第17話【ねえwww】同級生の女子に暗殺されそう( ̄∀ ̄)【聞いて聞いてwww】前編5

■■■


襲撃者の時には使わなかった、いつもの漆黒のコート。

コートを纏い、いつも通りフードを目深に被る。

襲撃者の死体は、ヴィンセントが亜空間に片付けた。

指パッチンで簡単に片付けられるのは、なかなか面白い。

そういえば、この魔法は何気にコピーしてなかったなと、考える。

お互い準備を整えると、ユートの転移魔法で王立魔法学園へと転移した。

場所は、生徒玄関前である。

逃げ惑う生徒へ声をはりあげ、避難ルートを示す教師。

それとは別に、突如現れたドラゴンを倒そうとする教師と、生徒会役員と風紀委員たち。

攻撃魔法が飛び交っているが、ダメージを与えられているようには見えなかった。


「ここは我らに任せて、避難せよ!!」


ヴィンセントが声を張り上げて、ドラゴンへ攻撃している教師と生徒達に指示を飛ばした。

英雄ヴィンセントの姿に、生徒と教師達が一瞬戸惑ったものの、指示通りに動く。


仮にも優秀な者達ばかりだ。

引き際も心得ていた。

とはいえ、少し悔しそうにする者もいたのも、確かだった。

しかし、魔法が効かないこのモンスターをなんとか出来るとしたら、ヴィンセントしかいないのもたしかであった。


「あっ!」


ヴィンセントに後を任せ、今までドラゴンと応戦していた生徒が撤退を始める。

その中の一人が、小さく声をあげた。

ヴィンセントの横に立つ、黒いコートを着て、目深にフードを被った人物を見たからだ。

それは、イーリスだった。

彼女は、唯一最下層へ落ちたユートを探すためにヴィンセントへ、自分も連れて行ってくれと申し出た生徒だった。

しかし、ヴィンセントに断られ、更にほかの教師から宥められて学園に戻ってきたのだった。

その直後に、またいつぞやと同じようにドラゴンの襲撃を受けたわけである。

立ち止まったイーリスに気づき、手を引っ張る者がいた。

エディである。

こちらは、座学を受けていたところドラゴン襲撃の報せを受けて、ほかの委員会のメンバーとともにこの事態に対処していたのであった。


「はやく、避難するぞ!!」


「あの人がいるの!!」


イーリスの叫びに、エディはその視線の先をみた。

居た。

あの黒いコートの人物――ファントムが居た。

ファントムは、ヴィンセントと並んで暴れ狂うドラゴンを見ている。

二人がいるのは、ファントムとヴィンセントの背後である。

つまり、顔は見えない位置だ。

かと思ったら、ヴィンセントが跳んだ。

大剣を振るって、ドラゴンへ切りかかる。

邪竜と呼ばれるドラゴンを数多く屠ってきた武器である。

しかし、わずかに切りつけただけで、ほとんどダメージを与えられていない。

それを、ファントムはなにやら観察しているようだった。


「お二人共、早く!!」


立ち止まっていた、イーリスとエディ。

二人に怒声が飛んだかと思うと、その体が浮いた。


「失礼っ!!」


二人を助けようと、ルドルフが二人を抱えたのだ。

そのまま、その場から走って離脱するのだった。

他の生徒達の姿もない。

どうやら、避難はほぼ完了したようである。


「なるほどなるほど」


余裕綽々で、ファントムことユートが呟く。

ユートの目は全てを見透かしていた。

何故、このドラゴンには物理攻撃も魔法攻撃も効かないのか。

ドラゴンがどうして急に学園内に現れたのか。

その全てを見透かした。

そして、ちまちまとドラゴンを切りつけているヴィンセントへ、大きく手を振って離れろ、と合図する。

それを受けたヴィンセントが、ドラゴンから離れた。

瞬間。

今度は、ユートが地面を蹴って跳んだ。

そのまま、ドラゴンの背中に飛びつく。

ドラゴンが驚いて、更に暴れる。


「たく、手間かけさすなよなぁ」


しかし、ユートは気にした風もなく、ドラゴンの背中を指でなぞった。

すると、様々な魔法陣が出現した。


「えっと、これがこうで。

ここがこうなってるから、あ、ここを、こうやって解くと……。

できた!!」


ドラゴンに施されていた全ての魔法陣が消える。

ほぼ全てが、攻撃魔法を無効化するものだったり、ドラゴンの防御力を上げるものだった。

それら全てを解除し、ドラゴン自身に攻撃が通るようにしたのだ。


「それにしても、なんでこんな姿に……」


ユートは呟いて、しかし答えは出なかった。

ユートにはドラゴンの正体が見えていた。

なんとかしようとしたが、どうにも上手くいかなかった。

元の姿に戻そうとしたが、無効化できなかった。


「ふむ」


考え、ヴィンセントを見た。

ヴィンセントには、襲撃者に続いてこのモンスターも倒したということにしてもらおう。

ユートはそう考え、別の魔法を展開させる。

ユートもヴィンセントも、汚れ仕事は慣れている。


「とりま、真相は考察厨達に考えてもらおう」


そう呟いて、ユートはドラゴンから飛び降り距離をとる。

そして指を宙空に滑らせ、魔法陣を完成させた。


雷神の矢サンダー・アローぉぉぉ!!」


力ある言葉とともに、魔法を発動させた。

弓矢の形をした雷撃が、ドラゴンを貫く。

轟音が響いた。

こうして、ドラゴンが丸焦げになり、倒された。


■■■

811:名無しの冒険者

魔眼保持者も底辺冒険者も

戻ってこないなー


812:名無しの冒険者

(*´・ω・)(・ω・`*)ナ-


813:名無しの冒険者

つーか、底辺冒険者って

あの英雄ヴィンセントだったんだな


814:名無しの冒険者

>>813

え、お前知らなかったん?


815:名無しの冒険者

>>813

今更だろ

ここにいるやつ、ほぼ知ってるぞ


816:名無しの冒険者

底辺冒険者って、ガチで底辺の頃からこの板に出入りしてたからなぁ

古参中の古参だぞ


817:名無しの冒険者

マジか


818:名無しの冒険者

あー、もう気になりすぎて我慢できない

特定班!!

あれから学園はどうなったんだ??


819:名無しの冒険者

ニュースだと底辺冒険者がドラゴン倒したって出てたけどな


820:特定班

とりま、ほぼニュースに出てる通りだよ

王立魔法学園に、どこからともなくドラゴンが出現

たまたま特別講師として王立魔法学園にいたヴィンセントがこれを退治した

今は、どうやってドラゴンが学園に入ったのか調査中

その調査にヴィンセントも協力してるってとこだろ


821:考察厨兼迷探偵

考えられることとしては

誰かが召喚したってことになるんだろうけど


822:名無しの冒険者

召喚??


823:考察厨兼迷探偵

ドラゴンが侵入するには二通りのルートがある

ひとつは、陸路、まぁ町に入って王立魔法学園まで行ったルート

もうひとつは空から侵入すルート

ドラゴン自身が転移魔法を使える、とは聞いたことないし

そんな個体も、今のところ見つかっていない

だから、この二つのどちらかのルートでドラゴンは魔法学園に現れたことになる

でも、そんなことになれば大騒ぎになる

まず、SNSでランキング一位の話題になる

でもそうなっていない

となると、これ以外の方法で学園内に現れたことになる

それが、召喚


824:名無しの冒険者

つまり、誰かが召喚魔法でドラゴンを呼び出して暴れさせた、と


825:特定班

まぁ、普通に考えるならそういうことになるんだよな

現に、ドラゴンが学園に現れる前に

【落園回廊】で、キラーフロッグが出現してる

でも、あのダンジョンには、キラーフロッグは出ないんだ

キラーフロッグが出るのは、沼地とかだから

そこにいないはずのモンスターが居た

そして、襲ってきた

んで、王立魔法学園の件も同じだ

学園敷地内に、ドラゴンはいない

そして、陸からも空からも侵入した形跡がない

これだけ条件がそろってるんだ

明らかに誰かが呼び出した、と考えるのがスジだ

そんで、今のところ魔眼保持者以外に一人、行方不明になってる生徒がいるらしい


826:名無しの冒険者

>>825

じゃあ、そいつがドラゴン召喚した犯人じゃん


827:名無しの冒険者

せめて魔眼保持者が書き込みに来てくれれば、話は早いんだけどなぁ


828:名無しの冒険者

(*´・ω・)(・ω・`*)ナ-


829:名無しの冒険者

色々聞けるしな


830:魔眼保持者

ようやっと聞き取り調査終わったー


831:名無しの冒険者

あ、魔眼保持者!


832:魔眼保持者

待たせた

色々あったから書き込む


833:名無しの冒険者

待ってた


834:名無しの冒険者

おかえり(*^^*)


835:考察厨兼迷探偵

とりま、聞きたいのはドラゴンの侵入ルートだ

やっぱり召喚か?


836:特定班

俺も気になってる

どうなんだ??


837:魔眼保持者

あー、うん、それなー

胸糞悪い話になるけど、真相言っていい?


838:名無しの冒険者

胸糞?


839:名無しの冒険者

勿体ぶらずに早く書け


840:魔眼保持者

じゃあ、書くけど

ドラゴンな、人間が変身したやつだった


841:名無しの冒険者

は?


842:名無しの冒険者

え?


843:名無しの冒険者

はい??


844:名無しの冒険者

ちょ、え??

人間がドラゴンに変身?

ドラゴンが人間に、じゃなくて??


845:魔眼保持者

ほら、俺以外にも今回暗殺対象がいたかもって話が出てたろ?

そっちの人、キラーフロッグけしかけてきた子がドラゴンに姿変えて暴れてたってのが真相

これは魔眼で見たから確定だ


846:魔眼保持者

もう少し詳しく書くと

このドラゴンの子をAとする

んで、Aの標的になってたのがBな

AはBを仕留めるはずだった

でも、それが叶わずさらに手厚く保護されてると知って、逆ギレ

その感情を利用され、ドラゴンに姿を変え暴れた

それを俺が退治した

表向きは、底辺冒険者が倒したってことにした

ここまでで、質問は?


847:考察厨兼迷探偵

>>846

姿を変えた原因は?

なにかの魔道具が使われてたってことでいいか?

それと、退治したってことは、魔眼保持者でも元に戻すことは出来なかったってことでいいか?


848:魔眼保持者

>>847

>姿を変えた原因は?

これはお察しの通り、魔道具が関係してた

魔眼で見たんだけどな、指輪だった

その指輪が、人の負の感情を吸い上げて魔力に変換し、召還や変身魔法を発動させるものだったっぽい

現物を見ようとしたんだが、退治すると同時に壊れてさ

魔眼で鑑定しても、壊れた指輪からはなにも見ることはできなかった


>魔眼保持者でも元に戻すことは出来なかった

これはその通りだ

ドラゴンが元は人間、それも王立魔法学園の生徒だとわかった時点で、元に戻そうとした

でも、ダメだった

どうやっても術式を解くことができなかった

一応、魔眼で術式自体は読み取ったから、これからじっくり解析して調べれば、なにかわかるかもしれない


849:名無しの冒険者

なるほど


850:考察厨兼迷探偵

なるほどな

とりま、魔眼保持者は今どこにいるん?


851:魔眼保持者

>>850

寮の自室

表向きは、ダンジョンから救い出される

底辺冒険者に男子寮まで送って貰う

そこになにかトラブル(ドラゴン襲撃)のことを知って、底辺冒険者とは分かれた

そんで、ずっと男子寮でわけも分からず待機してたってことになってる

ドラゴンが退治されたってことで、避難してた連中が戻ってきて、


「お前なんでここいんの?!」


って言われたwww

さすがに、普段無視してる奴とかも、生きてたんなら教師に報告行ってこいって、すんごい剣幕でまくし立てられた

そこから、教師は来るわ、警察来るわで大変だった

さらに場所移動して事情聴取されてさ

今解放されて戻ってきたところ


852:名無しの冒険者

そうか、おつかれ


853:考察厨兼迷探偵

そんじゃ、お前の生存は知られてるわけか?


854:魔眼保持者

たぶんな

そうそう、解放されて、すぐに【同級生】に捕まって色々聞かれた


855:名無しの冒険者

色々?


856:考察厨兼迷探偵

なにを聞かれたんだ??


857:魔眼保持者

【英雄さん】、まぁ同級生は何故か【ファントム】って呼んでたけど

要は底辺冒険者と一緒に英雄さんがドラゴン退治に来た

直前まで底辺冒険者と俺は一緒にいたから、もしかしてその英雄さん=ファントムさんを見てはいないか?

ってめちゃくちゃしつこく聞かれた

あ、あとちゃんと俺自身が無事ってわかって安心もしてたよ


858:名無しの冒険者

ファントムwww


859:名無しの冒険者

どこから来たんだwww

ファwwwントwwwムw呼びwww


860:名無しの冒険者

それでなんて答えたん??


861:魔眼保持者

助けてくれたの、底辺冒険者で

そんな不審者見てないって言ったよ


862:名無しの冒険者

不審者www


863:名無しの冒険者

自分のことなのにwww

まさかのwww不審者www


864:魔眼保持者

不審者って言ったのが悪かったのか

機嫌悪くして、同級生どっかいった


865:名無しの冒険者

あー、まぁ、同級生からしたら

最初のドラゴン襲撃事件の時に助けてもらった上、手柄まで譲ってくれた相手だもんなぁ


866:名無しの冒険者

その人物、目の前にいるぜって大声で伝えたい


867:底辺冒険者

怖かったでござるよォ(´;ω;`)


868:名無しの冒険者

おや、今度は底辺冒険者だ


869:名無しの冒険者

天下の英雄さんが怖いとは、なにがあったし


870:底辺冒険者

【同級生】の子に捕まって、フードの人物について質問攻めにあったでござる

とにかく、どこの誰なんだってしつこくて(´;ω;`)


871:名無しの冒険者

おやまぁ


872:名無しの冒険者

それで?

底辺冒険者はなんて答えたん??


873:底辺冒険者

従者のアルバイトの子で

詳しいことは個人情報だからおしえられない、と伝えたでござる

でも、食い下がってきて

宗教の勧誘並みの怖さが出てきて、逃げてきたでござる


874:名無しの冒険者

英雄が逃げ出すほどの怖さとは

((((;゜Д゜))))ガクガクブルブル


875:底辺冒険者

魔眼保持者氏ぃ、ガールフレンドにはちゃんと説明した方がいいでござるよ~

(´;ω;`)


876:魔眼保持者

いや、別にガールフレンドでもなんでもないんだけど

(;´Д`)

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