第7話
ラザロもイラストレーターである。アンナはずっとフリーでやってきたが、ラザロはデザイン会社に所属していて、世に出したイラストもアンナより多かったし、収入も安定していた。
「でも、ラザロのイラストに盗作の疑いが出たらしいんです。ラザロが話してくれなかったから、私はいまだに詳しく知りませんが…」
エミールの家は、店から歩いて行けるところにあるマンションの一室である。そこに向かう道すがら、アンナは自分達にあったことを話していた。
「それ以前もケンカすることはあったけど、盗作疑惑のせいでラザロは気持ちがどんどん荒れていって、ちょっとしたことで言い争いになるようになって…。そうしたら、私が部屋にいない間に、旅行鞄と手近な荷物がなくなってて…」
「ふん」
「結局、会社は辞めてしまったようです。これも人づてに聞いたことだけど」
アンナが話し終わると、今度はエミールが自分のことを話した。
エミールが女性に興味がないことは、特に秘密ではないらしい。
でも、言って回ることでもないから、馴染みのお客さんでも知らない人はいるそうだ。
「フェルディナンドさんは知ってる。あの客は…、どうなんだろうな。知ってるのかな」
あまりに気楽に話すので、アンナは思わず笑ってしまう。
翌朝、アンナはエミールのマンションから出勤し、昼に一度自分の部屋に帰った。
エミールはその後も何日か心配していたが、特に何もなかったようだ。
今ではすっかり元の生活に戻っている。
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