーまで忘れることはないだろう。

 とは言えどの作品も思い思いに重い彼氏や彼女で、今後ストーリー構成やキャラクター造形をする際の参考になるものばかりだった。

 読み手で参加された方も、この機会に方向性の異なる「重さ」に触れられたのなら企画主としてこれ以上の喜びはない。


 末筆にはなるが、総勢19作品も寄せていただいた皆様には心からの感謝を述べたい。

 カクヨムを初めて半年もない私の企画にご参加いただき、そして新たな知見性癖の扉を開いていただき、ありがとうございました。


 いつかまた別の自主企画でお会いしましょう。

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自主企画用ノート 月見 夕 @tsukimi0518

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