第3話 回収作業 part1
簡単な仕事。
そう、簡単な仕事だ。
「長野、今回は思っていたよりも早くあがれそうだな」
「だな、小型の化け物しか報告されていなかったが、そいつらの数も少ない」
今回の仕事は5人で組まされた。
斡旋所の顔にデカい傷の入った男に斡旋されたもので、内容は魔都の中でも浅い区域のとある資源の回収だった。
「お、ここにもあった」
「おい真壁、あんまり離れるなよ。数が少ないって言っても俺らの装備じゃ化け物に出くわしたらほぼ終わりだ」
「分かってるよそんなの…お、あっちにもあったぁ」
「…ったく」
俺はこの仕事を始めておおよそ3年。そこそこ生き残れてる方だ。
危ない橋はできるだけ渡らない。それが俺の鉄則で、今回の資源…
『合金MーA07』はぱっと見は油にまみれた石ころだが、冒険者を始めた奴なら大体一回は回収作業に入るものだ。
こういった浅い区画の資源は、実入りはまあまあだが命を張る場面は少なめですむ。
そういうこともあってか、今回組んだ残りの四人は癖がある感じだ。
高山は少し慣れてるがまだ1年くらい。大柄だが小心者だ。
真壁は3か月くらい。慣れ始めで一番調子に乗る。だが女性でありながらよく働く。
風間は一年と少しだが、実際には前の探索でちょっといろいろとあったらしく、今回が復帰一回目の仕事とのことだ。少し危うい感じがする。
そして最後は中島。今回が初仕事。
小柄で線の細い…少年といっても差し支えない男だ。
魔都が世界に出てきてから、こういう年の『冒険者』はまぁ…絶えない。
『冒険者』なんて職業選ぶ奴は大なり小なり訳ありだ。
もちろん、俺…長野も例外じゃないわけだ。
「あ、長野さん、ちょっとこっち来てもらえます?」
中島から呼ばれる。
「おう、どうした?」
「あの、事前にもらった地図と比べると、なんか変なんです…」
「変?…変って何が?」
そう尋ねると中島はラミネートしてある地図の一点を指さす。
「さっき、真壁さんが合金回収してたあたり、地図に載ってないんです」
嫌な予感が、した。
今思えば、従っておけばよかったんだ、この予感に。
「…まぁ区画の見取りが変わるなんてのはまぁまぁあるし…たまたまじゃないかな」
「そ、そうですか…わかりました」
不安そうな中島の肩に手をのせて俺は言った。
「大丈夫だって、心配すんな。何かあったら俺がどうにかしてやるよ」
「…は、はい」
今思えば、なんでそんなことを言ってしまったんだろうか。という後悔しかない。
恐らくは、不安だったんだ。
自分の中の嫌な予感が当たらないで欲しいと願っていたんだ。
今回参加した冒険者の中で、俺だけが唯一携帯していた『遺物』由来の武器を握りしめながら、俺は仕事に戻った。
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