第25話【何故】配慮なんて知るか!!全部実況する!!(ヤケクソ)【こうなった?!】1

王立魔法学園生徒会室。

そこには現在、二人の人間がいた。

一人は生徒会長であるアイリ・ウォン・ヴィリストニアだ

彼女はとある生徒に関する書類に目を通していた。

やがてその書類を執務机に放る。

その書類には、ユートについて書かれていた。

王立魔法学園の一年生。

落ちこぼれのやる気無し男。

成績は赤点である。

退学は時間の問題だとも言われている生徒だ。

書類と、彼女がかき集めた情報を照らし合わせる。

なにも矛盾はしていない。

彼は落ちこぼれだ。

この学園に相応しくない、落ちこぼれ。

だというのに、


「妙だな」


アイリはそう呟いた。

もう1人の人物に語りかけるように呟いた。

そして、改めて彼の経歴が書かれた報告書に目を通した。

五歳の時に、国境付近で起こった帝国との小競り合い。

その戦火に巻き込まれた孤児。

軍に保護された後は、国が運営する孤児院へと送られ過ごす。

孤児院を出る歳間際になって、彼が回復や治癒といった魔法が得意ということがわかり、王立魔法学園へ入学がみとめられた。

それが、彼の今までであった。


「……考えすぎか?

いや、しかし」


昨日の一件を思い出す。

学園内で魔族が出現し、そのゴタゴタの中を生き残り、なんならこの件に関して事情を知ってそうな1年がいる。

そんな情報があり、ユートを生徒会室に呼んで尋問した。

情報提供者は、スタンピードを止めた英雄エディだ。

その尋問時、あまりに舐めた態度であったのと、彼が落ちこぼれということから俄には信じられない魔法を得意としている、とユートが自己申告したため、それが本当かどうか試したのだが。


「……あの一年、確実に攻撃が見えていたな」


風紀委員の一人がユートに殴りかかった。

王立魔法学園の風紀委員は、基本精鋭揃いだ。

まず、落ちこぼれでは動きについていくことはできない。

ユートは実技の成績もダメダメだからだ。

だから、殴られ、蹴られた。

しかし、元風紀委員長でもあるアイリには見えていた。

ユートは、最初の攻撃、そのあとの暴行も魔法でダメージを最小限にしていた。

そして、不自然にならない程度には痛めつけられていたのがわかった。

その後、実は数時間前に王立魔法学園と他校生との交流も兼ねた実技授業にて多数の怪我人が出る事態が発生していたのだが、その回復役として病院に連れていった。

そこでユートは、涼しい顔をして怪我人全員を治してしまったのだった。

なんなら、欠伸をしながら魔法を使っていた。


「回復と治癒、再生魔法が使えるのも本当、か」


謎だった。

こんな人物が、今まで欠片も記録をのこしていない。

そんなことがあるのだろうか?

どんな小さなことでも、こういうのは何かしらの記録として残るものだ。

しかし、ユートにはそれが無かった。

本当に突然、能力を見出されて王立魔法学園にやってきたとしか出てこないのだ。


一つ、これはアイリの直感ではあるがわかったことがある。


「ユート・クルースは実力を隠している」


そうとしか思えなかった。

そう呟くと同時に、ずっと立っていた人物。

ユート・クルースの情報をリークしてくれた人物を見た。


「それが私の見解だ。

お前はどう思う?


エディ・ロンフォールド・ヴァスク?」


問いかけに、エディは複雑そうな顔を浮かべる。


「回復、治癒魔法に関しては疑う余地は無いでしょう。

しかし、実力を隠している、ということに関しては、その」


「信じられないか?」


エディは頷いた。

家格としてはエディの方が公爵家なので上だ。

しかし、ここは学園内であり生徒会という組織の中ではアイリの方が立場が上である。

アイリの方が上司なのだ。

だからエディも相応の態度で接していた。


「まぁ、それもそうだろう。

だから、お前から彼が今回の件でなにか知っているかも、と情報をリークされた時、すぐに調べさせた。

そこで、興味深いことがわかったんだ」


「興味深いこと?」


「【死の谷デス・バレー】での件だ。

あの時、彼はレンジャー数名を大蟻の攻撃から守っていた」


「……え?」


「本人から、面倒なことになるからと口止めされていたらしいが。

事実だ。

彼は、大蟻の襲撃に巻き込まれ、レンジャーを守り。

また、怪我人を治している。

しかし、それを口止めしていた。

何故だろうな?」


問われても、エディはわからなかった。

エディはユートではないのだ。

だから、わかるわけはないのだ。


「まぁ、本人の意思がどこにあろうと。

有能な者は使うだけだ。

これを彼に渡してこい」


そう言って差し出されたのは、任命状だった。

生徒会役員にユートを任命する、という書類だ。


■■■

【何故】配慮なんて知るか!!もういい全部書き込む!!(ヤケクソ)【こうなった?!】


1:魔眼保持者

\( 'ω')/アアァァァァアアアァァァァアアア!!!!(発狂)


2:名無しの冒険者

おや、どうした魔眼保持者?


3:名無しの冒険者

なんか荒れてる??


4:考察厨兼迷探偵

なんかあったんか??


5:魔眼保持者

ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛


バンバンバンバンバンバンバン

バン     バンバンバン

バン (∩`・ω・)  バンバン

 _/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/

   \/___/ ̄


6:魔眼保持者

ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"ア"


(´・ω・`)

_(__つ/ ̄ ̄ ̄/_

  \/     /

     ̄ ̄ ̄ ̄


 (´・ω・`)

_( つ ミ  バタンッ

  \ ̄ ̄ ̄\ミ

     ̄ ̄ ̄ ̄


 (´・ω・`)

_(   )

  \ ̄ ̄ ̄\



7:魔眼保持者

もうヤダァァああ!!??


          /\

     . ∵ ./  ./|

     _, ,_゜ ∴\//

   (ノ゜Д゜)ノ   |/

  /  /

 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄


8:名無しの冒険者

荒れてんな(確信)


9:名無しの冒険者

なにがあったんだよ?


10:名無しの冒険者

魔眼暴走しない?

大丈夫??


11:底辺冒険者

珍しいでござるな

魔眼保持者氏がこんなに荒れるなんて


12:名無しの冒険者

なにがあったのか書き込んでくれよ

そうじゃないと、反応に困る


13:特定班

生徒会長と英雄エディに【死の谷デス・バレー】で、大蟻の襲撃受けて撃退したことがバレたらしい


14:名無しの冒険者

マジか


15:名無しの冒険者

いつかはバレると思っていたが

ついに、か


16:底辺冒険者

それでは趣味活動はお預けでござるか


17:名無しの冒険者

魔眼保持者ってことと

【英雄さん】ってこともバレたん?


18:特定班

>>17

いや、それはバレていないっぽい

現段階だと、疑われてる感じかな

俺が調べた感じだと、英雄エディと生徒会長はほぼ確信してるっぽいけど

魔眼保持者が最後のあがきで、知らないって言い張ってた


19:魔眼保持者

もう嫌だァァァ!!??


20:考察厨兼迷探偵

>>18

でも、それがバレただけでこんなに荒れるか?

ほかになんかあったんじゃね?


21:特定班

>>20

察しがいいな

そう、その通りだ

これが届いたらしい

つ【生徒会役員への任命状。名前の部分には黒塗りがされている】


22:名無しの冒険者

わお


23:名無しの冒険者

辞令じゃん


24:名無しの冒険者

よかったなー、出世だぞスレ主

よく知らんが


25:魔眼保持者

よくねぇぇぇえええ!!??

なんでだよ?!


26:名無しの冒険者

大蟻撃退したからだろ


27:特定班

あと、病院で怪我人治しまくったからだろ


28:名無しの冒険者

むしろ、いままでバレ無かったのが不思議なくらいだよな


29:名無しの冒険者

>>28

(*´・ω・)(・ω・`*)ナ-


30:名無しの冒険者

>>28

それな( ´-ω-)σ


31:魔眼保持者

うぅっ(´;ω;`)

飼い主からさすがに説明しろって連絡きた

もうヤダー


32:名無しの冒険者

本来の上司からの呼び出しか


33:名無しの冒険者

え、じゃあ暗部に戻ることになるん?


34:魔眼保持者

まだわからん

でも、その可能性が高い

つーても今すぐじゃないとは思うけど

とりあえず、飼い主に尻尾振ってくる


35:名無しの冒険者

おう、いてらー


36:名無しの冒険者

頑張ってこいよー


37:名無しの冒険者

´ω`)ノイッテラッシャーィ



■■■


肩を落としてトボトボと、王宮内を進んでいく。

そうして、とある部屋の扉の前にユートは立った。

痛み始めた鳩尾のあたりを押さえ、ノックをしドアノブに触れる。


(帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい帰りたい昼寝したい昼寝したい昼寝したい昼寝したい)


脳内がそんな言葉で埋め尽くされる。

意を決して、ユートは扉を開けた。

そこは、このウィスティリアを統べる王がいる、執務室だった。

ラトラ・アルストロメリア・ウィスティリア女王陛下の執務室である。

彼の飼い主であり、その親玉が普段生活している部屋である。


1歩、部屋へ足を踏み入れた。

瞬間、あちこちから武器が飛んでくる。


ドカカカっ!!


飛んできた武器が床や壁に突き刺さる。

しかし、すでにそこにユートはいない。

ひらり、と華麗に避けたのだ。

そんな避けた先に、今度は別の武器をもった人物が彼の首を取ろうと襲いかかってきた。

それを、やはり華麗に避けて、逆に腹部へ掌底を食らわせる。

と、今度は三人ほどが剣を手に飛びかかってきた。

それを、ユートはボコボコにする。

それから、ユートは執務机に座って楽しそうにこちらを見ている女性へ、


「大歓迎、痛み入ります。陛下」


そう言ったのだった。

それから、今しがた倒した連中も見る。


「うぅ、総隊長、強すぎですよォ」


「今度こそ殺せると思ったのに」


「あーっ!!くそ、クソクソクソっ!!」


「平和ボケした学園生活で、絶対鈍ってると思ったのにぃいいい!!!!」


そんな呪詛を吐いている四人がいた。

ユートが欠伸をしつつその四人へ声をかける。


「元、総隊長だ。

ま、もっとがんばるんだな」


この四人は暗部の構成員達である。


「うぅ、頑張ります」


「ぜってぇ殺す」


「うっわ、その余裕叩きおりてぇ」


「絶対平和ボケしてると思ったのに!絶対平和ボケしてると思ったのに!!!!」


そこに、クスクスと女王陛下の笑い声が漏れた。

そして、


「息災で何よりです。

貴方方も、気が済んだでしょう?」


なんて言ったかと思うと、今しがたユートに飛びかかってきた四人を退出させる。

そして、改めてユートを見た。


「さて、色々説明してもらいましょうか?

駄犬ユート??」


ポリポリと、ユートは頭をかいた。

そして、彼女が聞きたいだろうことを報告した。

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