第9話 陛下と私の穏やかな日々

 荒技で婚姻に持ち込んだその後は、わりと穏やかに過ぎています。

 陛下の揺るぎない政治、公爵たちの補佐でゆっくり平和な国として立ち直ってきた頃にあの婚約破棄騒動が起きて。


 私はこの婚姻だけは自分勝手に進めましたが王家にも民にも良い行動だったと思っています。


 婚姻後、順調に子供を授かり今は第五子妊娠中です。第一子は5歳です。シルヴァン陛下に似た綺麗な男の子です。

 二子三子は双子で私の母に似た色合いの可愛い男の子3歳。四子は先王陛下の面差しに似た綺麗な男の子2歳。王宮は賑やかになりました。この子達には王家や貴族の責務をしっかり教えるつもりです。もちろん子供達の幸せが一番大事ですが。


 嬉しいことに陛下と私との婚姻で年齢差、再婚への忌避が緩和されたようで貴族の婚姻成立が増加しました。もちろん親や家の都合で無理矢理嫁がせるなどは禁じております。

 

 私の兄妹や従兄弟達、親戚、友人達が自分の子供達を学友にしたいのだと妊活に励んでくれて。ちょっと下心もある他の貴族達も負けじとなっているようで出生率も上がりましたわ。


 何より一般の民が王家が国の安定を約束してくれるなら自分達も頑張らねばと。


 王を戴いている以上、善政を敷く王を失うことは破滅を意味します。

 ですから明るい未来にして行かなければと、戦争や流行病で人口が減ってしまって不安定なままの国でダメなんだと、子沢山を目指して仕事を頑張ってくれるようになりました。

 国の公共事業として起こした開拓や治水などの工事にも積極的に参加してくれます。


 王子との婚姻が嫌だったことや王妃教育を無駄にしたくないことは完全に私利私欲でしたが上手いこと良い結果になりました。


「アルステリア、大丈夫か?」

 大きなお腹を抱えている私を心配して仕事の合間に頻繁に覗きにきます。

 婚姻前ちょっとお疲れの渋おじさまだった陛下は心の枷が軽くなったからか当時より少し若返ってます。渋さを育てるというのは失敗ですが今も素敵なおじさまです。


 ベッドサイドに座っていた私をそっと寝かせてお腹のそばに添い寝してきます。

「宰相が怒って迎えにきますよ」

 お腹を撫でつつ、

「仕事は粗方片付けてある。今度こそ生まれる前から一緒にいたい」

 毎回直前に他国との会談や何か入っちゃってギリギリ間に合わないのです。お父様の嫌がらせかしら?まさかですわね。

 でも出産中の立ち会いは嫌なのですが、断ると泣いちゃいそうです。

 昔を思えば陛下は感情をよく表にされるようになりました。


「私はそなたといると私自身でいられる。そなたとの子達が私を存在価値のあるものにしてくれる」


 陛下が私に安らぎを感じるようになって心の内を覗かせてくれるようになった時は感動でした。


「私は年下のそなたに甘えられたいのに甘えている。そなたは甘やかすのが上手い」


 急な環境の変化で人に寄りかかれない中、頑張って来られたんですもの、私一人くらいは陛下を甘やかす役割でも良いではないですか? 

 前王妃さまはその名に恥じぬ行いを意識しすぎてお互いに甘えたり頼ったりが出来ない状態だったのでしょう。


 私のお腹を撫で続ける陛下の髪をそっと撫でると13歳の時にバラ園で見せてくださった穏やかな笑顔で

「愛しい気持ちとはふと心の中で湧き上がってくるのだな」

 なんて仰います。イケオジが可愛いのです。


「陛下!!探しましたよ!」

 バーン!とグランマニエ公爵が登場。

 いえ、私の寝室にいきなり入ってこないで?!

 

 びっくりしたからかお腹が急に痛みます。

 側にいた陛下も感じ取って、

「いぃ・ぃ・・医者ーー!!!」


「侍従、侍医を連れてきてくれ!!」

 グランマニエ公爵も動揺。

 メイド達も出産準備を始めてくれます。


 そのまま陣痛の痛みが出て来たので、


「うるさいいぃぃ!でてけー!!」


と絶叫してしまいました。

 


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