第8話心霊スポット(*・ω・*)wkwk なんか、都市伝説化してる件
【
翌日の新聞の見出しも、テレビもその事ばかりが取り上げられ、特番が組まれていた。
教室に行っても、生徒たちの話題に上がるのは、【
現在、校舎にいるのは呼び出されなかった者達である。
「イーリス様もお怪我をされたとか」
「エディ様は回復されたらしい」
ザワザワと、教室がいつもと違う騒がしさに満ちていた。
そんな中を、ユートはいつも通りの眠そうな顔で歩き、自分の席に着くや欠伸を一つして腕を枕にして突っ伏した。
朝寝である。
この学園の恥さらし、落ちこぼれとしてある意味有名なユートではあるが、この日ばかりは誰も気にする事は無かった。
そんなことより、自分達の憧れでもあるイーリスとエディ、そして生徒会や風紀委員の面々のことが気がかりなのだ。
「会長も入院中だってよ」
「風紀委員長もだ」
そこに、担任が入ってきてホームルームを開始する。
まずは、昨日の件についての説明だ。
どうやら、王立魔法学園の生徒、そして他校の生徒全員が意識を回復し、快方に向かっているらしい。
その説明に、教室全体に安堵の空気が流れる。
さらに続く説明は、不謹慎ながら生徒達が喜ぶものだった。
今日から三日間、王立魔法学園は臨時休校となるらしい。
さすがに声を上げて喜ぶ者はいなかった。
このホームルームが終わると同時に帰宅することとなった。
まだ、完全に寝入っていなかったユートにもその話は聞こえていた。
ホームルームが終わり、生徒が帰り支度をする。
何人かは、イーリスのお見舞いに行くようだ。
しかし、何人もゾロゾロと行ったんでは迷惑になるからと代表を選ぶようだ。
完全に人の気配が、遠ざかるのを待ってからユートはむくりと顔を上げ、伸びをした。
欠伸をし、教室内を見回す。
教室には、誰も残っていなかった。
「すっげー、騒ぎになってる」
これはこれでいいネタになるな、とユートは考える。
あの掲示板が見つかる危惧は、欠片もしていない。
仮に見つかったとしても悪ノリした、スレ民達のタチの悪いお遊びと取られるに違いない。
そう確信していた。
それでも、万が一ということも考えられる。
ユートは、携帯端末を取り出すと、昨日建ててそのまま雑談スレと化した掲示板を表示させた。
「こういう時は、特定班に聞くのが早い」
■■■
875:魔眼保持者
なーなー、特定班いるー??
876:名無しの冒険者
あ、スレ主だ
877:名無しの冒険者
昨日はお楽しみだったね、スレ主
878:魔眼保持者
>>878
おー、めっちゃ遊んで満足だ
でも、いつも以上に眠ィ
879:特定班
いるぞ
880:魔眼保持者
>>880
ちょい聞きたいことあるんだけど
881:特定班
聞きたいこと?
882:魔眼保持者
昨日の事さ
軍とか動いてたっぽいし
ニュースでも色々流れてるけど
ホントのところ、どうなってるん??
新聞見た限りは、巨大蟻同士で争って自滅って読んだけど
テレビのニュースだと軍が巣を壊滅させたって言ってるし
883:名無しの冒険者
あー、たしかに
884:名無しの冒険者
ここ見付かったり
スレ主のことがバレたりしないかね??
885:名無しの冒険者
たしかに、これがきっかけでスレ主のことがバレて
スレ主が活動休止→失踪展開はやだなぁ
せっかくの俺たちの玩具、じゃなかった、暇つぶしが無くなるのは、避けたい
886:特定班
んー、そうだなぁ
たぶん大丈夫だと思うけど
なにせ、この掲示板――冒険者スレ自体が辺境も辺境だし
ちょっと調べてはみるわ
待ってろ
887:名無しの冒険者
たしかに、辺境なんだよなぁ
888:名無しの冒険者
利用者少ないし
889:名無しの冒険者
実況は基本、実況スレが別にあるし
890:名無しの冒険者
注目スレとして、ランキングにも載らないくらい人少ないもんな
891:名無しの冒険者
基本、冒険者同士の情報交換場所としてでしか使われないし
892:名無しの冒険者
冒険者って言っても、鼻つまみ者や追放された奴、ソロ活動が好きなやつくらいしかいないもんな
893:特定班
わかったぞ
894:名無しの冒険者
さすが、仕事が早い
895:魔眼保持者
どうだ?
俺やスレのことバレそうな感じ?
896:特定班
とりま、それは大丈夫だ
昨日の今日で蟻塚は調査中ではあるけど、蟻達がなにかしらの理由で内部分裂を起こして争って自滅した
って方向で、考えが固められるつつあるっぽい
この掲示板のことは、軍部では欠片も知られてない
897:魔眼保持者
そうかε-(´∀`*)ホッ
898:特定班
でもな、こんなスレが建ってるのも事実ではあるんだ
つ【とある掲示板のURL①】
つ【とある掲示板のURL②】
899:名無しの冒険者
え、これって
900:名無しの冒険者
オカルト板と考察板?
■■■
いきなり特定班が貼り付けた、二つの掲示板のURL。
首を傾げつつも、ユートは興味本位でオカルト板の方へ飛んでみた。
そこには、今回の件に関する陰謀論が書き込まれ話題になっていた。
考察板の方は、その陰謀論に関する考察をスレ民がわちゃわちゃ話しまくっている。
「わぁ、都市伝説化してるぅ」
さすがに、ユートは顔を引き攣らせた。
しかし、声は何処か楽しそうだ。
二つのスレで書かれていることは、こうだった。
曰く、蟻を倒したのは軍が開発した新兵器or新術式である。
曰く、あの奥地は軍が兵器or術式の実験場である。
「というか、都市伝説ってこうやって出来るのかぁ」
兵器って部分しか合っていない。
考察板では、もう少し妄想が飛躍して盛り上がっていた。
冒険者板に常駐している、コテハン【考察厨兼迷探偵】並の頭を持つだろう連中が沢山いた。
昨日、避難者が避難中に撮影し、ネット上に投稿した複数の動画を検証、考察する者がチラホラいる。
考察の中身は、ほとんどが常識に照らし合わせたものだった。
そう、蟻塚を取り囲んだ無数の魔法陣。
アレは、どうしたって個人がどうこうできるものではないのだ。
その後の、殺戮魔法が発動した瞬間を撮影した動画も投稿されていた。
これだって、個人が展開、発動させただなんて誰も思っちゃいない。
たとえ、新兵器だろうが新術式だろうが、あの規模の魔法を展開し、発動させるにはそれができる力量を持った魔法使いが何人も必要になってくるのだ。
つまり、常識的に考えれば考えるほど、
なんて、さらに安心した矢先の事だった。
面白かったので、オカルト板をもう一度見てみようと戻った時だ。
その中のとある書き込みに、目が止まった。
「英雄さんの噂??」
その書き込みから始まる、一部スレッドを読んでみた。
■■■
355:本当にあった怖い名無し
もしかしたら、【英雄さん】が出たのかもよ?
356:本当にあった怖い名無し
>>355
英雄さん?
357:本当にあった怖い名無し
>>355
なにそれ??
358:355
わかりやすいように、コテハンこれで
ちょっと前から、【英雄さん】って人の噂が出てるんだ
359:355
今年の春先だったかな?
卒業式とか入学式とか、そういうイベントが終わったくらいの頃
ウィスティリア王国の王都でスタンピードが発生しただろ?
360:本当にあった怖い名無し
あー、あったな
361:本当にあった怖い名無し
え、それって王立魔法学園の生徒が止めたやつだろ?
なんつったかなぁ
その生徒の名前……?
362:本当にあった怖い名無し
エディ・ロンフォールド・ヴァスクな
名門ヴァスク家の次男
スタンピードを止めたってことで、現代の英雄として王様から表彰だか勲章もらうかしたんだろ?
363:355
そう、ライブ放送もされたから、顔を知ってる人もいると思う
検索すれば顔写真も出てくるしな
実は、スタンピードを止めた人は別にいるって噂があるんだ
364:本当にあった怖い名無し
そうなん?
365:本当にあった怖い名無し
あ、それが【英雄さん】か??
366:355
>>365
そう
367:本当にあった怖い名無し
それって、よくある陰謀論とかじゃないの?
368:355
それが、他ならないエディ自身が、取材に来た記者にこんなことを言ってるんだ
「褒賞や勲章を受け取るつもりはない。それを受け取るべき人物は他にいる」
記者は、これをエディの謙遜として受け取って、せいぜい彼を手伝った名も無き一般人がいたんだろうと解釈した
ソースはこの雑誌の記事な
つ【週刊誌の画像】
369:本当にあった怖い名無し
ほほぅ
370:355
それを裏付ける動画もあるんだ
つ【フードを目深に被った人物が空を飛び、スタンピードの群れを一掃していく動画】
これは、スタンピードが起きた時、その通り道にあった家から撮影された映像だ
映像を進めていくと、後半の方でエディがやってきて最後の群れだけ倒したことがわかる
371:本当にあった怖い名無し
え、なんでこれ世間に流れてないの?
372:355
握り潰されたんだよ
エディを英雄にするために
373:本当にあった怖い名無し
なんでエディを英雄にする必要があるの?
374:355
貴族が英雄として世間に認知されれば、評判が良くなるだろ?
つまり、支配しやすくなる
375:本当にあった怖い名無し
あー、政治的に都合がいいのか
376:355
そういうこと
この動画だって、ほとんどの魚拓が消されたんだ
自分はたまたま保存してそのままだったからさ
あと、幸いというべきか
この掲示板は国の管理下から外れてるしな
匿名掲示板って名前は伊達じゃない
ここにいるヤツらの情報は絶対辿れないようになってる
377:本当にあった怖い名無し
辿れる連中もいるだろ
378:本当にあった怖い名無し
【特定班】か
379:本当にあった怖い名無し
あと【考察厨】や【迷探偵】をコテハンとして使ってる連中な
ちょっとした言動で特定してくるからな、アイツら
ある意味【
380:本当にあった怖い名無し
まぁ、別の怖さがあるよな
381:本当にあった怖い名無し
(*´・ω・)(・ω・`*)ナ-
■■■
オカルト板のそんな書き込みを見て、ユートはその眠たそうなやる気なさそうな顔を、一転、ニマニマさせる。
他の生徒が見たら、確実に警備員を呼ばれる顔だ。
ユートのテンションはぶち上がっていた。
すぐさま、自分が建てた冒険者スレに書き込みをする。
■■■
966:魔眼保持者
聞いて聞いてー!!
バンバンバンバンバンバンバン
バン バンバンバン
バン (∩`・ω・) バンバン
_/_ミつ/ ̄ ̄ ̄/
\/___/ ̄
967:名無しの冒険者
おぅ、どした?
968:魔眼保持者
いや、今さ
貼り付けてもらった他スレに飛んでみたんだけど
俺、【英雄】扱いされてたwww
969:名無しの冒険者
はい?
970:名無しの冒険者
どゆこと?
971:特定班
あー、【英雄さん】のやつか
972:名無しの冒険者
英雄さん?
973:名無しの冒険者
なにそれ??
974:特定班
オカ板行ってみてこい
975:名無しの冒険者
二窓してた俺勝利( ´・Д・)」
976:名無しの冒険者
見てきた、なるほどなー
977:名無しの冒険者
俺も見てきた
つーか、スレ主が何処の学園かほぼわかったわwww
978:名無しの冒険者
スタンピード止めた英雄って情報だけで、芋づる式にスレ主の通ってる学園の特定余裕やん
979:魔眼保持者
とりま、今度からコテハン【英雄】にしよっかな
(*・ω・*)wkwk
980:名無しの冒険者
いい感じに顔見えないな
981:魔眼保持者
フードがいい仕事してるだろ?
982:名無しの冒険者
たしかに
983:名無しの冒険者
つーか、英雄エディ、こんなこと言ってたのか
984:名無しの冒険者
でも、本気にされなかった、と
985:名無しの冒険者
民衆の人気とりするには丁度いいだろうに
986:名無しの冒険者
素直な子なのかね?
987:名無しの冒険者
金持ちの考えることはわからん
988:魔眼保持者
(゜Д゜)アッ!?
もうスレッドねーじゃん?!
989:名無しの冒険者
お、ほんとだ
990:名無しの冒険者
そんじゃ、アレ、やりますか
991:名無しの冒険者
1000なら、スレ主の正体がバレそうになるwww
992:名無しの冒険者
そうだなぁ、1000なら次の実況先で、またまたスレ主が魔眼使って遊びまくる!
993:名無しの冒険者
>>992
それ、無双って言わないか?
チート無双
994:名無しの冒険者
たしかにwww
魔眼はチートなぶっ壊れ性能だよなwww
995:名無しの冒険者
えーとえーと、1000なら次は、スレ主がファミレスで新メニュー食べて実況する!!
996:名無しの冒険者
>>995
それ、食レポ
997:名無しの冒険者
食レポだな
998:名無しの冒険者
ただの食レポやん
999:名無しの冒険者
1000なら、今度はダンジョン実況!
1000:考察厨兼迷探偵
時期も時期だし
次は心霊スポット実況なんて、どうだ?
魔眼保持者??
1001:このスレッドは1000を超えました。
もう書けないので、新しいスレッドを立ててください
■■■
こんな風に、ユートがスレ民達と盛り上がっていた頃。
病院の宛てがわれた個室にて、イーリスはベッドに横になりじぃっと天井をにらんでいた。
思い出すのは、蟻塚から転移する直前のことだ。
あのとき、イーリスは意識を取り戻していた。
そのイーリスの目に映ったのは、ドラゴン襲撃事件の時に彼女を助けてくれた【黒衣の人】だった。
そう、確信している。
医者や看護師に説明したけれど、取り合ってもらえなかった。
信じてもらえなかった。
どうやら、危険な目にあったために錯乱してるか、夢を見たと思われたらしい。
見舞いに来た家族にも話したが、やはり取り合ってもらえなかった。
どうやら、イーリスを含めたあの蟻塚に攫われた者達は自力で脱出したと思われているらしい。
「居た」
イーリスは、天井を睨みつけながら呟いた。
「あの人は、たしかに居た」
だと言うのに、蟻塚は破壊され跡形もなかった。
聞いたところによると、イーリス達と入れ違いで軍が広域破壊魔法を使い、蟻塚を破壊したのだと聞いた。
その時に、あの巨大な古代種の生き残りの蟻も討伐されたらしい。
ぎゅうっと、イーリスは拳を作り握りしめた。
【黒衣の人】の目的はわからない。
わかっているのは、たしかに実在していること。
そして、また助けてもらったということくらいだ。
(会いたい)
イーリスは内心で呟いた。
もう一度、あの【黒衣の人】に会いたい。
その想いが強くなる。
助けてくれた礼も言いたいし、人助けをしている理由も知りたい。
なによりも、
「どんな人なのかな」
その正体が知りたかった。
切実に知りたかった。
あのフードの下の顔を見てみたい。
どこの誰なのだろう?
とにかく、イーリスは知りたかったのだ。
退院したら、とにかく使えるものはなんでも使って調べて見ようと決意する。
その時だった。
個室のドアが控えめにノックされた。
「どうぞ」
イーリスの声に、ドアが開く。
そこに居たのは、エディとその従者兼護衛のルドルフだった。
部屋に入ると挨拶もそこそこに、エディは口を開いた。
「話がある」
「なんの話?」
「君が、蟻塚から脱出する直前に【黒衣の人物】を見た、と言っていると聞いてね」
「それが??」
イーリスは警戒心を露わにして返した。
「俺もね、見たんだ」
エディは、淡々とそう口にした。
エディの返しに、イーリスの目がまん丸になる。
それだけ、驚いたのだ。
【黒衣の人】を見たのは、彼女だけではなかった。
その事実に、驚いていた。
まさか、エディも意識が回復していたとは思わなかったのだ。
「貴方も?」
イーリスの確認に、エディは頷く。
「俺だけじゃない」
エディは頷いた後、隣に立つルドルフを見た。
「まさか、彼も?」
「あぁ、ほぼ同じタイミングで意識を取り戻していたらしい」
「それじゃ、あの人物の顔は?」
イーリスに問われ、ルドルフは顔を横に振った。
どうやら、彼も見ていないらしい。
ダメ元での確認だったが、やはり残念に思ってしまう。
「まるで、幻影みたい」
ポツリと漏らした一言に、エディがポンっと手を叩いた。
「いいね、それ」
「?」
「彼か彼女かはわからないけど、ずっと【黒衣の人】じゃ、なんていうか違うかなって思っててさ。
だから、【黒衣の人】のことをこれからは、ファントムと呼ぶのはどうだろう?」
口の悪いスレ民がいたら、『さすが貴族の坊ちゃんはどうでもいい事を考えるなぁ』と書き込むか、内心で毒を吐くかするだろう。
なんなら、ここに【
だが、ここには現在、部屋の主であるイーリスと、エディ&ルドルフ主従しかいない。
ツッコミが不在なのだった。
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