第27話【何故】配慮なんて知るか!!全部実況する!!(ヤケクソ)【こうなった?!】3

そんなこんなで、ユートの生徒会役員生活が幕を上げた。

とは言っても、雑用係である。

だから、華々しい扱いは受けなかった。

むしろ、今まで授業を昼寝してサボりまくり、成績は落第確実の落ちこぼれだ。

生徒会、風紀委員会もだが、これら二つの委員会は成績が特に優秀であり、将来有望株が入ることを許されている。

つまり、まかり間違ってもユートが入れる委員会ではないのだ。


王立魔法学園にもだが、さらにその内部組織である生徒会、風紀委員会には入りたくても入れない者は大勢いた。

そして、ユートは庶民の出であることから元々生徒たちから嫌われていた。

しかし、そこに何故かわからないがある意味で出世したことにより、嫌い見下していた生徒たちからの嫉妬を集めることとなったのである。

結果、なにが起こったのかというと。

世間一般で言われる、イジメであった。

言い方を変えると、精神的肉体的ダメージを伴う暴行行為だった。

訴えたら捕まるやつである。


■■■

お花、綺麗(●´ω`●)



1:魔眼保持者

生徒会の朝の会議があるってことで登校したら

俺の仕事ぶりを見たからか、机に花が活けてあった


つ【花言葉が不吉な花が花瓶に活けてあり、机に置かれている画像。机には、誹謗中傷の落書きが施されている】


2:名無しの冒険者

(;´∀`)…うわぁ…


3:名無しの冒険者

スレ主、それ虐めだよ


4:魔眼保持者

え、これが?!

噂に聞くイジメ?!

じゃあ、アレだな!

学食行って、ハンバーグ頼んだらタワシがでてくるやつだな!!(●´ω`●)ワクワク♪


5:名無しの冒険者

おいwwwなんでwww

ワクワクしてんだwww


6:魔眼保持者

いやぁ、最近生徒会の仕事のスキマ時間とかにさ

動画とかウェブ小説とか読むようになってさ

これが面白くて色々見てたんだよ

そしたら、タワシハンバーグが出てきてだな

落書きは、花の美しさを際立たせるためのアートか何かかと


7:名無しの冒険者

教科書とかは無事か??

そっちも破かれたり、捨てられたりってよく聞くし


8:魔眼保持者

それに関しては大丈夫

この学園、置き勉禁止だから


9:名無しの冒険者

寮に戻ったら私物が無くなってないかも確認しとけ


10:魔眼保持者

>>9

そっちも大丈夫

もともと私物が少ないし


11:名無しの冒険者

トレーニングウェアとか戦闘服、私服

そういうのをズタボロにされるかもだぞ


12:魔眼保持者

>>11

あ、そうなったら、それを理由に生徒会の仕事サボれんじゃん

昼寝生活に戻れるから、願ったり叶ったりだわ


13:名無しの冒険者

ポジティブ過ぎる


14:名無しの冒険者

生徒会の仕事自体は、ここ数日の報告見る限り楽しそうだけどな


15:魔眼保持者

>>14

うーん、思ったほどじゃないかな

朝早いから眠気ヤバい


16:名無しの冒険者

ねーねー、スレ主

今、他の生徒も教室いるん?


17:魔眼保持者

>>16

いるー


18:16

他の生徒の様子はどんな感じ??


19:魔眼保持者

んー、なんか俺に微笑みを向けてきてる

気があるのかね?


20:名無しの冒険者

それwww嘲笑www


21:名無しの冒険者

なんか、スレ主を暗殺しようとした女子の方が

いっそ清々しく感じるな


22:魔眼保持者

さすがに、指輪はこの前の一件で回収されたっぽいから

つけてる子はいない、か


23:名無しの冒険者

指輪??


24:魔眼保持者

ほら、負の感情を魔力に変換できて

さらにドラゴンや魔族に変身できる、あの指輪


25:名無しの冒険者

あー、あれ


26:名無しの冒険者

生徒からもちゃんと回収したのか


27:名無しの冒険者

まぁ、回収しないと大変なことになるもんな


28:魔眼保持者

念の為、いまちょこっと魔眼使って確かめたんさ

あの時見た魔力は見えなかった


29:名無しの冒険者

とりま、それは一安心だな

ε-(´∀`*)ホッ


30:名無しの冒険者

でもさ、なんで急にイジメが激化したんだ?

スレ主、前はこんなこと無かっただろ??


31:考察厨兼迷探偵

>>30

そんなん、考えるまでもないだろ

生徒会に入ったからだろ



■■■


机に突っ伏しながら、ダラダラと掲示板を眺める。

それから、活けられた花を見た。

花言葉はともかく、綺麗な白い花だ。


「花のある生活ってのも、悪くないなぁ」


花を見て心を癒される。

なかなか充実した生活ではないか。

というか、はた、とユートは気付く。


「この花と花瓶、わざわざ買ったんかな」


だとすると、ものすごい労力だ。

きっと自分と同じ、趣味に全力になるタイプなのだろう。

イジメというのは、嫌ってる、あるいはなんかよくわからないけど気に食わない、鼻につく相手にやるものだ。

しかし、その相手のためにわざわざ自分の時間とお金を費やして、花と花瓶を購入して、こうして活けたわけだ。

誹謗中傷の落書きもしたわけだ。

むしろ、親近感が湧いてしまう。

魔眼を使って頭の中を覗けば、これをやったのが誰か一発でわかるだろう。

ユートはこっそり魔眼を使おうとして、


「あふ、あー眠ぃ」


眠気に負けて、めんどくさくなり結局使うのをやめてしまった。

と、そこに、


「なに、これ」


そんな、登校してきたイーリスの声が届いた。


「ちょっと、ユート?!

これ、どうしたのよ?!」


「んあ?なにが?」


突っ伏していた顔を上げて、ユートはイーリスへ返す。


「この花と、それに机!!

なにがあったの?!」


「さぁ?」


「さぁって」


「花、綺麗だろ。いいよね、花のある生活。

心が癒されるっていうかさ」


「そんな問題じゃない!!」


イーリスには、これがイジメであると一目瞭然だった。

だから、その標的になっているユートを問い詰めようとした。

しかし、ユートは再び机に突っ伏して寝てしまう。

それを無理やり起こそうとするが、クラスメイトの女子生徒の一人がそんなイーリスを見かねて声をかけてきた。


「関わるのはやめた方がいいですよ?

差し出がましいとは思いますが、イーリス様も先日の件で一部の生徒から不信感を買っています。

家名にこれ以上の傷がつくのは避けるべきでは?」


その言葉に、イーリスは周囲を見回した。

イーリスの取り巻きが魔族であった。

真相はどうであれ、そう見られている。

これ以上のスキャンダルは避けた方がいい、という忠言だ。

一応、魔族の件に関してイーリスは無実である、ということになった。

情報も、そう操作された。

また、イーリスを信奉するものは多い。

だから、これ以上イーリスが妙なことに巻き込まれるのを避けようと、その信奉者たちが動きはじめた。


「そうですよ。イーリス様。

コイツがそういうことをされるのは、それだけの理由があるんです。

放っておきましょう」


別の女子生徒がそう言った途端、放っとけコールが始まった。

それをユートは、聞こえない振りをして携帯端末を弄り、実況していた。

その実況を読んでいたスレ民の反応はというと、


■■■


49:名無しの冒険者

怖いねぇ


50:名無しの冒険者

怖い怖い


51:名無しの冒険者

女子ってこういう時

めちゃくちゃ怖い団結力をみせるな


52:考察厨兼迷探偵

もういっそ、イジメが酷いんで生徒会やめますっていえば??

正当な理由になるだろ


53:魔眼保持者

へ?


54:名無しの冒険者

ん?


55:名無しの冒険者

どした??


56:魔眼保持者

イジメを理由にしてやめていいの?


57:名無しの冒険者

そりゃ、いいだろ


58:名無しの冒険者

生徒会の仕事やりはじめたら

嫌がらせが多発しました

もっと有能な人に任せてください

とかなんとか言えばいいんじゃね?


59:名無しの冒険者

そう上手くいくといいけどな


60:名無しの冒険者

イジメはなかったーとか言われそう


61:名無しの冒険者

握りつぶされそうだな


62:名無しの冒険者

一番いいのは、最初から外に、警察に訴えることかなぁ

とにかく事を大きくする

あとは、一連のことを動画に全部撮って、SNSで流す

動画サイトでもいいけど

この時に顔にモザイクを入れないのがベスト


63:名無しの冒険者

>>62

社会的に本気で抹殺しようとしてて草


64:名無しの冒険者

でも、それも握りつぶされそう


65:魔眼保持者

んー、なんか基本的にめんどいから

実害っちゅう実害も無いし

放っておく


66:名無しの冒険者

いや、実害出てるだろ


67:名無しの冒険者

机に落書きって

学校の備品に落書きしたってことだからなぁ

スレ主本人がこれを実害じゃないって言い張ると、実害が出てるのは学園側なわけだし


68:考察厨兼迷探偵

あ、じゃあさ

風紀委員に相談してみれば?

まぁ、相談できればだけど

ようは学園の備品に、これこれこういう落書きがあったから、風紀が乱れつつありますって

相談っていうより、報告だな

これなら、風紀委員は動かざるを得ないだろ


69:名無しの冒険者

あ、なるほど


70:魔眼保持者

報告なら大丈夫かも

一応やっとくか

あと、俺再生魔法使えるから教科書とか仮にズタボロにされても、普通に直せるんだよなぁ

だからガチで実害出るの学園側なんだよ


■■■


その日、ユートは一日寝て過ごした。

ずっと、教室で寝て過ごした。

イーリスは話しかけようとするものの、他の生徒の妨害にあってそれは叶わなかった。

そして、あっという間に昼休みになった。

ユートはウキウキと学食へ向かう。

タワシハンバーグがでてくることを期待して、ハンバーグ定食を注文した。

普通にハンバーグ定食が出てきた。


■■■


261:魔眼保持者

つ【美味しそうなハンバーグ定食の画像】

タワシハンバーグじゃなかった

(´・ω・`)


262:名無しの冒険者

なに、しょんぼりしてんだwww


263:名無しの冒険者

あー、腹減った(›´ω`‹ )


264:名無しの冒険者

学食だよな?

教室戻ったら、教科書とかイタズラされてそう


265:魔眼保持者

ハンバーグ、( ゜Д゜)ウマー


266:名無しの冒険者

そうか、美味いか


267:名無しの冒険者

たんとお食べ


268:魔眼保持者

まぁ、教科書とかイタズラされても

どっかで書き込んだように、俺、直せるし


269:名無しの冒険者

あれ?

前、噛み付かれたのは魔法で治したん?

わざわざアルコール使ってたみたいだけど


270:魔眼保持者

あー、あれか

お仕置に関してだけなんだけどな

とりあえず、すぐ痛みを忘れると為にならないから

自然治癒させろっていう命令なんだよ


271:名無しの冒険者

パワハラじゃん


272:魔眼保持者

仕方ないだろ

犬は飼い主に逆らえないんだから


■■■


その後、食事を終えてユートは教室に戻った。

スレ民が予想した通り、机の上にはズタボロになった教科書やノートが散乱していた。

イーリスの姿は無い。

いるのは、ユートのことが気に食わない男子生徒ばかりである。

というか、殺気立ってる。

二名ほど、教室から出ていく。


(あー、これは)


ポリポリと面倒くさそうに、ユートが頭をかいた。


(そういえば、次の授業は実技だったな)


ということは、女子たちは更衣室に移動してそのまま授業に向かうのだ。

男子はこの教室が更衣室代わりである。

とりあえずこの教科書とノートを何とかしようと動こうとした時だ。

いきなり、飛び蹴りを食らった。

ユートは床に倒れ、転がる。

それを合図に、他の生徒が一気にユートを蹴りつけ始めた。

罵詈雑言が飛び交う。

防御魔法を体に這わせるように展開しているので、ユートにはダメージが無い。

しかし、男子生徒たちはそんなことに気づかない。

ただ日頃の鬱憤を晴らすためだけに暴力をふるう。

やがて、気が済んだのか男子生徒達はユートから離れる。

そして、午後の実技授業に出るために着替えをし、教室を出ていった。

なんなら、嘲笑して出ていった。

ユートは倒れたままである。

そんなユートの口から漏れるのは、


「スースー……」


そんな寝息だった。

途中から、ユートは寝ていたのだ。

もちろん、ダメージなんて皆無である。

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