第七章・出雲郷凛天編
春夏秋冬式織が高天原市へと戻って来た時の事。
久方ぶりに、彼女の元へと会いに行く事にした。
「久し振りだな、凛天」
春夏秋冬式織の言葉に、出雲郷凛天はゆっくりと布団の中から顔を出す。
「…はあ、はッ」
顔を出して春夏秋冬式織の方へと向かう。
彼女の口先が、春夏秋冬式織の腕を掴むと、大きく口を開いて肉を喰らい出した。
ぐちゃぐちゃと、春夏秋冬式織の腕を噛み千切り肉を喰らう出雲郷凛天。
末期に近く、彼女の肉体に蝕む呪いは、彼女の理性と知性を奪っている。
春夏秋冬式織は表情を苦痛に歪ます事無く、淡々と出雲郷凛天の行動を受け入れつつあった。
「はあ、はあ、ッあ、わ、たし…」
虚ろな目を向けている出雲郷凛天。
春夏秋冬式織の方に顔を向けては、苦しそうな顔をした。
自らの舌先に残る血の味が、愛する者がくれたものだと理解して、自らの指先を喉奥へと突っ込んだ。
「ぐ、ぶっおぇッ!」
吐き出そうとする彼女に、春夏秋冬式織は手首を掴んでそれを止める。
「やめろ、俺は気にしてない」
肉体に刻まれた七曜冠印による効果によって、春夏秋冬式織の肉体は神力による回復をしている。
だから、出雲郷凛天に噛まれた傷など然程も気にしている様子など無かったが、だが出雲郷凛天は違ったらしい。
「やめ、て…こんな、こんな私、見ないで、見ない、で…ッ」
混乱しつつある出雲郷凛天を、春夏秋冬式織は抱き締める。
「落ち着け、大丈夫だ。大丈夫だからな…」
冷静になるように、春夏秋冬式織は言い続ける。
出雲郷凛天は春夏秋冬式織の胸の中で泣いていた。
段々と、自分が怪物になっていくのが恐ろしいのだろう。
春夏秋冬式織は、出雲郷凛天が落ち着くまで、傍に居続ける。
やがて、呼吸が整ってきた、出雲郷凛天が眠っている事を察すると、春夏秋冬式織は彼女を布団の中へ寝かしつける。
そして彼女の頭に触れて、出雲郷凛天の寝顔を呆然と見ていた時。
「式織様」
声が聞こえて来た。
その声に反応して、春夏秋冬式織が振り向くと。
其処には、仁万咲来が立っていた。
この和室には似つかわしくない西洋のメイド服を着込んでいる彼女の表情は暗い。
「こちらへ、お願いします」
春夏秋冬式織を別室へと案内する仁万咲来。
春夏秋冬式織は彼女の言葉に従って歩き出す。
向かう先は、出雲郷八雲岌武千代が居る場所。
其処である話し合いが行われる。
『凛天の事だが…あれはもう、長くは無い』
出雲郷八雲岌武千代がそう話を切り出した。
これは、今後の出雲郷凛天を話し合う場だった。
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