第五章・戦闘開始
地面を震撼させる大地の踏みしめ。
一瞬、地震が起きたのかと錯覚する程の勢い。
春夏秋冬式織は、相手に恐れる事もなく、相手を見続ける。
「あ、ああ!」
上擦る声、磨り潰される小鳥の様な弱々しさ。
だと言うのに、その眼前には鑢で肌を擦る悪鬼の形相、その状態で、春夏秋冬式織の元へと、『天飛上落』を使役、背中きら放出するように、推進力を得て迫る。
表情と相まって、文字通り、鬼気迫るものだった。
「ぅおお!」
春夏秋冬式織は、地面を蹴ると共に、正面へと迫る。
拳を構えて、峠之内冥児にカウンターを狙おうとする。
「邪魔、だあァ!」
地面を踏み締める。
神力が放出すると、春夏秋冬式織は即座に察する。
それは、まるで未来予知であるかの様に、春夏秋冬式織は、前のめりとなっていた身体を仰け反らせる。
直後、地面から大量の刀剣類が出現した。
曲刀、直刀、大太刀から鋸、巨大な穂先に鏃と言った、刃の集合体が、春夏秋冬式織を襲い出した。
そのまま踏み込んでいれば、春夏秋冬式織は即座に串刺しになっていただろう。
「(一瞬の事だけど、読めた…ッ)」
これが、春夏秋冬式織の成長かと思った。
だが実際には、春夏秋冬式織の根底に宿る力である事は、春夏秋冬式織はまだ知らない事だった。
「クソ、がァ!」
腕を振るう。
神力が凝縮され、物質化すると、今度は峠之内冥児の軌跡が大鎌へと変わる。
春夏秋冬式織は、その攻撃もまた回避して、相手から離れだした。
「どうした?…この程度でへばって、もう終わりか?ヘナチョコだな」
その様な煽りを入れると、より一層、峠之内冥児は憤り、神力を放出させる。
「(そうだ、怒れ、冷静を、失え、それが、俺がお前に勝てる手立てだ)」
つかず離れず、一定の距離を保ちながら春夏秋冬式織は峠之内冥児と相対しているのには理由がある。
春夏秋冬式織の技術や戦闘能力では、攻防一体が可能である峠之内冥児には勝てる手立てがない。
『龍印』を覚えた春夏秋冬式織、その戦闘は基本的に肉弾戦である。
春夏秋冬澱織の様に、自由自在に龍印を扱う事が出来なかった。
だから、唯一峠之内冥児を倒す事が出来る手があるとすれば、相手の自爆待ちの一点だった。
一定の距離を保つ事で、峠之内冥児の『天飛上落』による推進力接近を潰す。
現状の彼は、肉体に多くの鋼印を重ねれば重ねる程に動作が鈍くなる。
相手が離れれば『天飛上落』を使役する事で、急接近して圧し潰す事が可能だが、しかし、中距離の位置であると、小回りが利かなくなると言う欠点がある。
それを、春夏秋冬式織は狙ったのだった。
そして、すぐに、勝敗の命運が訪れる。
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