第29話【何故】配慮なんて知るか!!全部実況する!!(ヤケクソ)【こうなった?!】5
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ちなみに校舎裏へ来た直後の二人のやり取りだが、こんな感じたった。
「スレでやり取りはしてたけど、こうして顔を合わせるのは初めてだな?
魔眼保持者??」
チェスタがいきなりそう言ったので、ユートは警戒する。
けれど続いた言葉に、その警戒をあっさり解くこととなった。
「考察厨兼迷探偵だ、よろしく」
「え」
「おや、疑ってるな?
じゃあ、証拠を見せよう。
アレはたしか二回目の実況だったか?
ダンジョン実況だ。
謎が解けなくて、泣いてたのを助けてやっただろ?」
言われて思い出すのは、とあるダンジョンの最奥にあった扉を開くためのパズル。
その謎解きだ。
扉には五つの穴があり、そこにはめる為の球が用意されていた。
球にはそれぞれ文字が彫られていて、とある順番ではめ込むと扉が開くという仕掛けだった。
球には、【ko】【n】【h】【ku】【o】という文字があった。
最初は意味がわからなかった。
ちんぷんかんぷんで困っていたところを、この考察厨兼迷探偵が答えを教えてくれた。
そのお陰で先に進めたのだ。
ちなみに、この謎謎の答えは手の指の名称だった。
彫られていた文字は、その頭文字である。
つまり【o】は親指、【h】は人差し指のことだ。
それがわかればあとは簡単で、順番に球を穴にはめ込んで扉を開いたのであった。
「困ってはいたけど、泣いてはいなかったかなぁ」
ユートは減らず口を叩いて、チェスタを見た。
画面越しでは頭の中しか読んだことがなかったし、その情報量で吐くほど酔ったから気づかなかったが、まさか女性だったとは。
それもエルフだとは思わなかった。
道理で頭の中の情報量が桁違いなわけである。
ユートは言葉を続けた。
「でも、捜査ってなにをすれば?
俺、暗部時代に情報収集ならしたことあるけど。
なにかを詳しく調べるとかはやったことないぞ?」
ユートが、口に手を当てて欠伸をする振りをしながら聞いた。
それから、ちらりとチェスタの斜め後ろを見る。
それに気づいて、チェスタがなにやらメモ用紙を取り出してサラサラと書き付けていく。
そして、それをユートに見せた。
『生徒会に監視されてるな?
何したんだ、魔眼保持者www』
それを見て、ユートは頷く。
それから、もう一度同じように手のひらを口に当ててこう言ってくる。
「俺、得意なことって言えば、怪我を治したりだからなぁ。
まぁ、それが気に入らないってぶん殴られることもしょっちゅうだけど」
(意訳:病院の件もだけど、その前段階で殴られたじゃん?
アレで目をつけられて、ずっと実力隠してるかもって疑われてる)
「なるほどな」
(意訳:わかった)
チェスタは頷くと、腕を組んでしばらく難しい顔で思案した。
やがて、
「とりあえず、お前は携帯端末で細かく記録をとってくれ」
(意訳:好きなだけ実況してろ)
そう言った。
そして、捜査が始まった。
とは言っても、この日はすでに日は暮れていた。
帰宅部の生徒はすでに帰宅している。
残っているのは、教師と従業員。
そして部活動をしている生徒だ。
「それで、俺は何をすれば??」
ユートは訊いた。
よくよく考えれば、ほぼ全生徒に嫌われているユートを伴っていると、生徒や教師たちに邪険にされかねない。
というか、100ぱーされるだろう。
生徒会長もそれを察していながら、何故こんな仕事を割り振ったのか。
「そうだな、まずは、【同級生】に連絡を取ってくれないか?
彼女から話を聞きたい」
「こんな時間に?」
「女子寮の門限は八時だろ。
あと二時間ある。
お忍びでデートしようぜとか言ってみろ。
ああいうタイプは、喜んできてくれるぞ」
「来るかなぁ」
半信半疑で、ユートは携帯端末を操作して彼女にメッセージを送ろうとする。
そこに、チェスタが口を挟む。
「とても大事な話がある。
突然で悪いと思ってる、でも、来て欲しい。
待ってる。
こうメッセージを書け。
場所は、グランドの隅っこにある、デカイ木のとこな」
「ん、わかった」
ユートは基本素直なので、言われた通りにメッセージを打ち込んだ。
イーリスへ送る。
すぐに既読がついた。
可愛らしいスタンプで、【了解】と返信があった。
続いて、身支度を整えてから行くから少し遅れる、というメッセージ。
それを見て、ニヤリ、とチェスタは悪い笑みを浮かべた。
「いやぁ、こうも簡単にヒットするなんて楽しいなぁ、純粋無垢な学生は」
なんて言って、指定したグランドの片隅にある大きな木が植わっている場所へ向かった。
そこには、花壇があり、そしてベンチも設置されている。
そして何故かライトアップされていた。
話をするにはたしかにちょうどいいだろう。
少し遅れる、と言っていた通り、イーリスは四十分ほど経った頃やってきた。
学園内だというのに、なぜか私服でオシャレをし、メイクもバッチリ決めてきた。
ほのかに石鹸の香りが漂ってきたので、シャワーも浴びてきたようだ。
そして、ユートを見ると花が咲いたように微笑んだ。
しかし、そのユートの横に立つチェスタを見て、自分が何故呼び出されたのか説明を受けると、だんだん表情が死んでいったのだった。
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708:魔眼保持者
意味わからん
709:名無しの冒険者
あ、戻ってきた
710:名無しの冒険者
どした?
なにかあったん??
711:魔眼保持者
いや、迷探偵に指示されて
とりあえず最初に【同級生】から話聞きたいから呼び出してくれって言われたんさ
んで、指示通りに呼び出したんだけど
なんか、話が終わったら
ぷりぷり怒って帰ってった
712:名無しの冒険者
どんな失礼な質問したんだ、迷探偵
713:考察厨兼迷探偵
いやぁwww
ほら、その子、どうにも魔眼保持者に気があるっぽかったし
でも、どっちかっていうと【ファントム】に近づきたいだけのような気もしたからさ
どんな悪女かなぁ、なんならからかってやろって、思ってさwww
ちょっと呼び出しのメッセージに工夫をしたんだ
714:名無しの冒険者
工夫??
■■■
チェスタに、
「ほら、貼り付けて貼り付けて」
と促され、イーリスに送ったメッセージをコピペする。
すると、それを読んだスレ民からは呆れの書き込みがされた。
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732:名無しの冒険者
迷探偵、お前、これは……
733:名無しの冒険者
あー、あえて主語を抜いて
相手に内容を察して貰えるようにしたのか
734:名無しの冒険者
人間って都合のいいようにしかメッセージを受け取らないしなぁ
貴族とはいえ、まだ学生にこの文はちっと意地悪じゃないかな
735:考察厨兼迷探偵
勝手に勘違いしたのは向こうだ
こっちは、本当のことしか書いてない
736:名無しの冒険者
詳しいことも書いてないだろうが
737:考察厨兼迷探偵
これも社会勉強だよ、社会勉強
なにせ、お貴族様だ
これくらい流せないようじゃ将来苦労するだろ?
738:底辺冒険者
なんというか、考察厨兼迷探偵氏は貴族に対して冷たくはないでござろうか?
739:考察厨兼迷探偵
冷たいっつーか、俺、貴族嫌いだもん
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「えーと、つまり、八つ当たり??」
書き込みを読んだユートが訊いた。
「まぁ、そうとも言うかなぁ。
事実として、僕は貴族が嫌いだから」
理由を聞いた方がいいんだろうか、とユートは少し迷ったが、触らぬ神になんとやらという言葉もあるのでそれ以上は訊ねなかった。
代わりに、
「じゃあ、なんでこの仕事を受けたんだ??」
「んー、そうだなぁ。
強いて言うなら、こんな機会でもないと魔法学園の敷地内なんて入れないだろ?
どんだけ贅を凝らした校舎なのか、生で見てみたかったんだよ」
なんて言ったかと思うと、ジィっとチェスタはユートを見た。
「あと、お前と仕事すると楽しそうだなって前々から思ってたからさ」
「えー、そんな理由?」
「理由はそんなもんでいいんだよ」
チェスタにとっては、それでいいらしい。
「それよりも、お前こそ酷いと思うぞ?」
「なにが??」
「あそこまで好かれてるのに、気付かないふり。
それどころか、ガールフレンドじゃないとか。
ニブチンにも程があるって話」
「そうか?
子犬でもからかってるって感じだと思うけど」
何しろ、イーリスは貴族だ。
それも、血筋がめちゃくちゃいい公爵家の娘だ。
どう考えたって、気まぐれに野良猫や野良犬を可愛がる程度の興味しかないように見える。
「子犬相手に、メイクバッチリにしてなんならシャワーも浴びて来るかねぇ?
服だって、アレ、余所行きのだったろ」
「身嗜みを整えただけじゃないの??」
「それだったら制服で十分だろ。
学生の正装は制服だし」
そこまで言って、ふとチェスタの中に疑問がわいた。
「そもそも、なんであの公爵令嬢さんはお前のこと好いてるんだ??
なんかきっかけがあっただろ??」
チェスタはその疑問をぶつけてみた。
しかし、当のユートに心当たりは皆無なのであった。
「それじゃ、改めて元暗部さんに仕事を頼もうか」
気を取り直して、チェスタはそう口にした。
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