第26話【何故】配慮なんて知るか!!全部実況する!!(ヤケクソ)【こうなった?!】2

そして、全ての報告を終わるとユートは面倒くさそうに欠伸をした。

ただ、掲示板のことやスネーク活動については報告していない。

アレは、プライベートだ。

だから、報告する必要を感じなかった。

ユートからの報告を聞き終えたラトラは、愉快げにユートを見た。

そして、


「報告は以上ですか?」


そう確認する。

ユートは頷いた。

早く帰って寝たいのだ。


「そうですけど」


「……そうですか。

では、釘を刺しておきましょう」


「はい?」


意味がわからず、ユートはラトラを見た。

ラトラは、徐に立ち上がりユートへと近づく。

そして、胸ぐらを掴んだかと思うと、


ガブッ。


「い、でででででっ?!

いだだだだっ!!

痛い、痛いですって!!??」


ユートの喉元へ噛み付いた。

それは、もう食いちぎらんばかりに噛み付いた。

やがて、パッとラトラはユートから離れる。

そして、ユートの血で僅かに濡れた唇を親指で拭うと、


「飼い主でもない者に、殴らせましたね?」


「あ、いや、その」


「ユート・クルース、貴方の飼い主は誰??」


「この国、痛っ!」


今度はデコピンされた。


「魔眼保持者の飼い主じゃなくて、貴方の飼い主は誰??」


「……ラトラ女王陛下です」


「わかってるならよろしい」


ユートの返答に満足したのか、ラトラは執務机に戻り、座った。


「正直、唾でも付けられてたらどうしてくれようか、と考えていたんですが。

杞憂でしたね」


ユートは、噛み付かれた箇所に触れ、まだ血が出ていることを確認する。

あとで、包帯を巻かなければ。


「ユート」


改めて、ラトラがユートの名前を呼ぶ。


「はい?」


「私はたしかに貴方に目立つな、他の生徒を立てろ、と言いました。

けれど、プライベートでまで怠け者でいろ、とは言ってませんよ?」


これは、趣味のことがバレているのだろうか。

そう思うも、ユートには確認する度胸が無かった。


「はぁ」


「話は以上です」


それで、本当に話は終わりだった。


■■■


227:魔眼保持者

戻ったー

(´・ω・`;)ハァー・・・

疲れた


228:名無しの冒険者

お、おつかれー


229:名無しの冒険者

おかあり、スレ主


230:名無しの冒険者

おかえりー


231:名無しの冒険者

殴られた?


232:魔眼保持者

んあ?

あー、喉笛食いちぎられるかと思った


233:名無しの冒険者

え?


234:名無しの冒険者

なに、罰としてモンスターの群れの中にでも放り込まれたん?


235:名無しの冒険者

拷問されたんか??


236:魔眼保持者

喉笛に噛み付かれたんだよ

アルコールがしみるぜ(´;ω;`)


237:魔眼保持者

噛み切られて死ぬかと思った(´;ω;`)


238:特定班

まぁ、死ななかったんだからいいじゃんwww


239:名無しの冒険者

とりま、今後の趣味活動についてはどうなる?

やっぱり活動休止?


240:名無しの冒険者

失踪か


241:魔眼保持者

いや、それに関しては何も言われなかった

たぶん知ってそうだとは思うけど

やぶ蛇になっても嫌だから確認してない

でも、多分大丈夫

暗部に戻れって言われてないし


242:名無しの冒険者

お、じゃあ続けられるのか!


243:名無しの冒険者

良かった良かったε-(´∀`*)ホッ


244:特定班

俺の情報網によれば

スネーク活動、知ってるっぽいぞ

まぁ、大目に見てるってことだろうな


245:魔眼保持者

マジか(´・ω・`)

というか、なんで特定班そんなことまで知ってるんだよ?!


246:特定班

特定班舐めんな


247:名無しの冒険者

上層部からのお叱りがなかったのはいいけど

生徒会役員はしなきゃなんだろ?

任命されてるわけだし


248:魔眼保持者

( ∩≧Д≦∩) ンア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛~~!


そうだったぁぁああ?!?!

_| ̄|○ il||li


無給の仕事なんて嫌だよ

タダ働きするくらいなら

それならまだ趣味で面白おかしく過ごした方がいい

(ノシ´:ω:)ノシ バンバン


249:名無しの冒険者

あー、どっちにしろ趣味活動する時間が減るな


250:名無しの冒険者

失踪だけはすんなよ


■■■


ユートは、一旦携帯端末の画面から視線を外す。

そして、任命状を見た。


「はぁ」


大きく息を吐き出す。

学生なので、この仕事を受けても一銭にもならない。

まだ金銭が絡んでくれるなら、真面目にやらなくもないが。

無給では、どうにもやる気が起きなかった。


「つーか、世の中の学生って金も出ないのに委員会活動とかやってんのか、信じらんねぇ」


これは、労働力の搾取では無いのだろうか。

思ったが、彼の口から出たのは、


「はぁ」


二回目のため息だった。

そして、また掲示板を見た。


■■■


269:名無しの冒険者

スレ主も若いなぁ


270:魔眼保持者

>>269

なにが??


271:269

逆に考えるんだ

これめっちゃ、ネタになるじゃん


272:魔眼保持者

どゆこと??


273:269

いいか?

この掲示板については、学園の人間は誰も知らないんだろ?

じゃあさ、バレる心配はしなくていいってことだ

違うか?


274:魔眼保持者

まぁ、そうだけどさ


275:269

でも、魔眼保持者はどこの学園に通ってるのかを書き込んでる

すでに、学園の内情をここで暴露してるわけだ

ひとつ例を上げるなら、英雄エディのこととかな

まぁ、アレは暴露とは違うが

要するに、何が言いたいのか、というと

今更、学園の内情を愚痴ったところで何も問題はないだろってこと


276:魔眼保持者

つまり?


277:269

生徒会での仕事、実況しちまえばいいんだよ

簡単な仕事だろ?


■■■


その書き込みに、ユートは雷に打たれたような衝撃を受けた。


「た、たしかに!!」


つまらないなら、創意工夫で楽しくすればいいのだ。

自分が楽しく仕事ができるよう、タダ働きでも楽しく過ごせるよう考えれば良かったのだ。

すぐさま、その書き込みに対してレスする。


■■■


286:魔眼保持者

>>269

お前、頭いいな!!


287:名無しの冒険者

うわぁ


288:名無しの冒険者

スレ主、チョロ


289:名無しの冒険者

魔眼保持者、チョロいな


290:名無しの冒険者

だから、なんでそんなに実況にこだわるんだよ?

なにがお前をそうさせるんだよ??


291:特定班

>>290

>なにがお前をそうさせるんだよ??

たぶん、ストレス


292:名無しの冒険者

あー、うん、ストレスなら仕方ない


293:名無しの冒険者

ストレス発散、ストレス解消はだいじだよな


294:名無しの冒険者

いや、立派な情報漏洩になるだろ


295:名無しの冒険者

そもそも、生徒会活動中に携帯端末は弄れるのか?


296:魔眼保持者

わからん


297:名無しの冒険者

でも、忘れちゃいけないのは

英雄エディと生徒会長だ

本当は強いかもって疑ってるんだろ?

スレ主のこと


298:269

おや、なら俄然燃えるだろ?

スレ主?

身バレするかどうかのスリルも味わえるわけだ

つーか、これならいつも通りの実況と変わらないだろ?

ただ、場所が学園の外か、内側かってことだけだ

違うか??



■■■


違わなかった。

その通りなのだ。

しかも、エディや生徒会長はユートの実力について疑いを持ちつつあるという。

つまり、実況の難易度は爆上がりというわけだ。

だからこそ、あのスリルが楽しめるのだ。

おもしろおかしく過ごせるなら、公私混同だってする。

なんだか、ワクワクしてきたユートなのであった。

ちなみに掲示板ではスレ民たちが、


【魔眼保持者、チョロいコール】


を書き込みまくっていた。

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