第11話 私と王妃さまの願いの結末

 5人目と言うことでスポーンと生まれると言うこともなく、何度も悶絶すること10時間。私は呆然と天井を見つめています。

「・・・」

「・・・おぉんにゃー!!」

 にゃー?生まれてすぐ噛んでる!


「王妃さま!おめでとうございます!!女の子でございます」

 何と生まれてすぐ自己申告でしたか?賢いですわ。って冗談です。


 侍医が軽く検診して侍女たちがすぐに赤子を清めて渡してくれました。

 ちっちゃくて可愛いです。

 お口がもにもにと動いてはじめての乳を吸い始めます。


 扉の向こうからちょっと声が漏れて来ますが汗だくで寝台周りも汚れているのでもう少し待ってほしい。

 やっと身を整えたので入室を許可すると陛下と王子たち、グラード公爵家とグランマニエ公爵も入ってきました。


 生まれたばかりの王女を抱いた陛下は子供たちに見えるようにしゃがんで

「お前たち、妹ができたぞ。可愛がってくれよ」

 子供たちははじめての女兄妹に興味津々です。妹が出来たことで将来の伴侶に思いやりを持てる子に育つと有難いなぁと思います。



 そしてお父様は普段の威厳とか全部ぶっ飛ばして、オイオイ泣いてます。もう孫はお兄様たちにも妹にもたくさん生まれてますのに慣れないようです。

 ロナウド兄様のところはまだ女の子がいないので姪に興味津々です。

 お母様は女の子のドレスを爆買いするのがお好きなので今から楽しそう。


 グランマニエ公爵はちょっとだけ王女を眺めて私に

「おめでとう」

って言ってくださいました。

「陛下、おめでたいですが仕事が溜まってますので行きますよ」

 無情の宣告をして嫌がる陛下を引き摺って出ていかれました。


 お母様とオルテシアがしばらく居てくださるそうなので子供たちをお任せして私は休むことにしました。

 お庭から王子たちの楽しそうな声が聞こえて来ます。


 子供の頃この王宮に通うようになった時、ここは静かすぎて寂しい場所でした。

 前王妃さまが茶会を開くときだけ少し活気が戻りましたが住まう人が一気に減った王宮には活気がありません。

 庭師たちが綺麗に維持している庭園も訪れる人がいなければ華やぎが足りません。


 今は子供たちと側仕や護衛があっちにこっちにと動き回っています。子供たちに会いに親族や友人が日替わりで訪ねてくれます。

 

 張り詰めた前王妃さまや追い詰められていた陛下は先の未来を思うあまり今が見えなくなっていたのでしょう。


 今が幸せで無ければ未来も明るく見られないと私は思っています。


 あの頃に幸せな未来を予測するのは困難だったかもしれません。

 でもやはり自分を押し殺して公に生きるだけでは息が詰まってしまうでしょう?


 私は運良く賽が転がったのをうまく利用出来ましたが私欲に走りすぎた自覚はあります。


 でも笑顔が溢れる環境になったらもっと人が集まってここは明るくなりました。 


 民のためにというなら民に支えられる私たちは幸せでいなくてはなりません。幸せでない国王の元にいては不安しか感じませんもの。


 王妃さま、私は国のため陛下のため民のためになれていますか?

 あなたの望んだ未来とは少しズレたかも知れませんが許してくださいね。


 うとうととしていたら陛下が戻ってこられました。もう深夜だそうで軽食を持って来てくださったようです。

「王女を嫁にださーんって義父上が言うんだがそれを真似して王子たちもださーんって言い出して面白かったよ」

 お父様はオルテシアの婚約も嫌がってましたわね。


 軽食のサンドイッチを少しずつ頂きながら聞いてます。

「そうしたらリチャードがどうせこの子もオッサンと結婚する~って言い出すんだよって言うもんだから宰相と義母上が大笑いしてね、義父上が絶対ダメーって泣き出しちゃって」

 目に見えるような光景です。


「陛下はよろしいんですの?」

「私には何も言えないだろう?」

 苦虫を噛み潰したようになりながら私を抱き寄せてくれます。

「年の差があっても私は幸せですのに?」

「そうだな」

 ちょっとハニカミながら額に頬に首筋にキスを落としてくれます。


「王子たちも立派な兄バカになりそうだな」

 王女にとってはちょっと迷惑かもしれません。でも可愛がられるのは良いことですわ。

 

 そんな毎日を繰り返して王位を息子に譲る日まで二人で支えあって過ごしました。

 あのバラ園を散歩した日のように穏やかに時にはあの婚約破棄騒動の日のように問題にぶち当たったり。



 引退した後は私好みの渋さが成長してさらに好みになった旦那様とちょっと顎周りお腹周りが気になる私とで長閑な田舎でゆっくり気楽に・・・たまにうるさい日々を過ごしています。



終わり

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