第12話心霊スポット(*・ω・*)wkwk 後編

コンビニの駐車場、その片隅。

街灯の下でフェン達は作戦会議を開いていた。


「でも、どうやって墓泥棒を探し出すんだ??」


議題はこれである

この疑問は、ククルから発せられた。


「まさか、【墓泥棒 アジト】で検索して出てくるわけじゃなし」


恐怖を紛らわせるため、そう言ったのはウリアだ。


「警察に行って聞く、とか?」


フェンもなにか考えがあったわけではない。

だからか、出てくるのはそんな常識的な案だ


「教えてくれるわけないよ」


力なく、ルルが返す。

全員から同時にため息が漏れた。

その時だ、ふと通りの方へルルが目をやると真っ黒なコートを着て意気揚々と、走っていくユートの姿が見えた。


「え??」


隣のフェンを手でパシパシ叩く。

同時に、ユートを指さした。

フェン、ククル、ウリアの3人がルルが指さした先を見た。


四人は顔を見合わせる。

幽霊かと思った人物がたしかに目の前を走っていく。


「追いかけるぞ」


その言葉に、四人が一斉に走り出す。


「ウチらを探してるのかな??」


「さてね」


走りつつ、そんな会話を交わす。

と、ユートが立ち止まった。

彼が足を止めたのは、シャッター街の中にある廃ビルの一つだ。

元々は商店街だったこの場所は、複合商業施設ができて以来、廃れていき、いまや誰も住んでいない。


ユートはキョロキョロと周囲を見回す。

四人が隠れている方を見て、一瞬だけ視線を止めた。

かと思ったら、すぐにフードを目深に被ってしまう。

顔が確認できない。

なにをするつもりだろう、と四人がユートの動向を観察していると、彼はまるで指揮者のように指を大きく滑らせた。

まるで、空気に絵を描くような動きだ。

すると、ユートが指でなぞった場所が淡く光る。

魔法陣が浮かび上がる。

しかし、その魔法陣はすぐに消えてしまった。

次の瞬間、ユートはジャンプした。

高く高く、ジャンプした。

そうして、ビルの屋上へと姿を消してしまう。


「幽霊じゃなくて、魔法使いだったんじゃん」


ウリアが呆然と呟く。


「というか、ルルが見たっていう光景のことも考えると、神官様だったりする??」


そんなことを口にしたのは、フェンだった。

神官の中には死者と言葉を交わし、その魂を救う者もいるという。

もしそうであるなら、ユートがあの場所で幽霊たちとなんらかの話をして、ここに来たということになる。


「でも、神官ってあんな風にアクロバティックなことするかな??」


ルルが言いつつ、廃ビルを見上げた時だった。

廃ビルの窓が吹っ飛んだ。

バラバラと、ガラス片が落ちてくる。

四人はシャッター街から逃げ出す。

そもそも住人がいないので、目撃者はこの四人だけだ。


「爆弾魔じゃん!!」


ウリアが叫んだ。


「とにかく、警察!!

通報だ!!」


フェンが携帯端末を取り出して、通報する。

その間に、廃ビルの割れた窓から人影が躍り出た。

フードを目深に被った、ユートだった。

そのフードの下のユートの目と、ルルの目が一瞬交差する。

背後では、フェン、ククル、ウリアが携帯端末に向かって叫んでいる。

ルルだけが、廃ビルから出てきたユートを見たのだ。

ユートは右手で何かを握りしめているように見えた。

危なげなく着地したかと思うと、ユートは夜の闇へと消えていった。


■■■


517:魔眼保持者

とりま、成功っと!


518:本当にあった怖い名無し

乙乙


519:本当にあった怖い名無し

お疲れ様、スレ主


520:魔眼保持者

特定班、情報提供さんきゅ

それはそうと、ちっとしくったかも


521:本当にあった怖い名無し


522:本当にあった怖い名無し

怪我でもしたか?


523:魔眼保持者

んー、いや、そういうわけじゃないんだ

とりあえず、指輪戻したら

もう一度書き込みにくる

なんか、この指輪変な感じがする

あんま長く持っていたくない


524:本当にあった怖い名無し

了解(*`・ω・)ゞ


525:本当にあった怖い名無し

いてらーノシ


526:本当にあった怖い名無し

てらー


527:特定班

とりま、つ【墓の場所の座標】

そんじゃ、墓の女性の正体について書いておくか


528:本当にあった怖い名無し

え、わかったん?


529:特定班

まぁな


530:本当にあった怖い名無し

さすが、特定班


531:考察厨兼迷探偵

それで、女性はどこの誰さんなん?


532:特定班

その前に、念の為に書いておくと

あくまで、これから書くことは【その可能性が高い】、ってだけだと考えてくれ、いいな?


女性の名前は、ジャネット

今から三百年前、捕虜としてこっちの国に連れてこられた、お隣メイカ国の貴族の娘の一人だ

まぁ、その貴族が庶民で遊んで産ませた娘とされている

でな、こっちだと無名だけど

お隣のメイカ国だと、伝説の英雄、奇跡の娘とされている

めちゃくちゃ有名な偉人だ


533:特定班

ジャネットは、神の声を聞くことが出来たと言われている

庶子であったことと、諸々の事情で産まれてすぐに神殿に預けられた

12歳の時に神の声を聞き、その声に従いとある戦況をひっくり返したと伝えられている

そこから、彼女は神託で国を救い続けた英雄となった

事実として、そこからメイカ国の大反撃にあい、ウィスティリア側は戦線を後退することとなる

そして、16歳の時に彼女はウィスティリアの兵に捕らえられこちらに連れてこられ、メイカ国の記録だとウィスティリアによって斬首されたとなっている

でも、ウィスティリア側の記録だと二十歳まで生き、その後病死したとされている


どちらが正しいのかわからない

もしかしたら、どちらも間違っているのかもしれない

ただ、どちらの記録にも彼女が最後にいた場所が【ティリンドム城】だと記されていた


で、指輪なんだが

その指輪は、彼女が神が天使を経由して与えられたとされている

つまり、神様からの婚約指輪だったわけだ


534:本当にあった怖い名無し

天使?


535:本当にあった怖い名無し

神様??


536:特定班

とにかく、とても神聖なもので

彼女にとって大切なものだったのは間違いない

ちなみに、ウィスティリア側の記録には指輪のことは書かれていない

少なくとも捕虜として連れてこられたにも関わらず、ずっと彼女の手の中にあったってことだろうな

なにしろ、一緒に埋葬されてるんだし


537:考察厨兼迷探偵

まぁ、普通に考えるなら

何かしらの魔道具だったってことだろうな

それこそ、当時の最新兵器かなにかだったのかも


538:本当にあった怖い名無し

魔眼保持者が魔眼で見てみればわかんじゃね?


539:魔眼保持者

>>538

悪いが、ガチで嫌な感じしたからそのまま棺桶に戻した

今、魔法で棺桶も埋めた

えっと、ジャネットさん?にはめちゃくちゃ感謝された


540:本当にあった怖い名無し

なんだ、残念


541:本当にあった怖い名無し

呪われた品だったんじゃね?


542:本当にあった怖い名無し

真相は墓の下、ってか


543:魔眼保持者

ジャネットさんが、お礼にってことで

この墓地の、さらに奥にある、桜の木

そこを掘ってみろって言われたんだが


544:本当にあった怖い名無し

おっとー?


545:本当にあった怖い名無し

これは、もしかしてもしかする??


546:魔眼保持者

とりませっかくだし、行って掘ってみるか

今、歩いて向かってる


547:本当にあった怖い名無し

(((o(*゜▽゜*)o)))


548:本当にあった怖い名無し

なにが埋まってるんだろうな?


549:本当にあった怖い名無し

>>548

そりゃ、お前、このパターンはテンプレだろ


550:魔眼保持者

ここか?

お、おおお??


551:本当にあった怖い名無し

どした?!


552:本当にあった怖い名無し

掘ったんか??


553:本当にあった怖い名無し

なにが埋まってたんだ、スレ主!!


  バン   はよ

バン (∩`・ω・) バン はよ

  / ミつ/ ̄ ̄ ̄/

  ̄ ̄\/___/



554:魔眼保持者

つ【魔法の灯りに照らされて輝く、壺に入れられた金貨や装飾品の数々】


555:本当にあった怖い名無し

゜+。:.゜おぉ(*゜O゜ *)ぉぉ゜.:。+゜


556:本当にあった怖い名無し

埋蔵金だ!!


557:本当にあった怖い名無し

スレ主!!

できる範囲内でいいから、鑑定しろ!!

あるだけ持って帰れ!!


558:底辺冒険者

あちゃー、本当にあったでござるか


559:本当にあった怖い名無し

どうした、底辺冒険者


560:底辺冒険者

皆、忘れてるでござるか?

そこ、ダンジョンじゃないでござるよ??


■■■


底辺冒険者の書き込みに、スレ内に、【あっ…(察し)】という空気が流れた。

ユートは意味がわからず、素直にどういうことなのか書き込んで聞いてみた。


■■■


584:底辺冒険者

早い話が、ダンジョン以外で見つかったこういう宝物は、発見者のものにならないんでござるよ

それは、冒険者ギルドに持っていっても同じでござる

細かく言うと長くなるんで端折っての説明になってしまうのは許して欲しいでござる


585:魔眼保持者

えーと、つまりそういう決まりがある、と?


586:底辺冒険者

そういうことでござる

ダンジョン以外で見つかった、こういう埋蔵金はまず警察に届けることになってるでござる

そこから持ち主探しが始まって、持ち主がわかればそちらに返却することになってるでござる

見つからなくても、歴史的価値があると判断されれば埋まっていた土地の博物館行きになっているでござる


587:本当にあった怖い名無し

せいぜい、見つけたお手柄として新聞の片隅に載るくらいだなぁ


588:魔眼保持者

えー、それは困るなぁ

んー、どうしたもんか……

あ、そうだ


589:本当にあった怖い名無し

なに?


590:本当にあった怖い名無し

なんか妙案でも浮かんだんか?


591:魔眼保持者

妙案、うん

妙案かも

実はさ、地元の子達、あの四人組に墓泥棒襲撃の時に顔見られたっぽいんだ


592:本当にあった怖い名無し

マジかよww


593:魔眼保持者

たぶん、警察に言うよなぁ、俺のこと


594:特定班

もう言ってるっぽいぞ

ただ、警察も話半分にしか聞いてない感じだな

墓泥棒達を懲らしめる時に使った魔法が単独で出来るものじゃないから

墓泥棒達を襲撃したのは複数人だったってことになりつつある


595:本当にあった怖い名無し

怖いよー

特定班が怖いよー(´;д;`)


596:魔眼保持者

>>594

あ、じゃあ、大丈夫かな?

埋蔵金見つけたの、その子たちってことにしたいんだけど


597:本当にあった怖い名無し

えー、またぁ??


598:魔眼保持者

というわけで、また力貸してくれないか?

底辺冒険者??


599:底辺冒険者

もう、仕方ないでござるなぁ

魔眼保持者氏はwww


■■■


さらに数日後。

その日、フェン達は校内放送で呼び出された。

また警察だろうか、と思っていたらどうやら違うようだった。

数日前、たまたま墓泥棒が隠れ家にしていた廃ビルの爆破を目撃してから、彼ら四人はちょくちょく警察に呼び出されていた。

ちなみに、心配していた怪奇現象は全くといって起こらなかったので、きっと犯人が捕まって幽霊も安心したのだろうという結論に達していた。

さて、言われるがまま、四人が通っている学校の応接室に向かう。

応接室の前には校長が立っていて、なにやら緊張しているようだ。

中に入る。

そこには、冒険者の女性が一人、ソファに座って待っていた。

短い赤い髪に、同系色の瞳。

出るとこは出て、引っ込んでいるところはキュッと引っ込んでいる、美女であった。

その顔を、四人は知っていた。


「さ、三大英雄がひとり、ヴィンセント?!?!」


そう叫んだのは、フェンだった。

女性はとても有名人なのであった。

三大英雄とは、現代の生きる英雄である。

現代に甦った魔神やら邪神やらを倒した、彼ら一介の学生からするとまさに雲の上の存在である。


「おや、驚かせてしまってすまないでござる」


見た目に似合わない言葉使いで、ヴィンセントが言う。

とにかく、対面に四人を座らせると彼女は本題に入った。


「君たちは、よく【ティリンドム城跡地】に遊びに行っているそうでござるな?」


この確認に、四人の顔が強ばった。

しかし、そんなことはお構い無しにヴィンセントは続ける。


「実は、ちと野暮用が出来て案内を頼みたいんでござるよ」


わざわざ学校を通してまで、彼らに頼み事をしてくる。

そのことに違和感を覚えなかったわけではないが、それ以上にヴィンセントと過ごせる、ということで彼らの頭はいっぱいになった。


「もしかしたら、面白いものが見つかるかもしれぬでござるよ?

どうだろう、頼まれてみてはくれないでござるか?

もちろん、謝礼は払うでござるから」


ヴィンセントがダメ押しとばかりにそう言ってきた。

四人がこの頼みを拒否する理由はなかった。


学校側の許可は、すでにヴィンセントが取り付けていた。

そのため四人は、すぐにヴィンセントを案内することが出来た。

そうしてやってきた、【ティリンドム城跡地】。

四人からすると数日ぶりだ。


「さて、と」


ヴィンセントはキョロキョロと周囲を見回したかと思うと、こう質問してきた。


「この辺に桜の木が生えてるところはあるでござるか?」


「桜の木?」


フェンが首を傾げ、


「あ、たしかもう少し奥にあった気が」


ククルがそちらを指し示す。

ウリアも、そちらを見た。

ただ、ルルだけが顔を真っ青にしている。

この先で、あの日出会った少年は、たしかに青白い火の玉に囲まれていたのだから。

そんな、ルルの様子にヴィンセントは気づいて優しく声をかけた。


「大丈夫、なにがあっても守るでござるから」


その言葉に、ルルも安心したらしい。

フェン達が歩きだし、それに続いた。


「あそこです」


フェンが指さした先には緑の葉が風に揺れる、桜の木があった。

ヴィンセントが桜に近づく。

そして、くるりと四人を振り返るとニヤリと笑った。

かと思うと、指をパチンと鳴らしてどこからともなくシャベルを出現させると、こういった。


「それでは、少年少女達、もう少し手伝ってもらうでござるよ」


シャベルは全部で五つあった。



***


翌日。

王立魔法学園敷地内にある、男子寮の食堂で、ユートは朝食をとっていた。

食堂には、テレビが設置されていてニュースが流れている。

なんでも、とある古城近くで埋蔵金が見つかったらしい。

見つけたのは、現代の英雄のひとり【ヴィンセント】と、ヴィンセントに協力を依頼された、地元の高校生達だった。

アナウンサーが興奮気味にそのニュースを伝え、高校生達が取材に答える映像が映し出されていた。

ユートは、そのニュースを見届けると欠伸を一つして、席を立った。

脇に置いた鞄も忘れずに持つと、厨房内に声をかける。


「ご馳走様でしたー」


それから食堂を出て、そのまま教室へ向かうのだった。

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