第28話【何故】配慮なんて知るか!!全部実況する!!(ヤケクソ)【こうなった?!】4

午後の授業は、通しで実技授業だ。

つまり、帰りのホームルームまで誰も戻ってこないことになっている。

他の一年のクラスも、移動教室だ。

しかし、防犯のために警備が出入口に立つことにはなっていた。

さて、ユート以外誰もいない教室。

やってきた警備。

その警備に発見されるユート。

条件は揃っていた。

ユートは警備から、授業をサボっていたと学園側に報告が行き、呼び出されることとなったのだった。

そして、生徒指導の教師の元へ連行され、叱責された。

お前はこの学園に相応しくないだの、なんだのと怒鳴られる。


(くっそめんどくせぇなー)


その思考が態度に出ていたのか、今度はその生徒指導の教師に体罰を受けることとなった。

さすがに教師は誤魔化せないと考え、ユートは適度に殴られてやった。


陛下ラトラにバレたら、また噛みつかれるなぁ)


いや、確実にバレているだろう。

ラトラにはそれだけの情報収集能力があるのだから。

でも、他人の立て方などユートは知らない。

上手い立ち回りも、ユートは知らない。

こういうやり方くらいしか思いつかないのだ。

殴られながら、観察してわかったことだが。

どうやら、この教師もユートのことが気に食わないようだ。

殴られ、腫れた目を薄ら開けて、バレないように気をつけつつ、ユートは教師の頭の中を覗いてみた。

教師は、ユートのことも気に入らないのはその通りだった。

しかし、それ以上に貴族の生徒たちへ鬱憤が溜まっているらしい。

注意しても、生意気に口答えされ、なんなら実家の権力をチラつかせ屈服させられる。

そんな毎日に、たまるストレス。

そこに現れた標的が、ユートだった。

ユートは表向きは孤児で、なんの後ろ盾もない庶民だ。

だから、はっきり言ってしまえば貴族の子弟より価値は落ちる。

この学園のなかでだけならば、無価値と言ってよかった。

だから、教師もそしてユートのことが気に食わない生徒も、安心してユートに暴行を加えられるのだ。


さて、ある程度のところで教師の気も済んだらしい。


教師は指導室を出ていった。

教室に続き、ズタボロに殴られたユートは床に転がされるままになっている。


(さて、これでちっとは妙な疑いが晴れるといいけど)


ユートはごろっと仰向けに寝転がって、ぼんやりと照明を眺めながらそう内心で呟いた。


***


ユートがクラスメイト、そして生徒指導の教師から暴行された。

生徒会長のアイリはその報告を受けるや、難しい顔をする。

アイリは秘密裏に、ユートの本性を、そして実力を探っていたのだ。

しかし、齎される内容は落ちこぼれ生徒が、生徒会に入ったがためにクラスメイト達に目の敵にされ、暴行されたというもの。

または、身分が低く後ろ盾がないことをいいことに指導教諭から暴行されたというものだった。

しかも反撃はせず、されるがままだったということだ。


「気のせいだったか?」


ユートが生徒会へ呼んだ時のことを思い出す。

たしかに、あの時彼は殴られはしたものの魔法を使って無傷であった。

クラスメイトの時も、同じ手を使ったものと思う。

しかし、指導教諭の時は魔法を使わなかったらしい。

そして指導教諭の件では、暴行後、自分で保健室に行って怪我を処置したらしい。

保健医が不在なことをいいことに、実に手馴れた感じで処置をしたとか。

いまいち、彼がよくわからない。


「………」


学園側にこれだけのことをされている。

これ以上の面倒事を避けるため、実力を隠しているともとれるが。

やはりいまいち判然としない。

と、そこで生徒会室のドアが叩かれた。


「どうぞ」


アイリの返事を待って、ドアが開いた。

現れたのは、エルフ族の女性だ。

外見は二十歳程。

短い金髪に、翠色の瞳をしている。


「失礼します」


エルフはそう言って、生徒会室に入ってきた。


「貴女が、生徒会長さんですか。

どーも、よろしくおねがいします。

チェスタ・トゥーンと申します」


「あぁ、あなたが噂の探偵さんですか」


世間で知らない者はいない、名探偵である。

数ある難事件を解決し、時には迷宮入りした事件すら解決に導いたらしい。


「おや、僕も有名になったものだ」


楽しそうに、チェスタはいうと早速本題に入った。


「聞いているかとは思いますが、学園内外のドラゴン襲撃事件、そして魔族襲撃事件。

これらを捜査するよう、学園側から依頼を受けました。

今日から早速仕事に取り掛かります。

しかしながら、僕は学園内のことはよくわかりません。

そこで、一人助手をつけて貰えないかと挨拶ついでに頼みに来ました」


ニコニコとチェスタは言ってくる。


「誰か、都合のいい人いませんか??」


■■■


509:魔眼保持者

_(›´ω`‹ 」∠)_


510:名無しの冒険者

おや、やつれてるな

どうした、魔眼保持者


511:魔眼保持者

いやさ、午後からいろいろあったじゃん?

生徒指導の教師からも殴られたりさ

で、そのあともう1個

イベントがあってだな


512:名無しの冒険者

今度は誰に殴られたんだよ?


513:魔眼保持者

いや、殴られたんじゃなくて

こう、情報量が多くてついていけなくなったというか

なんというか


514:考察厨兼迷探偵

魔眼保持者と一緒に仕事することになったなうwww


515:名無しの冒険者

>>514

は?


516:名無しの冒険者

>>514

はい?


517:名無しの冒険者

>>514

???


518:名無しの冒険者

>>514

え、ちょっと待ってどゆこと??


519:名無しの冒険者

>>514

(( 'ω' 三 'ω' ))


■■■


王立魔法学園の校舎裏。

すでに陽も落ちて薄暗い。

そこに、魔眼保持者ことユートと、エルフ族であり迷宮なしの名探偵との呼び声が高いチェスタが携帯端末を片手に顔を付き合わせていた。


「驚いてる驚いてる♪」


チェスタは楽しそうに、携帯端末に表示させた掲示板を見ながら呟いた。

ほんの数分前のことである。

校内放送でユートは呼び出しをくらい、生徒会室へ来てみればチェスタが居た。

そこで生徒会長に説明されたのだが、チェスタは探偵らしい。

それも、難事件をいくつも解決してる名探偵らしい。

そんな名探偵と引き合わせられたかと思ったら、一緒に仕事をしろと言われた。

その時のユートの反応はといったら、スレ民と同じで、


『どゆこと??』


と疑問符しか浮かばなかった。

その後、詳しいことはチェスタが説明するからと、この校舎裏にやってきて、チェスタが【迷探偵】だとカミングアウトしたのだ。

それらを驚いてるスレ民へ、説明する。

その説明を受けたスレ民の反応はというと、


■■■


544:名無しの冒険者

は?


545:名無しの冒険者

(( 'ω' 三 'ω' ))


546:名無しの冒険者

はい??


547:名無しの冒険者

へ??


548:魔眼保持者

うん、戸惑うよね

わかる

俺もいまだに戸惑ってる


■■■


ユートの書き込みを受けて、迷探偵ことチェスタはことの次第を書き込んでいく。


■■■


554:考察厨兼迷探偵

そんな難しい話じゃない

実は表立ってないだけで

【落園回廊】以外のダンジョンでも、同じことが起こってたってだけの話だ

エリート校の生徒が、本来ならそこにいないはずのモンスターに襲われ、乱戦の末、最下層に落下

遺体がみつかる

最初こそ貴族の子弟が犠牲になっていたけれど、最近は能力を見出された庶民の子供が犠牲になっていた

頻繁に問題が起きてたのが【落園回廊】だったから見落とされてたんだ


555:特定班

マジか

俺もまだまだだな


556:考察厨兼迷探偵

でな、魔眼保持者が生徒会に入ることになった

病院での治癒&回復魔法無双した件な

あれは、王立魔法学園と他のエリート校の生徒同士の交流会も兼ねた合同授業だったんだ

王立魔法学園側はトラブルが続いていたから、ここでこの交流会を中止にすると面子とかそういうのが潰れる

だから、予定通りこの授業は行われた

そして、【落園回廊】の時と同じことが起こったってわけだ

結果、怪我人が続出して緊急ってことで受け入れた病院はパンクした


557:名無しの冒険者

あ、それを解消したのがスレ主だったわけね


558:考察厨兼迷探偵

そういうこと

ちなみに、あの時はヴィリストニア生徒会長が独断で連れてったらしい

いい掘り出し物だと思ったんだろうな

事実として、医者の手が足りてなかった

本来なら、許されないことだが

今回は、実家の権力諸々使って生徒に治癒させたことを許可させた

実家のヴィリストニア侯爵家の株も上がったしな


559:考察厨兼迷探偵

その件から、俺は他校から依頼の打診を受けた

あ、俺リアルで探偵業してんだ

そんなわけで、色々問題が起きてるから捜査してくれって言われてさ


560:名無しの冒険者

なるほど


561:考察厨兼迷探偵

そんで、とあるエリート校に行って捜査した

そしたら、魔族と繋がってるやつを見つけることに成功した


562:名無しの冒険者

゜+。:.゜おぉ(*゜O゜ *)ぉぉ゜.:。+゜


563:名無しの冒険者

マジか!


564:名無しの冒険者

そんでそんで??

どうなったん??


565:考察厨兼迷探偵

捕まえて自白させようとしたけど

そいつ、暗殺されたんだ

いきなり全身燃えてさ


566:名無しの冒険者

マジか


567:考察厨兼迷探偵

ま、だから真実はいまだにわからない

そこに、今度は王立魔法学園から依頼があった

他校での話を聞いたらしい


568:名無しの冒険者

それで、王立魔法学園に来たのか


569:名無しの冒険者

でも、よく魔眼保持者を見つけられたよな

しかも都合よく一緒に仕事できるなんて

運がいいな


570:考察厨兼迷探偵

>>569

そんな難しいことじゃない

元々、魔眼保持者が王立魔法学園にいることは事前に知ってたし

生徒会に入ったのも知ってた

だから、


「学園については詳しくない。だから一人助手がほしい」


「生徒会には雑用係がいると聞いている。その子を貸してほしい」


っていえば一発だった

仮にも貴族の家出身者で、更に優秀な人間で固められている生徒会だ

生徒会の仕事ならまだしも、ほかの、それも民間に委託された仕事の手伝いなんてしたいって言う子は少ないと踏んでいた

子供とはいえプライド高いからな

さらに雑用係ともなれば、いくら生徒会役員って肩書きであってもやりたがる生徒は少ないと踏んだ

やらせるなら、言うことを聞かせられる庶民出身の生徒だってな


571:名無しの冒険者

な、なるほど


572:考察厨兼迷探偵

そんなわけで、俺は魔眼保持者を堂々とレンタルすることに成功したわけだ

魔眼保持者も相当鬱憤が溜まってたみたいでさ

紹介された時は酷い顔してたぞ


■■■


「え、俺、そんな酷い顔してた??」


「してたしてた」


■■■


582:考察厨兼迷探偵

んで、お互い顔を合わせたあと

校舎裏に来て、俺が考察厨兼迷探偵ってバラした

その途端に、顔色よくなったからな


583:魔眼保持者

そんなに??


584:考察厨兼迷探偵

分かりやすかったぞ


585:考察厨兼迷探偵

まぁ、そんなわけで

魔眼保持者と一緒に仕事することになった

なんなら、実況してもらう


586:名無しの冒険者

えー、いいの?


587:名無しの冒険者

コンプライアンス的にどうなん、それ?


588:考察厨兼迷探偵

そうでもしないと、魔眼保持者の魔眼をフルに使えないからな

俺の前でなら堂々と使えるし


589:名無しの冒険者

いいのか、それで?


590:魔眼保持者

俺、頑張る!!

久しぶりに、実況らしい実況ができる

(๑•̀ㅂ•́)و✧


591:名無しの冒険者

そういや、素朴な疑問なんだけど

生徒会って休みないの?


592:魔眼保持者

>>591

あるけど

普段から何気に忙しくて

休みの日は寝て終わる

俺は普段から寝ていたいと言っているが

平日は寝て

休日は遊び倒したい人だから


593:名無しの冒険者

逆転してんのか


594:魔眼保持者

最近は、イジメが激化したから

それにかこつけて、堂々と授業サボってる


595:名無しの冒険者

だからwwwサボんなwww

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