第13話【ねえwww】同級生の女子に暗殺されそう( ̄∀ ̄)【聞いて聞いてwww】前編1
教室はガヤガヤと、いつも通りざわついている。
しかし、今日はいつもより、なんというか明るい雰囲気だった。
【
意外と入院が長引いたのは、検査や、軍からの事情聴取があったから、とのことだ。
この数日、授業は一部内容を変更して行われていた。
休んでいる生徒に配慮しての事だった。
ユートは机に突っ伏して、教室のざわめきを聞きながら、眠りに落ちる。
この数日、とくに【ティリンドム城】への小旅行が終わってからというもの、ユートはまさに悠々自適に過ごしていた。
どの授業でも寝て過ごした。
そして、それを邪魔する存在がいなかったので、実に有意義な眠りを日がな一日貪ることが出来たのだった。
そのため、彼は忘れていた。
休んでいた生徒が復活して、登校してくる。
それがどういう意味であるのかを、ユートはすっかり忘れていたのだ。
少しして、教室のざわめきが消えた。
かと思うと、誰かが教室に入ってきた。
いつもなら、ざわめきに消されるであろう靴音がユートの席へと近づいてくる。
そして、その靴音がユートの席の横で止まる。
「全く、いつも通りね」
そんな呆れた声が、掛けられた。
「ほら、お、き、な、さ、い!!
ホームルーム始まるわよ?!」
なんて言われたかと想うと、ペシペシと軽く叩かれた。
「う~、お母さん、僕まだ眠い」
「だから!!私は貴方のお母さんじゃない!!!!」
声の主は、イーリスだった。
そんな、ある意味いつも通りの光景に、イーリスと同じく今日から登校してきた――なにかとユートを目の敵にしている――女子生徒達が声をかけた。
「イーリス様がわざわざ声をかける価値なんてないですよ、そいつ」
「そうそう、イーリス様は危険に身を置いていたのに。
その間、こいつは遊んでたんですよ?」
「この王立魔法学園の生徒だって言うのに、あの現場近くにいながら、おめおめ逃げ帰った卑怯者ですもん」
イーリスはユートを起こすことをやめて、女子生徒達を見た。
そして、さすがになにか言おうとした。
しかし、それは叶わなかった。
なぜなら、ユートがイーリスより早くこんなことを言ったからだ。
「ジュースとクレープ、ガチで美味しかったぞ~」
受け応えにすらなっていない、まるで宣言のようなそれ。
ちなみに、顔は突っ伏したままだ。
「オススメだから、君らも今度食べなよ」
等と言ってくる始末である。
女子生徒は、バカにされたと思ったのかさらになにか言おうとしてきたが、担任が現れたので何も言わずに自分の席に戻った。
イーリスの席は、ユートの隣なのでそのまま腰を下ろす。
なにか言いたそうな視線をユートに向ける。
しかし、ユートはそれを突っ伏したまま受け流した。
その日は、そんな感じで始まり、そして終わった。
最後の授業が実技授業だったのが、その時に授業担当の教師から延期していた校外授業を近日やるから、班わけを確認しておくようにお知らせがあった。
そういや、そんなもんもあったなぁ、とユートはぼんやりした頭で聞き流した。
聞き流したため教師の、
「ちなみに、予定の調整が出来たらしく、今回は【
という言葉を丸々聴き逃していた。
なんなら、欠伸をしていた。
そんなユートを睨みつけている集団がいた。
イーリスを信奉している、女子生徒達だ。
クラスメイトの半分が女子生徒である。
その更に半分に睨みつけられている。
男子からも睨みつけられているが、女子生徒と違いほとんどが嫉妬であった。
さて、なぜユートがこんなに注目されているのかと言うと、要は校外授業の班わけで彼がイーリスと同じ班だからだ。
貴族でもなく、成績は落第スレスレ。
基本的に授業中は寝ている。
いつもダラケている。
やる気というものを、どこかに落としてきたような人間だ。
自分たちのような、選ばれし存在の中にいるには余りにも場違いな人間だ。
早く退学になればいいのに、と大半の生徒が考えていた。
貴族でも、入りたくても入れないのが【王立魔法学園】という場所だ。
そこに入れた、とういうのは、つまりは入学試験で相応の実力を示したということになる。
しかし、入学から数ヶ月が経過したがユートがその実力を見せた事は皆無であった。
やる気のないユートより、もっと相応しい者を入学させた方がいい、と彼がこの学園にいる本当の事情を知らない生徒たちは皆そう考えていた。
とくに、過激派ともとれる考え方をする者たちがいた。
それがイーリスの取り巻きをしている女子生徒達である。
どこにでもいるクラスのリーダー格、あるいはボスグループと呼称される者達である。
学園側がやめさせないなら、消えてもらえばいい。
そう、たとえば、不幸な事故で。
所詮、ユートは親の顔もわからない孤児だ。
消えたところで、悲しむものはいない。
わざわざ捜す者もいない。
そんな過激で不穏なことを、彼女達は考えていた。
しかし、彼女達は知らなかった。
そんなことすら、ユートにはリアルタイムで筒抜けであるということを知らなかった。
■■■
【ねえwww】同級生の女子に暗殺されそう( ̄∀ ̄)【聞いて聞いてwww】
1:魔眼保持者
スレタイ通りなんだけどwww
俺氏、クラスメイトの女子から謀殺?暗殺されそうなうwww
2:名無しの冒険者
暗殺ってお前www
3:名無しの冒険者
ちょ、お前有名人じゃんwww
4:名無しの冒険者
暗殺されるだけの知名度だったんか、スレ主
5:名無しの冒険者
とりまwww経緯www
暗殺ってwwwどゆこと??
6:魔眼保持者
経緯ってほどの経緯も無いんだな、これが( ̄▽ ̄;)
ただ、今日の最後の授業が実技授業でさ
授業終わりに、実技担当の教師が、いろいろあって延期してた校外授業やるから班わけ確認しておけって言ったんだよ
その瞬間、クラスの女子の殺意という名の視線が突き刺さってだな
7:名無しの冒険者
>>6
殺意って、お前ほんと何したん??
8:魔眼保持者
魔眼保持者ってことがバレて殺気向けられてんのかなぁって、女子生徒達の頭の中読んだんだよ
あ、普段は勝手に頭の中読むとかはしてないぞ
今回は、なんつーか身の危険を感じたからしたまでで
そこは、理解して欲しい
9:名無しの冒険者
自己防衛のために魔眼使ったのか
10:名無しの冒険者
授業終わりだったんだろ?
よくバレなかったな、魔眼使ったって
11:魔眼保持者
目が痒いフリして、手のひらで擦る真似しつつ使ったから
あと、グランドでお日様の下だったのもあったから
堂々と使ってると意外とバレないもんよ
逆にコソコソしてる方がバレやすい
と、訓練施設時代に教わった
12:名無しの冒険者
なんか、説明が泥棒の仕方みたい
13:魔眼保持者
そうやって、ヤバそうな視線を向けてきてる女子生徒の頭の中を読んでみて
まぁ、驚いたよ
こいつ絶対殺すって、意思が伝わってきてさ
そんでついでに俺氏暗殺計画も一緒に伝わってきたって寸法な
14:考察厨兼迷探偵
ふむふむ
でも、殺意を向けられてる理由は
なにが原因で、暗殺計画なんて立てられてるんだよ?
15:魔眼保持者
>>14
ドラゴン襲撃事件で、手柄を譲った子がいるって言ったろ?
同級生な
その同級生の子と同じ班になったんだわ
同級生の子は元々カリスマ性があって、クラスどころか学園でもトップクラスの人気があってだな
それで、ただでさえ俺はこの学園に相応しくないのに、そんな相応しくない人間とその同級生の子が一緒の班になるなんて→( `皿´)キーッ!!許せんっ!!
ってことらしい
16:底辺冒険者
その女子生徒は、同級生の信者か何かでござるか??
(;´Д`)
17:魔眼保持者
>>16
そんな感じかなぁ
めっちゃ信奉してるって感じがする
18:名無しの冒険者
厄介だなぁ
19:魔眼保持者
で、俺は思ったわけだ
これ、実況ネタにできんじゃん、と!
20:名無しの冒険者
思うなwww
21:名無しの冒険者
なんでその思考になったwww
22:名無しの冒険者
だから、なにがお前をそうさせるんだwww
23:名無しの冒険者
実況に命掛けすぎだろwww
24:魔眼保持者
そんなわけで、次の実況は俺がどうやって暗殺されるのか実況するぜΣd(≧∀≦*)
25:名無しの冒険者
こんな楽しそうに、自分が暗殺されること嬉々として報告するやつ、普通いないよなー(棒)
26:名無しの冒険者
その暗殺計画を実況しようとしてるしな(棒)
27:魔眼保持者
そんなわけで、魔眼保持者暗殺計画実況、近日公開!
スレ立てるから、絶対ROMってくれよな!(o´・ω-)b
28:名無しの冒険者
ノリがアニメの次回予告風なのやめいwww
■■■
そんなこんなで、校外授業当日。
校外授業は、ほかのクラスとも合同で行う事になっている。
一クラス二十人から三十人ほどが割り振られているので、総勢五十人前後の生徒たちが参加していることになる。
そんな彼らが、教師たちに連れてこられたのはとあるダンジョンだった。
洞窟で、地下に進んでいくタイプのダンジョンである。
現在、百階層まで攻略されておりまだまだ下があるらしい。
今回の授業では二十階層まで、班で攻略することになっていた。
一通りの説明を終えると、実技担当の教師が特別講師を紹介した。
その講師を見て、ユートは驚いた。
よく知った人物だったからだ。
「それでは、特別講師のヴィンセントさん、宜しくお願いします」
現代の生きる英雄。
邪神やら諸々を倒した、有名人でありとてつもない美女だ。
そして、コテハン名【底辺冒険者】の正体だったりする。
教師から紹介され、ヴィンセントは簡単な挨拶と、今日は監督としてここにいることを説明した。
説明の最中、一瞬だけヴィンセントはユートを見た。
そして、ニヤッと楽しそうな笑みを浮かべたのである。
しかし、それは本当に一瞬のことだった。
なんなら、ユートの前後左右にいた生徒たちが、自分と目があった、自分に笑いかけてくれた、とテンションをぶち上げていた。
「まぁ、色々説明したでござるが、なにか不測の事態が起きても安心めされよ。
必ず助けに行くでござるから」
その言葉を受けて、ユートは色々察してしまった。
ドラゴン襲撃事件が関係しているのだろう、と。
ユートはともかく、他の生徒の命は何がなんでも守らねばならない。
そのため、不測の事態が起きても対処できるように、英雄【ヴィンセント】を呼びつけたのだろう、と。
そして、おそらくヴィンセントはヴィンセントで、ユートの事を驚かせてやろうと考え何も言わずにいたのだろう。
ユートとヴィンセントは、プライベートでは顔を知っている。
なんならアルバイトとしてユートは、ヴィンセントにくっついてダンジョン攻略を手伝ったこともある。
しかし、その事を知っているのは当事者である二人のみだ。
そして、ヴィンセントはユートに負けず劣らずの愉快犯だったりする。
「おや、珍しい。君は貴族ではないでござるな?」
貴族に多い金髪碧眼でもなければ、優雅さの欠片も無いユートに、ニマニマと笑顔を浮かべつつヴィンセントが話しかけてきた。
一度に全員がダンジョンに入ると、トラブルが起きやすい。
そのため、順番を決めてダンジョンに入ることになっていた。
ユートの所属する班の順番はまだ先だ。
その待ち時間を利用して、ヴィンセントはユートに話しかけてきたのだ。
「えぇ、どっからどうみても、何処の馬の骨ともわからない一般人です」
高位の貴族の家出身の生徒が他にいるにも関わらず、それらを無視してユートは話しかけられた。
ヴィンセントは、自らが彼に話しかけること自体がユートを目の敵にしている生徒をさらに刺激することを理解していた。
そして、こうすることでユートがさらに実況を楽しむだろうことも、理解していた。
いわば、この声掛けはお膳立てなのである。
現に、ヴィンセントがユートに話しかけた途端、他の生徒達のざわめきが消え、シンと静かになった。
「そんな謙遜するには早すぎるでござるよ?
名門と名高い【王立魔法学園】の生徒でござろう?
さぞ優秀な生徒なのであろう?」
「あははは」
ユートは軽く笑うだけにしておいた。
しかし、ヴィンセントはこう続けた。
ユートが楽しくなるだろう言葉を投げた。
「それに、良い目をしてるでござるな。
よく見えるでござろう?」
「目を褒められたのは、初めてです。
ありがとうございます。
えぇ、視力だけはいいんですよ、俺」
他の生徒達、なんなら教師たちの視線もユートへ突き刺さる。
しかし、ユートは全く気にしていなかった。
彼が気にしているのは、今日の実況だけだ。
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