第4話 Dirty worker part1
いつもの仕事。
俺の仕事は、基本変わらない。
魔都へと進む巨大なエレベーターに一人。
「映像記録、音声記録チェック…異常なし。記録開始、依頼開始」
装備に取り付けてある各種機器を起動し、動作の軽いチェックを済ませ、魔都の隔壁を開放する。
そして、眼前にはいつもの毒々しい色の岩窟が広がる。
恐らく魔都が世界にあふれる前には存在しえなかっただろう光景。
浅い区画でさえこれだ。
「第3エレベーター前、目視できる異常…無し。事前情報を元に探査続行」
俺のつけている記録のための機器は、マスクをつけている俺の声は拾わず、声帯の振動から音の変化を観測し、記録する。
ゆえに、俺のマスクは防音であり、周囲には俺の動く音以外何も出ない。
魔都からもたらされたテクノロジー…エレベーターもそうだが、俺が今身に着けている装備も、魔都出現以前には考えられなかったものが多い…と装備を卸してくれた奴が言っていた。
中には俗称だが『遺物』と呼ばれる、よくある『剣と魔法のファンタジー』の世界からそっくりそのまま出てきたような物が魔都には転がっている。
そして、その『遺物』を加工したものも俺の装備には使用されているとそいつは言っていた。
俺にはその詳細な情報はわからないが、使用するにあたり、使うことで『何が起こるのか』はそのすべてを把握していた。
把握していなければ、死ぬ。
例えば、火を吹く短剣。姿を消す布。怪物の爪や牙を通さない鎧。
それらには、魔都出現以前の世界に通用しない『力』が働いている。
そんなある種完全に理解はできないが強い『力』の用法を誤ったら?
命をつなぐための装備に、命を絶たれるなどというのは、冗談にもならない。
「…小型の怪物どもの姿が少ない…事前情報との食い違いを記録…ん?」
毒々しい岩の中で、恐らくは見慣れているものを目の端に留める。
おおよそ3メートル先の岩陰。
俺は携帯しているライフル銃を構え、上下左右に目を配らせ、変化がないことを確認し、ゆっくりと先に進む。
そして、そこにそれはあった。
想像通りのモノがそこにはあった。
「…おそらく事前情報の冒険者の物とみられる物品を発見…状況は…映像記録の通りだ。」
ひしゃげたヘルメット。
内側には、べっとり張り付いた血と髪の毛とおそらくは…
「近辺に冒険者並びに遺体らしきものは発見できず。このまま探索を続行する」
俺は、そのまま警戒を緩めずに足を進めた。
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