第24話【報告】ガチで身バレするかと思ったwww【スレ】3
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ユートはスレ民の質問に答える。
同時に、今日1日扱き使われた記憶が蘇ってきた。
お膳立てをして、殴り蹴られた。
で、回復、治癒、蘇生魔法が使えるということを納得させるために、無詠唱魔法でその怪我を治して見せた。
その後、携帯を取り返すと、さっさと生徒会室を出ようとした。
したのだが、
「口だけのデマカセではないようだな」
生徒会長にそんなことを言われてしまった。
「デマカセって、あのですね。
俺がこの学園に入ることになったのは、そもそもこの回復魔法と治癒魔法、そして蘇生魔法の腕を見込まれたからですよ?
ちゃんと書類みてくださいよ」
ユートはさすがにそう反論した。
上層部が作った書類。
彼が庶民でありながらこの学園に入学を認められた理由がつらつら書き連ねられている書類。
そこには、ほどよく真実が書かれているのだ。
回復魔法と治癒魔法、そして蘇生魔法の使い手は貴重だ。
その使い手が
事実、これは滅多にないことだ。
でも、逆を言えば低い確率で起こりうることでもある。
だからこそ、表向きの理由として書かれていても不自然ではないのだ。
さてこのやり取りで、なにが起きたのかというと、とある病院へ連行されたのだ。
その病院の建物に入ると同時に、ユートは目を疑った。
死屍累々の光景が広がっていたのである。
「うっわぁ、野戦病院思い出す」
小さく、誰にも気づかれないようユートは呟いた。
これまた暗部時代の記憶だ。
第三次世界大戦が終わっても、ウィスティリア王国はたまに他国と小競り合いをすることがある。
ユートが初めてこの光景を目にしたのは、暗部に配属されてすぐの頃だ。
とある小競り合いが泥沼化した戦場。
そこがユートにとって初めての仕事の舞台となった。
しかし、当時の上司である暗部総隊長から、メインの暗殺が終わるとともに野戦病院に連れてこられ、三日三晩不眠不休で怪我人の回復、治癒、蘇生をやらされたのだ。
(あの時は死ぬかとおもったね。
どう考えても、九歳の新人にやらせる仕事じゃねーよ)
そんな、ある意味での初仕事を、ユートは完璧にやってのけた。
そんな、過去の職場と自分の仕事ぶりに思いを馳せていると、彼をここに連れてきた生徒会長はこう言った。
「治せ、全員だ」
ポリポリと、ユートは頭をかいて、
「わかりましたよ」
素直に応じた。
事情を聞きたいとは思わなかった。
ユートは飼い犬で、国とは生徒会長もだがこの怪我人達のことでもあるからだ。
飼い主の命令には従わなければならない。
ユートは言われた通り、全員治した。
ただし、魔眼は使わなかった。
これは、生徒会長よりも上の飼い主からの命令だからだ。
魔眼保持者だとバレるな。
そう厳命されているのだ。
使うな、と命令していないところに卑しさを感じないでは無かったけれど。
だから、こんな大衆の前で使うようなことはしなかった。
使わなくても、そもそもユートは昔から魔法が得意なのだ。
そうして、野戦病院と化していたその場所を普通の病院に戻した後、ようやく解放された。
本来なら寝ている時間に頑張って働いたため、寮に戻るなり爆睡し、いまさっき起きたところだ。
そして、夕食を食べ損ねてしまったので、報告スレを立てつつ転移魔法で寮を抜け出してコンビニに買い物に来たのだ。
コンビニの駐車場の片隅に腰を下ろし、買い込んだ菓子パンやスイーツを頬張る。
観光地に行かなくても、とても身近に美味いものはたくさんあるんだな、と感謝を捧げ、そして書き込みを行っているのが現状である。
さすがに制服だといろいろまずいので、私服だ。
そんな昼の労働について、愚痴も含めて書き込みをした。
いつも通り、スレ民の反応は早かった。
■■■
215:名無しの冒険者
うわぁ、お仕事おつかれー
216:名無しの冒険者
ていうか、その怪我人はなんだったん??
217:名無しの冒険者
どっかで大きい事故があったとは聞いてないけど
218:名無しの冒険者
特定班、щ(゜д゜щ)カモーン(屮゜Д゜)屮
219:名無しの冒険者
なぁ、スレ主
確認なんだけど、それで済んだの?
■■■
買った缶コーヒーを開けて、ぐいっと呷る。
「なにが??」
呟きをそのまま書き込んだ。
■■■
228:名無しの冒険者
いやさ、要はスレ主って使える人材ってことを証明したってことでしょ?
229:名無しの冒険者
あー、こういう系の厄介事
これからたくさん頼まれそう
230:名無しの冒険者
ん?
ということは??
231:考察厨兼迷探偵
目をつけられたのなら
スレ主の趣味活動の時間が減るな
232:魔眼保持者
は??
:(;゛゜'ω゜'):
233:名無しの冒険者
感謝状とかもらいそう
234:魔眼保持者
>>233
いや、無い
それは絶対ない
ない、はずだ
無いよね??
235:名無しの冒険者
>>234
いや、知らんがな
236:名無しの冒険者
うちらに聞くなよ
237:魔眼保持者
もうヤダー
ぜってぇ、上層部から怒られるー(´;ω;`)
238:名無しの冒険者
中間管理職みたいなこと言うのな
239:魔眼保持者
ある意味宮仕えみたいなもんだけどね!
(´;ω;`)
240:魔眼保持者
いやいや、冷静になれ、自分
国の上層部に昼のことが伝わってるなら
爆睡した時点で俺は拉致られて、折檻されてるはずだ
それがないから大丈夫
うん、きっと大丈夫
241:名無しの冒険者
>>240
DVじゃん
242:魔眼保持者
仕方ないだろ
躾のなっていない駄犬は
殴って言うこと聞かせるやつ多いんだから
243:名無しの冒険者
えー、でもそれって功績でしょ?
怪我した人治したんだからさ
全校集会で感謝状を渡されるくらいは、ありそう
244:魔眼保持者
あくまで陰に居なきゃいけないんだよ
俺みたいな奴らは
それが、事情を知らなかったとはいえ生徒会長が無理やり俺を働かせるから(´;ω;`)
245:名無しの冒険者
なんで、陰にいなきゃいけないとわかりつつ
身バレするか否かというスリルを楽しんでんだよ
246:魔眼保持者
>>245
そんなん、楽しいからに決まってんだろ!!
(。・ω´・。)ドヤッ
247:名無しの冒険者
ドヤ顔されても困る
248:魔眼保持者
でも趣味の時間減るの困る(´;ω;`)
ガチで困る
いいストレス解消なのに
249:名無しの冒険者
>>248
まぁ、またお呼ばれすると決まった訳じゃなし
上層部とやらから呼びだしくらってないなら大丈夫だろ
250:考察厨兼迷探偵
つーか、そんなに心配なら特定班に頼んで調べてもらえよ
上層部が今回の生徒会のお手伝いのこと知ってるかどうかさ
251:魔眼保持者
>>250
∑(ºωº`*)
その手があった!!
252:特定班
ァィョ!!(*゜ω゜*)ノ
253:魔眼保持者
でもまぁ、今回は生徒会室に呼び出された時点で
ガチで身バレ覚悟したけどさ
254:特定班
わかったぞ
255:名無しの冒険者
って、早っΣ(゜д゜;)
256:名無しの冒険者
さすが特定班
257:特定班
とりま、今回のことは見逃すみたいだな
下手に干渉して、逆に魔眼保持者が魔眼保持者だっつーことを知られるよりは、ってことになってるらしい
258:魔眼保持者
まじか
_| ̄|○ il||li
259:特定班
まぁ、さすがにテレビや動画で取り上げられるくらいバズるようなことしたら上層部も考えるみたいだけどな
260:名無しの冒険者
>>259
>テレビや動画で取り上げられるくらいバズるようなこと
たとえば??
261:特定班
そうだなぁ
やっぱり、スタンピード止めたり、ドラゴンとか暴れてるモンスター討伐したり
懸賞金がかかってる指名手配犯捕まえたりしたらじゃね?
262:名無しの冒険者
一応、それ全部、魔眼保持者コンプしてるんだが
それは……??
263:魔眼保持者
バレなきゃ大丈夫
うん、バレなきゃいいんだバレなきゃ
264:名無しの冒険者
じゃあスネーク実況やめろよ
265:魔眼保持者
>>264
心が乾いて死ぬわ!!
ぜってぇ、やめねぇ
266:名無しの冒険者
ねぇ、まじでなにがお前をそうさせるの??
267:名無しの冒険者
この流れをぶった斬る
とりま、疑問なんだけど
指輪の件といい、ダンジョンでの襲撃といい
どうなってんの、これ?
なにか繋がりがあるってのはわかるんだけど
なんでわざわざ、ダンジョンで最下層に落ちたヤツ念入りに殺そうとしてんの?
それに、指輪に関しては実験って話が出てたけど
魔族がそれに関わってるってのも理解出来たけど
なんで、わざわざ人間で実験してんの??
謎だらけなんだけど
268:名無しの冒険者
それなー
269:名無しの冒険者
たしかに
わからないことだらけだよな
270:名無しの冒険者
特定班、この辺のこと
もうちょいkwskわからんの??
271:名無しの冒険者
わからないって言えば、スレ主が案内された病院
なんでそんなに怪我人出てたんだよ?
272:特定班
国内のことならまだしも、魔族側はなぁ
ふわっとした情報しかはいってこないから
なんとも
現状、開発された魔道具【指輪】をつかった実験を人間の子供で行ってるとしか
あー、怪我人に関しても、魔族に繋がってくる
魔眼保持者が治した奴らな
王立魔法学園&他校の上級生たちだったんさ
273:名無しの冒険者
はい?
274:名無しの冒険者
どゆこと?
275:特定班
めちゃくちゃ簡単に言うと
【落園回廊】以外のダンジョンでも、いきなりモンスターが出現して襲ってきたり
生徒が魔族に変身して襲ってきたりして、あの惨状だったってわけ
回復役が間に合ってなくて、急遽魔眼保持者にお鉢が回ってきたっぽい
276:名無しの冒険者
同時多発的だったってこと?
277:特定班
たぶんな
278:考察厨兼迷探偵
まぁ、不思議でもないか
魔眼保持者の時も、キラーフロッグと魔法攻撃が重なってたし
あの時は標的がそれぞれいたわけだから
あれよりも規模が大きくて人数も多かったってだけなんだろ
279:名無しの冒険者
そういや、警察の捜査はどうなってるん?
指輪売ってた雑貨屋摘発したりしてないの?
280:特定班
とりま、捜査中
指輪は押収されたっぽい
店員も拘束されて事情聴取されてるっぽい
実験云々は、俺と考察厨兼迷探偵の働きかけでなんとか伝わったっぽい
281:名無しの冒険者
なるほど
282:魔眼保持者
よし、じゃあそろそろ頃合か
次の凸激先、安価すっぞ!
Σd(≧∀≦*)
283:名無しの冒険者
>>282
いや、安価の前にコートかマスク買いに行けよ
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