第六章・温泉津月妃の中学生時代

これは現在より四年前の話。

温泉津月妃、十四歳の時。

幼少期から太っていた彼女は、中学生に上がると共に減量に成功。

加えて成長期であった彼女の肉体はみるみるうちに女性らしい肉付きをしつつあった。

無論、天女の如き相貌を備える温泉津月妃ならば、遍く男達は放って置かない。

当然の如く、日課でもある様に毎日、告白と言うものをされるのだが。


「汗臭い、気持ち悪い」

「顔が汚い、近寄るな」

「親の脛齧って生きてそう」

「デブじゃん、ご飯食べて幸せでも感じてたら?」

「教師が告白?ロリコンじゃん」


傲岸不遜。

殆どの男性は彼女の鋭い言葉によって切り返される。


「あの、本当、見るだけでもッ」


ラブレターを持って来た男子生徒には。


「あのさ、読ませる文章って書けないの?性欲塗れな言葉を綴る前に漢字ドリル綴って勉強してきたら?」


ラブレターを裏返してこれ以上ない綺麗な字で『死んで出直せ』と書いて叩き付ける。


「現ナマ?クレカ?マンション?!なんでも買ってあげるからッ!」


財布から万札を取り出しながら幾らかと聞いて来るサラリーマンには。


「お金程度で買えると思ってんの?そのお金使って御目出度い頭でも治療して貰ったら?おまけで髪の毛も生えるかもよ」


相手の心を適度に折っては、二度と告白などしたくない、女性恐怖症すら発症させるトラウマを相手に植え付ける。


彼女は男性と言う存在全てを憎む。

睾丸を摘出して性転換するか、死んでほしいと思っている。

それは最早、男性を種族として分け、そして差別をしている様子だった。


「はあ…」


教室の片隅で鬱憤を漏らしながら、胸のポケットに入れていた写真を取り出す。

其処には、幼少期の頃の春夏秋冬式織と、ツーショットで撮られた写真であった。

それを穴が開く程に見つめる温泉津月妃は、口を尖らせて春夏秋冬式織の顔に口づけをする。


「ん…ちゅ…はあ…」


この世で唯一、温泉津月妃が乙女の顔をして、メスの顔をする人物が居るとすれば。

それは、幼少期の彼女と婚約を結んだ、春夏秋冬式織ただ一人だろう。


「(シキ…つきぴの大切なかれぴ…はあ、早く逢いたい…逢いたい逢いたい…しゅき、しゅきしゅき…だいしゅき、ああ、シキ…)」


写真に頬擦りをしながら、温泉津月妃は想いを育まらせる。

春夏秋冬式織と別れて数年ほどが経っているが、今でも彼女の気持ちは変わる事など無かった。


「(あの写真、何が写ってるんだ…?)」

「(あー、相変わらず可愛いなあ、月妃、結婚してえ)」

「(一人の時間だと、あんなにもかわいいのに…どうして人に逢うと怖くなるんだろうか…)」


授業中。

周囲の生徒たちは、視線を温泉津月妃に向けながらその様に考えていた。


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