第11話心霊スポット(*・ω・*)wkwk 中編
■■■
ずっと、シクシクと泣いている女性へ、ユートは聞き取りを行う。
それらをメモアプリを使ってメモする。
ついでとばかりに、女性自身について聞いてみたが、これには泣くばかりで答えては貰えなかった。
「それでは、ちょっと待っててください。
こういうのに詳しい人達と相談するんで」
ユートは、メモをそのままコピペして掲示板へと貼り付けた。
その時だった。
「ヒェッ!?」
青白い火の玉が飛び交い、古い時代のドレスを着た、いかにもな格好をしてすすり泣く女性。
そんな中で、なにやら真剣に話を聞いているユートの姿を見て驚きで尻もちをつき、思わず叫んだ者がいた。
ルルである。
その叫び声で、青白い火の玉や女性は消えてしまった。
くるり、とユートがルルを振り返る。
そんなユートですら、ルルには恐怖の対象にしか見えなかった。
それこそお化けと受け取られたらしく、色々察してしまったユートが説明しようとルルに近づく。
しかし、ルルは恐怖でパニックになった。
つまり、悲鳴をあげて泣きながら走り去ったのだった。
「あ、ちょ」
呼び止めようとしたが、すぐに考え直した。
下手に事情を説明するのも面倒だし、まぁいっか、と考えたのである。
あの様子からして、バス停まで走って行きそうだ。
アトラクションの城の営業時間は夜八時まで。
バスの最終便は夜九時である。
現在七時半なので、余裕で間に合う。
おそらく、残りの三人と一緒に逃げ帰るだろうとユートは予想した。
ユートには転移魔法があるので、もしバスに間に合わなくても最悪それで転移すればいいやと考えていた。
しかし、せっかくの旅行なのだ。
ユートとしては帰りのバスで、今日一日の観光の余韻に浸りたいとも考えていたが、事情が変わったのでそこは気にしないことにした。
ほどなくして、あの四人の悲鳴が聴こえてきた。
そして、遠ざかっていくのがわかった。
そうこうしているうちに、掲示板の方でもスレ民たちの書き込みが進んでいた。
■■■
226:魔眼保持者
ちょっと流れをぶった斬る
227:本当にあった怖い名無し
お?
228:本当にあった怖い名無し
どした?
229:本当にあった怖い名無し
(*´・ω・)(・ω・`*)ん?
230:魔眼保持者
いや、実は幽霊の女性と話してるところを、肝試しにきてた一人に見られた
で、たぶん俺も幽霊扱いされたwww
231:本当にあった怖い名無し
ちょwww
なにやってるんwww
232:魔眼保持者
いやぁwww話きいてメモとるのに集中しててwww
うっかりしてた(/∀≦\)てへっ♪♪
233:底辺冒険者
ほんと、うっかりさんでござるなぁwww
234:本当にあった怖い名無し
なんか、明日には彷徨い歩く少年の幽霊の噂が流れそうだな
235:本当にあった怖い名無し
>>234
それな( ´-ω-)σ
236:考察厨兼迷探偵
とりま、その女性の話をまとめるとだ
昨日の深夜に墓を掘り起こされ、埋葬されてた物を盗まれた
取り返したいけれど、女性はお墓から動くことは出来ない
だから途方にくれ、泣いていた
こういうことか
237:魔眼保持者
掘り起こされた痕っぽい穴もある
だから、墓泥棒が来たってのはその通りだと思う
よくよくみたら、棺桶もあったし
たぶん、この女性のだと思う
蓋はちょびっと開いてたからさすがに閉めた
238:本当にあった怖い名無し
穴も元に戻しておけば良かったのにな、犯人
239:考察厨兼迷探偵
盗むだけ盗んでトンズラしたんだろ
240:本当にあった怖い名無し
あれ?
底辺冒険者が、墓泥棒がどうとか言ってなかったっけ??
ここが犯行現場なら警察が来て、立ち入り禁止のテープ張ってそうだけど
あと見張りもいそうだけど、いなかったん??
241:底辺冒険者
>>240
それが、新聞やネットニュースを確認したところ
どうやら、別の場所で墓荒らし、墓泥棒が出たという記事でござった
242:本当にあった怖い名無し
犯行はいつだったん??
243:底辺冒険者
記事によると
・犯行は一昨日の深夜から翌日未明にかけて
・場所は、ティリンドム城からほど近い墓地
・地元民の先祖代々の墓があるところ
・荒らされたのは、地元の名士の墓
とくに一番立派な墓だったらしいでござる
そこから埋葬品が盗まれていたと書かれているでござるな
墓が荒らされていることに気づいたのは、その墓地を管理してる神殿の見習い神官が朝の見回りに来た時とのこと
見回りは当番制で、毎日決められた時間に必ず行っていて
そこから推察するに犯行は深夜から未明だろうって見解になったらしいでござる
244:本当にあった怖い名無し
ふむ
245:本当にあった怖い名無し
なるほど
246:底辺冒険者
別の記事では、ここ最近そういった墓荒らしが頻発しているとも書かれているでござるな
墓荒らし専門の窃盗団かもしれないとも書かれているでござる
247:考察厨兼迷探偵
あ、あー、なるほど
窃盗団、なるほどなるほど
248:本当にあった怖い名無し
なにがなるほど??
249:考察厨兼迷探偵
いやさ、同じ日に墓荒らしなんてある意味特殊な泥棒が、こんな近所に出るなんておかしいなぁって思ってさ
しかも、同時刻っぽいし
でも、窃盗団って聞いて腑に落ちたなって
250:本当にあった怖い名無し
どゆこと??
251:考察厨下兼迷探偵
同時多発的に墓を荒らしが起こったってことは、偶然じゃなく、計画的って考えられるだろ?
んで、窃盗団が関与してるってことはそれなりの構成員がいるってことだ
人数使って、効率的に盗みを働いたってことだな
252:考察厨兼迷探偵
ちなみに、墓荒らしの正式な罪名って【墳墓発掘罪】って言うらしい
墓石壊したり、墓を許可なく掘り起こしたりしたらこの罪になる
で、今回みたいに棺桶の中に納められてる物品を盗んだり、遺体を傷つけたりすると【墳墓発掘死体損壊等罪】になるらしい
253:本当にあった怖い名無し
へぇ
254:本当にあった怖い名無し
なるほど
255:本当にあった怖い名無し
しかし、なんつーかおぞましい犯罪だな
よーやるわ
256:本当にあった怖い名無し
まさに死体蹴りってやつだよなぁ
257:本当にあった怖い名無し
ちなみに、その女性はなにを盗まれたんだ??
258:魔眼保持者
指輪だってさ
婚約指輪
259:本当にあった怖い名無し
婚約、っつー事は正式に結婚する前に亡くなったのか、その人
260:本当にあった怖い名無し
でもさ、犯行から丸一日経過してるわけだから
もうどっかに売り飛ばされてるんじゃねーの?
261:本当にあった怖い名無し
んー、どうだろ?
墓荒らしが頻発してたってことは、そういった売買にも警察は目を光らせてそうだから
すぐには売らずに、様子見するんじゃないかな?
だって、今回盗まれたのは年代物なわけでしょ?
それを、相応の値段で買い取ってもらうってなると骨董品店か、遺跡調査のクエストを出してる冒険者ギルドになるし
裏ルートがあったとしても、すぐに売っちゃえば情報ギルドにそういった物品の情報が流れてくるだろうし
262:本当にあった怖い名無し
特定班がいてくれたら、話が早いんだけどなぁ
263:特定班
|・ω・`)コッショリ
264:特定班
呼んだかな??
■■■
ユートとスレ民が、墓泥棒達の転売に関して盛り上がっている時。
ユートと女性、そして青白い火の玉という心霊スポットのフルコンボを目撃したルルと、そんな彼女のパニック具合いに流され、逃げるように跡地を去った残りの三人は、真っ青な顔でバスに揺られていた。
「まさか、本当に出るなんて」
そう呟いたのは、ウリアだ。
ルルが嘘をつくような人物でないことを、よく知っている。
だからこそ、ウリアはルルが見たという光景を信じた。
「ユートさんって、やっぱりあの辺で自殺した人だったのかな??」
歴史上陰惨な事が起こった場所だからか、あの跡地から少し離れた場所は、自殺の名所として地元では有名だった。
「数年前、生活苦で無理心中した一家の長男が、たしかあれくらいの年齢だったはず」
ルルの言葉を受けて、ククルがそんなことを口にした。
しかし、フェンだけはどうにも腑に落ちない様子だ。
「仮に幽霊だとして、なんで今更出てきたんだ??」
フェンの言葉に、ほかの3人が怪訝そうに首を傾げる。
「ほら、俺たちは何度もあそこに遊びに行ってるだろ?
でも、今まで幽霊なんて遭遇したことなかった。
なんで、今回に限って遭遇したんだ??」
「ルルが見たって青白い火の玉も、今まで見たこと無かったよな」
そう確認するように呟いたのは、ククルだ。
「なにかしら幽霊を怒らせるような事を、ウチらがした、とか?」
ホラー作品あるあるだ。
心霊スポットに行って、なにかしら良くない行いをしたために幽霊に祟られたり、呪われたりするアレである。
「うーん、とくに悪さはしてないけどな。
墓石を倒したり、壊したり、なんかそれっぽい物を持ち帰ったりもしてないし」
フェンはガシガシと頭をかいた。
「とりま、一度帰ろう。
んで、家でなんか変なこと起きたら連絡取り合うことにしよう」
これまた、ホラー作品あるあるだ。
なにかしら心霊スポットでやらかしたら、家で怪奇現象が起こるものだ。
もし、家で怪奇現象が起きたなら、彼らがあの場所で自覚なしに
逆を言うなら、何もしていなければ、怪奇現象は起きないわけだ。
「それしか、無いよね」
現状として、彼らに怪奇現象は起きていない。
ルルが飛ぶ青白い火の玉と、それに囲まれなにやらぶつくさ言っているユートを見て、ビビって逃げ出しただけだ。
ユートが幽霊である、という前提で話しているので怪奇現象に見舞われていると錯覚しているに過ぎないのである。
四人に、沈黙が落ちた。
その空気に耐えきれず、ウリアが携帯端末を取り出す。
なにか、明るくなる話題でもSNSで探そうと思ったのだ。
話題でなくても、なにかこう、心が軽くなる画像でも出てくればいいと考えた。
そう、たとえば子猫とか子犬とかそういう画像だ。
それを探そうとしたのだが、とある記事が飛び込んできた。
「ねぇ、ねぇ!」
ウリアは三人へ声をかける。
ズイッとその中心で携帯端末の画像を突きつけた。
「これ、コレ見て!!」
それは、この四人は知る由もないことだが、【底辺冒険者】が目を通し、掲示板へと書き込んだ記事と同じものだった。
墓荒らしについての記事である。
「もしかして、ウチらこの泥棒と間違われたんじゃ」
ホラー作品では、幽霊が祟りを起こす相手を間違えることは全くと言っていいほど無い。
話が進まないとか、大人の事情からだ。
しかし、この4人は想定外のことが起こりパニックになっている。
パニックになると、人はどうなるか?
判断力が鈍るのである。
「冗談じゃないぞ、犯罪者と間違われて呪い殺されるなんて真っ平だ!」
ククルが言った。
怒りすら滲んでいる。
完全なる巻き込まれ事故で、幽霊に呪われ祟られたと思い込んでいるので、仕方ないと言えば仕方ないのだが。
「捕まえよう」
フェンがぽそりと言った。
「え?」
ルルが聞き返す。
「俺たちの手で墓泥棒を捕まえるんだ。
それで、盗まれたものが返ってきたら呪いや祟、怪奇現象は無くなるだろ」
「ええ?!
危ないよ、やめようよ」
ルルが止めに入る。
「でもこのままだと、死ぬのを待つしかないだろ。
事故死か病死か、はたまた狂ったようになって死ぬか。
いずれにしろ、俺はまだ死にたくない」
フェンの言葉に、残りの三人も目配せする。
そして、力強く頷いた。
「わ、わたしもまだ死にたくない!」
「ウチだって!」
「俺も嫌だなぁ。
せめて、夏休みまでに彼女ほしいし」
意見は一致した。
となれば、行動あるのみである。
一方その頃、スレはと言うと。
■■■
319:本当にあった怖い名無し
特定班おると
やっぱり特定早いなあ
320:本当にあった怖い名無し
普通、捜査の進捗とかわからないはずなんだけどなぁ
321:本当にあった怖い名無し
もはや、特定班が犯罪者な件
322:特定班
ひでぇなぁ
323:考察厨兼迷探偵
とりま、あの女性の墓についてはまだ警察には知られていない
だから、盗まれたっていう指輪だけ取り戻して女性に返して
あとは元通り埋葬し直しておくのが無難だろ
324:本当にあった怖い名無し
えー、どうせだし
魔眼保持者の魔眼使って、窃盗団懲らしめてやろうぜ
325:本当にあった怖い名無し
たのしそうだな
やろうやろう!
(p*`・ω・´*)q
326:本当にあった怖い名無し
捜査の進捗もだけど、その情報と独自の情報網から
窃盗団のアジト候補を絞りだすのも、普通なら出来ないはずなんだけどなぁ
327:本当にあった怖い名無し
しかも、アジトもこの短時間で特定しちゃったし
328:本当にあった怖い名無し
で??で??
どうやって処す?
(((o(*゜▽゜*)o)))
329:本当にあった怖い名無し
やってることが、集団リンチのそれなんだよなぁ
実行するのが魔眼保持者ってだけで
330:魔眼保持者
つーか、まさにこれって
【英雄さん】っぽい行いじゃね?
331:本当にあった怖い名無し
あー、義賊的な感じ?
■■■
こんな感じで盛り上がっていたのだった。
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