第9話心霊スポット(*・ω・*)wkwk 【安価】有名な心霊スポット教えてちょ【なう】

「心霊スポット??」


掲示板の最後に書き込まれたその文字を読んで、ユートは首を傾げた。

心霊スポットは知っている。

そういう場所に凸する実況者は多い。

リクエストされてだったり、単純にそういう場所巡りが好きだったりと、理由は人それぞれだからだ。

ユートはまだ、そういった場所に凸して、実況をしたことは無かった。

冒険者スレを使っての実況だから、やはり冒険者向けのところがいいだろうと考えたためだ。

スレ違いになるのも、少しだけ気にしていた。

オカ板もしくはホラー板と呼ばれる掲示板で実況したほうが良いだろうか?

でも、そうなると【魔眼保持者】というコテハンを使うか否かという悩みが出てくる。

しかし、それは後回しだ。

まずは、次の凸する場所だ。

そこを決めてから、どの板にスレを立てるか決めればいい。


■■■



【安価】有名な心霊スポット教えてちょ【なう】



1:魔眼保持者

前スレ終わったから、新しく建てに来た


2:名無しの冒険者


3:名無しの冒険者

スレ立て乙


4:名無しの冒険者

スレタイ見る限り、次の凸場所決まってんじゃん

わざわざ安価する必要あるか?


5:魔眼保持者

俺、心霊スポット知らねーもん


6:名無しの冒険者

>>5

ggrks


7:名無しの冒険者

魔眼保持者をks呼ばわり

怖いもの知らずだよなー(棒)


8:名無しの冒険者

>>5

怖い話とか読んだりしないの?


9:魔眼保持者

んー、そういや読まないかなぁ


10:名無しの冒険者

オカルト板とかは?

魔眼保持者が、実況しようと思ったきっかけって言ってなかったっけ?


11:魔眼保持者

まぁ、今でも定期的に目は通してはいるけど

だからって、心霊スポットを自分で調べたりはしてないなぁ


12:底辺冒険者

それなら、なんで次の凸先は心霊スポットにしようと考えたでござるか??


13:魔眼保持者

>>12

前スレの最後で、考察厨兼迷探偵が書き込んでたから


14:名無しの冒険者

あ、なるほど


15:底辺冒険者

なるほど


16:考察厨兼迷探偵

そんな、安価しなくても教えてやるよ

つーか、魔眼保持者さえ良ければ行って欲しいところがある


17:底辺冒険者

おや、珍しいでござるな

考察厨兼迷探偵氏がわざわざ、場所を指定するなど


18:考察厨兼迷探偵

いや、前から気になってたことがあってな


19:名無しの冒険者

気になってたこと?


20:底辺冒険者

なんでござるか?


21:名無しの冒険者

(*´・ω・)(・ω・`*)??


22:考察厨兼迷探偵

え、お前らは気にならねぇ?


23:名無しの冒険者

だから何が??


24:考察厨兼迷探偵

魔眼保持者、つーか、魔眼って幽霊も見えんのか

昔からすげぇ気になっててさ


25:名無しの冒険者

幽霊?


26:名無しの冒険者

お化け??


27:名無しの冒険者

たしかに、気になるかも


28:名無しの冒険者

魔眼保持者ー、幽霊って見えたりするの??


29:魔眼保持者

んー、訓練施設時代に戦場跡地とかで実践訓練したけど

そういうのは見なかったなぁ

あ、でも


30:名無しの冒険者

でも?


31:魔眼保持者

戦場跡地もそうなんだけど

そういう血をいっぱい吸ってる場所や

街中で、よく交通事故が起こる場所とかな?

なんかこう、モヤッと暗く見える


32:名無しの冒険者

あ、やっぱりちょっと違って見えるのね


33:考察厨兼迷探偵

φ(゜Д゜ )フムフム…


34:魔眼保持者

たまに、かなり古い時代の傭兵や騎士のコスプレした人とかが戦場跡地を彷徨ってるの見かけたりはしたけど

あ、あと途方に暮れた半透明な人とかも、事故直後の現場でよく見るかな


35:名無しの冒険者

それ幽霊ー!!


36:名無しの冒険者

あきらかなゴーストだな


37:名無しの冒険者

魔眼って幽霊見えんのか


38:名無しの冒険者

魔眼って、霊感機能も備わってんのな


39:魔眼保持者

え、アレって幽霊だったの?!


40:底辺冒険者

気づいてなかったでござるか

( ̄▽ ̄;)


■■■


「じゃ、もしかして、あの時の半透明のあの人も?

研究所にいた首が背中の方にぐりんって折れ曲がってた、あのお姉さんも??」


普通に見えてたから、全く気づかなかった。


「いや、ちょっと変だなぁとは思ってたけど」


それでも、生きている人間との区別がユートには出来ていなかったのである。

そう、ちょっと変だなぁ、程度で終わらせるくらいには気づいていなかった。

恐る恐る、ユートは教室の天上を見た。

そこには太い縄を首にかけ宙吊りで、ユラユラ、キシキシと揺れるこの学園の生徒の姿があった。

どこからどう見ても、首吊りしている生徒である。


「まさか、君も幽霊なのか?!」


宙吊り生徒が、今更かよという顔をしてユートを見た。

そして、ヤレヤレといった声で、


『そうだよ』


肯定された。

そして、


『侯爵のとこの長男にイジメ抜かれてね、それで』


なにか身の上話が始まった。

しかし、それを親身になって聞くユートではない。

彼はすぐさま携帯端末を天井に向けると、パシャリと一枚画像をとった。

画像の中には、ちゃんと首吊りしている生徒が映っている。


『ちょっと、勝手にネットに載せないでよ。

マナーがなっていない後輩だな』


「え、ダメ?」


『ダメ。

ネットリテラシーとか、ちゃんと学びなよ』


「でも、君は幽霊じゃん。お化けじゃん。

見えない人からしたら、これはただの天井の画像だ。

見える人からすれば、心霊写真でしかないじゃん」


『幽霊でも、肖像権はあると思うんだ。

僕と君は、意思疎通が出来ているんだから、君は僕の意思を尊重すべきだ』


「死んだ人にも人権って発生すんの??」


『……君は、死体蹴り、という言葉くらい知っててもいいんじゃないかな?

とにかく、画像をって!!

載せるな!!』


首吊り生徒を無視して、ユートは掲示板へ画像を貼り付けた。

その事に怒りをあらわし、首吊り生徒は教室の机や椅子を浮かび上がらせる。


ポルターガイストであった。


「おおっ!!」


一方ユートは、そんなポルターガイスト現象に興味津々で魔眼を使い、解析を始める。

そんなユートに、首吊り生徒は浮かせた机やテーブルをぶつけてくる。

窓ガラスが割れても事なので、ユートはそれらを片手で難なく受け止め、破損しないようにつとめる。

と、そこへたまたま他の教室の生徒が通りかかり、悲鳴を上げた。


完全に心霊現象だったがらだ。

実は、一部の生徒にはユートが所属しているこの教室はと有名だったのだ。

そして、この不運にも通りかかった生徒はその一部に当たる生徒であった。

しかし、そんな事情を知らないユートは悲鳴を聞いて動揺した。

悲鳴を上げた生徒は、どこかへ駆けていく。

魔眼を見られたと思ったのだ。

実際はそんなことはなかった。

しかし、それがいけなかった。

その一瞬の油断により、ユートは側頭部に椅子を思い切り叩きつけられてしまう。

それで、首吊り生徒は満足したのか他の机や椅子がバタバタと派手な音を立てて、床に落ちた。


「あー、クッソ痛ぇ」


ユートは椅子をぶつけられた所を魔法で治癒しつつ、教室を見回した。


「うっそだろ、おい」


教室は、落ちた机と椅子でめちゃくちゃだった。

まだ器物破損が無いだけマシである。

しかし、どこからどうみてもこれはユートが癇癪を起こして暴れた図にしか見えなかった。

これを放置して帰っても、良いことは欠片もない。

泣く泣く、ユートは机と椅子を元の位置に戻した。


「置き勉禁止で良かった」


机の中は全て空っぽだ。

なので、多少適当に片付けても誰も気にしないだろう。

机が入れ替わったことに気づく生徒はいるだろうが、一々それを指摘するような細かいタイプは、クラスメイトにはいなかったはずだ。


■■■


101:名無しの冒険者

もう何なんだよぉ

(´;ω;`)


102:名無しの冒険者

魔眼保持者の貼り付けた画像開いたら

心霊現象のオンパレード始まったもんなぁ


103:名無しの冒険者

魔眼保持者からは、なんの説明も無いしよぉ


104:名無しの冒険者

部屋のドアから猫の爪とぎみたいな音がしてる

ずっとしてる

うち、猫飼ってないのに(´TωT`)


105:名無しの冒険者

>>104

こっちなんて、部屋の窓に子供の手形があるんだけど

これ見てくれよ:(;゛゜'ω゜'):

つ【ベタベタと所狭しに子供の手形の跡がついた、窓の画像】


106:底辺冒険者

典型的な心霊現象でござるな


107:特定班

オカ板だと日常茶飯事なやつ


108:名無しの冒険者

オカ板のスレ民こんなのが日常茶飯事なのかよ

(´;ω;`)


109:名無しの冒険者

オカ板の連中は、頭のネジ全部外れてるような奴らばっかりだからなぁ

アタオカな奴らしかいないぞ

ある意味、下手な化け物より化け物っぽいし


110:魔眼保持者

魔眼保持者以外にも、世界には化け物たくさんおる件


111:名無しの冒険者

あ、スレ主!


112:名無しの冒険者

スレ主~、なんなんだよあの画像ぉ(´;ω;`)


113:魔眼保持者

いや、俺幽霊見えてたんだなって思って

ずっと気になってた、教室の天井からぶら下がってる子のこと撮影して貼ってみたんだ


114:名無しの冒険者

え、天井から、ぶら下がって??

え??


115:魔眼保持者

なんか、どっかの貴族に虐められて自殺した子らしい

俺の先輩にあたるっぽい

そう言ってた


116:名無しの冒険者

はい?


117:名無しの冒険者

言ってた??


118:底辺冒険者

魔眼保持者氏は幽霊と意思の疎通が出来るでござるか??


119:魔眼保持者

首吊り先輩、だとちょっと不謹慎か

先輩表記する

先輩とは話せるかな

さっき怒らせて、椅子ぶつけられた


120:名無しの冒険者

え、先輩幽霊だよね?

物理攻撃?


121:魔眼保持者

机とセットで、浮かばせてぶつけて来た


122:名無しの冒険者

それ、ポルターガイスト現象ぉぉおおお!!!!

(´;д;`)


123:魔眼保持者

>>122

>それ、ポルターガイスト現象


言われてみれば、たしかに



124:考察厨兼迷探偵

お、戻ったか


125:考察厨兼迷探偵

それじゃ、行って欲しい場所書き込むぞ



■■■


流石にいつまでも、教室にいる訳にも行かないので、ユートは廊下に出た。


「ティリンドム城??」


歩きつつ、掲示板を確認する。

考察厨兼迷探偵が書き込んだ城の名前を口にする。

聞いたことがある名前だった。

研究施設時代、そして訓練施設時代、さらに学園入学前に学習した中にその名前があった。


「……たしか、三百年くらい前の城だったっけ?」


ユートは携帯端末を操作して、城の名前で検索をかけた。

すぐに説明が表示される。

【ティリンドム城】はウィスティリア国と隣国メイカ国の国境近くに建っている城である。

現代では同盟関係にあるものの、この二つの国は長い間争っていた。

三百年前と言えば、戦国乱世でこの両国は泥沼状態だった。

この城はそんな時代の、最前線基地の一つであった。

城内では、敵国の捕虜に拷問する専用の部屋があり、そこで殺された者は女子供も含めて千人にのぼるという。

所謂、いわく付きの城というやつだ。

さてそんな【ティリンドム城】は、現在ウィスティリアにおいて心霊スポット知名度一位として知られている。

拷問で殺された者達の幽霊が出る、ということで連日観光客が押し寄せているらしい。

そう、観光資源として有効活用されているのだ。

掲示板に戻ると、全く同じ説明を考察厨兼迷探偵が書き込んでいた。

考察厨兼迷探偵は、魔眼保持者ことユートにそこに行って実況してほしいらしい。


■■■


198:考察厨兼迷探偵

まぁ、今の観光地になってる城は立て直されたやつなんだけどな

本来あった場所からも移動してるし


199:名無しの冒険者

そうなの?


200:特定班

>>199

今から五十年前にドラゴンが堕ちてきて潰れたんだよ

で、直そうってことになって、その時に地盤が心もとないってことがわかって今の場所に移ったんだ


201:名無しの冒険者

へぇ


202:考察厨兼迷探偵

今の城は、ぶっちゃけそういうアトラクションだからなぁ


203:名無しの冒険者

え、じゃあ、今の城で起こってる心霊現象って仕掛け??


204:考察厨兼迷探偵

(。_。(゜д゜(。_。(゜д゜ )ンダンダ


205:特定班

公式ホームページにも書いてあるぞ


206:名無しの冒険者

あ、ほんとだ


207:名無しの冒険者

マジだ


208:名無しの冒険者

かつての城で起きていた怪奇現象を再現しています、か

( ̄▽ ̄;)


209:名無しの冒険者

なんだかなぁ


210:考察厨兼迷探偵

魔眼保持者に行ってほしいのは、本物の城があった跡地の方


211:特定班

オカ板でも実況する奴が多い心霊スポットだな


212:名無しの冒険者

俺、オカ板出入りしてるけどさ

あそこ、ガチでヤバいぞ

マジで実況させるの?


213:魔眼保持者

なんか楽しそうだから、今から行ってみるわ!


214:名無しの冒険者

今からって


215:名無しの冒険者

>>213

お前、学校は??


216:魔眼保持者

昨日の【死の谷デス・バレー】の一件で、生徒会長含めて授業に出られないやつが結構いてさ

今日から三日間臨時休校になった


217:名無しの冒険者

(*´罒`*)いー(*´□`*)なー


218:特定班

明らかに、学園にいる生徒の方が人数多いんだけどな

まぁ、お察しってやつかな


219:名無しの冒険者

あと、アレだろ、こういうトラブルが起きると保護者への説明会もしないとだから

それもあっての臨時休校だろ


220:特定班

あ、たしかに


221:考察厨兼迷探偵

とりま、怪奇現象が起きるのは夜だから

今から行くなら、アトラクションの方の城で遊ぶのも有りだぞ


■■■


考察厨兼迷探偵の書き込みを読む。

この時には、ユートはすでに寮の自室に戻ってきていた。

ベッドに寝転び、書き込みに目を通した後、財布と相談する。

今月の小遣いは、まだまだ十分過ぎるほど入っている。

元より、この趣味を始めるまでは必要なもの以外に金をかけるということは無かった。

買い食いも、昨日がほぼ初めてだった。

ふと思いついて、ユートはアトラクションの方のティリンドム城を改めて検索した。


「おお!!」


出てきたのは、城を取り囲むように設営されている屋台の画像だった。


「美味そう……」


見た事のある料理、無い料理、さまざまな美味しいものの画像がずらりと並ぶ。

携帯端末で時間を確認する。

まだ午前九時半だ。

アトラクションの営業時間は、十二時からである。

続いて行き方を検索をする。

バスが出ているが、乗り継いで半日ほどかかるようだ。

ユートの頭が高速で回転する。

特定班に座標を聞いて転移すれば一発だ。

でも、それでは味気ない。

昨日のなんちゃって日帰りバス旅行を、ユートは気に入ったのだ。

やがて、決意する。


「よし、外泊申請出してこよ!!」


わりとすんなり外泊許可が出るのが、この学園の数少ないいい所だったりする。

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