第10話 セシル・エドワード


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 【ノア・フランシス】 レベル:22 年齢:15 性別:男


 体力 :B+

 攻撃 :B

 魔力 :C+

 素早さ:A-

 知能:不明

 

【スキル】スキル

『鑑定』 Lv3

『瞬歩』 Lv4

『気配察知』Lv2

『並列思考』Lv3

『刀術』  Lv4

 

 New!!

 『空間魔法』Lv1

 『錬金術』Lv1

 

 ──────────────


 俺はステータスのNewをみながら、ふむふむと頷く。

 

 空間魔法はよく知らないけど、錬金術は本を読むことで得られたスキルだ。

 スキルの入手方法の仕組みが分かってきた気がする。

 

 得たいスキルに準ずる書物を読むと、稀にスキルを得られるようだ。


 さて、肝心の空間魔法だが……。


 『空間魔法』

 ・五大属性を習得した者のみ使える魔法。

 

 つまり、よく言う収納と言った魔法やテレポートに準ずる魔法が使えるらしい。

 さっそく使ってみようとしたのだが、『魔力A+以上から使用できます』と表示されて使うことができなかった。


 これは……しばらくは無用の長物だな。

 錬金術に関しても、スキルに応じて作れる物が決まっているらしい。


 さっそく人に隠れて使ったが、初めて精製できたのはただの石ころだった。しかも魔力を使った感じもした。


 今は欲しい物はお金で買えてしまう。すぐに上げる必要もあまりないかな。


 毎朝自分のステータスを確認する。


 しばらく、魔法の特訓に力入れた方が良いかもなぁ。

 『空間魔法』使いたいし。


 フレイシア先生にもっと特訓を頼むか!


 ステータスを確認し、新しいことを試す。それがノア・フランシスの日課だ。


 *


 その日、俺は周囲の生徒たちから奇怪な目で見られながら座っていた。


 ここは貴族教育養成所の体育館、のような場所だ。

 さらに将来有望な学園に行く前の貴族や社交界に出る前に、最低限のマナーを教える場でもある。


 俺は行かなくても良いと思ったのだが……今の俺にノアの記憶はない。断片的にはちょっと残ってるけど。


 だから、マナーとかゼロの状態になっていた。


 食卓にあった水が入った皿。てっきり飲む用だと思ったのに、まさか手を洗う物だったとは……。それをセバスに見られてこの養成所に通う事になった。

 『筋肉で頭が……』ってちゃんと聞こえてたからな、セバス。

 

「諸君生徒らはここから貴族の模範として……王国の未来を担う一人としてマナーを……」


 どこかのお偉いさんが台座に乗って、雄弁に長々と貴族の在り方を語っている。

 こういうって話が長いんだよなぁ。早く終わんないかなぁ。屋敷に戻って筋トレしたいんだけど。


 思わずため息が漏れる。

 すると、周囲がピリついた。


 ん? なんでピリピリしてるんだ?

 レベルも上がり、精度が上昇した『気配察知』によって小さな声さえ聞こえる。

 

「あれが例の超金持ちクズ貴族だよな……?」

「しかも、婚約者はあの絶世の美女、セシル・エドワードらしいぜ……」

「怖そう……関わらないようにしなきゃ」

「性格クズなのに羨ましいよな……」


 はい。いつも通りでした。

 俺の評判を良くしたいとは思うけど、やり過ぎるとゲームの世界観的にどうなんだろうなぁって思うんだ。


 どのゲームにおいてもヘイト役は必須だろ?


 でも出来ればヘイトは受けたくないし、死にたくもない。


 どっちつかずのまま宙ぶらりんの立場に、俺はいる。


 勇者の覚醒シーンもきっかけはノアの嫌がらせだしなぁ。

 どうすっかなぁ……誰かに嫌がらせとかしたくないし。


 そう悩んでいると、声を掛けられた。


「お隣、宜しいでしょうか?」


 透き通るような声に、美しい金髪の少女だ。

 どこかで見たことがあるような……てか他に空いてるのに、わざわざ俺の隣に座るの? 変わった人もいるもんだな。


「どうぞ」


 彼女は俺の隣に座って、少ししてから口を開いた。

 ……人差し指で唇を触る動作はなんだ、色っぽいぞ。


「あの台座に乗ってる方の話、少々長いですね」

「俺もそう思います」


 ふと横を見ると、少女と目が合う。

 ……美人だな。あと数年もしたら、メインヒロインとかに居そう。


 少女が口を開いた。


「さきほど、ため息を漏らしていましたが退屈なんですか?」

「まぁ、そんな所です。帰って筋ト……訓練とかしていた方が良い」

「それは同意します。マナーなんて、幼少期に叩きこまれている物、いまさら何を学ぶというのでしょうかね」


 なんだ……?


 風格からかなり品格のある少女だとは思うが、やけに距離が近いな。

 大抵の貴族は俺に怖がって近寄ってすら来ないのに。


「あの、失礼ですがどなた様ですか?」


 こんな美少女のこと、俺一切知らないんだけど。


「あら、婚約者の顔をご存じないのですか? ノア・フランシス様」

「……え?」

「セシル・エドワード。ノア様の許嫁でございます」


 俺は心臓を貫かれたような気持ちになった。

 あっ、ヤバい……逃げないと。

 


 

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