第2話 高位貴族は会話に毒がいっぱい盛れるのです
王城のプライベートな方の大広間に通されると既に陛下と宰相、大臣など重鎮方が勢揃いで渋いお顔。王太子とご令嬢が部屋の隅で青い顔をして項垂れていらっしゃいます。
こうなることは想像できそうでしたのに何故根回しをしていらっしゃらなかったのかしら。
軽く礼をして従者に席に案内された家族たちは愛想を振る気も全く無く無言で着席しちゃいます。無礼過ぎますが誰も何も仰いません。
私の家はカラクテトラ国三代目王レイナルドの弟であったルーベルトでグラードの姓を頂いたのが始まり。
先代公爵であった祖父の元に先王の姉君が降嫁されてますし、過去にも幾度か王家から婿入りも嫁入りも記録にある旧家。名実ともに筆頭公爵家として扱われています。
他の公爵家も臣籍降下が始まりで幾度か王族と婚姻を結んでいるので似たり寄ったりでは有りますが一番歴史が長いと言うことでちょっとだけ偉いらしいです。
ちなみに私の婚約は亡くなられた王妃様たってのお願いで成立しました。
グラード家としては先代が王妹を迎えたばかりの状況で敢えて嫁に差し出す必要が無いと辞退していたのですが、流行病で国内が荒れていた時に隣国に攻め込まれ先王陛下と当時の王太子殿下が立て続けに亡くなられてしまい、即位されることになった第二王子であられた現在の陛下はとても大変な思いをされたことでしょう。
陛下の急なご即位で正式な王妃教育を受けていなかった王妃様は必死に勉強に励み、社交も公務もこなされたと今も王城内で愛情を持って語られていらっしゃいます。そして陛下のためにもお産みになった王子のためにもせめて強い後ろ盾をと両親に私が産まれてから何年も何度も望まれたそうです。
ついに私が8歳のとき両親が王妃様の強い想いに折れて婚約を受け入れた。王妃様のご心情もご心痛も理解されていた陛下はともに頭をお下げになられたそうです。
そして2年後、今までのご苦労からかそれとも安心されたのか病を発症されてすぐに永遠の眠りにつかれてしまわれました。
この婚約は陛下と王妃様の王太子への愛情で成立したものだったのに破談になってしまったことには同席の皆様が心を痛めているのでしょう。
なのでここに集まっている理由も有って怒り心頭な我が家に仕方無しな感じなのかしら?お父様たちが普段から態度が横柄とかはないはず・・・です?
婚約破棄を喜んでしまった私も大変申し訳ない思いでいっぱいになってしまいました。
でも8歳の時に出会い頭からチッって舌打ちされて睨まれてしまったからびっくりで何も育たなかったのも仕方ないと思っています。
ですから私、王太子の名前を呼びませんし、敬称も付けませんの。直接話す事もないので今まで一度も私から話しかけたことはございません。まぁ、だからこそ冷酷女と言われたのかも知れませんが。
王太子妃教育も公務も必至にこなした10年弱。そんな中真実の愛だっけ?で遊び回ってた王太子。そんな相手に情けは無用ですわね。
「王太子を廃嫡にする」
陛下が静かに宣言をされました。
皆様が無言ですが納得しているようです。
「父上!何をおっしゃってるんだ!王子は俺しかいないだろう!?」
「確かに王子は一人だがここにいるのは準王族たちだ。王家の血を継ぐ者たちなのだからどうとでもなる」
父親の絶縁宣言とも言える言葉を聞きながら項垂れる。
「そんな・・・」
「お前は自分以外の王子がいないことで慢心し傲慢になった。その彼女の本質も見極めずアルステリアを罵倒したそうだな」
「アルステリア・・・どころかグラード家からも好かれていなかったのに良く愛されている気になっていたものだ」
現実を突きつけられた王子は呆然としている。
「エレイン嬢のおうちに住まわせて頂けばよろしいのでは?」
優雅に扇子を仰ぎながらグランマニエ公爵夫人が仰った。
「王子には王子の責務が果たせないでしょう?それにお嬢さん、王子の結婚には妻が純潔であることが絶対条件ですわよ?」
「王宮の東屋で絡み合われたら見えてしまうのですよ。王宮仕えのものはわりと目撃してますので」
財務大臣のサンドロス公爵も眉を寄せて
「お二人が王宮に残られるのは難しいのではなくて・・・?」
準王族の親戚たちからそれぞれに苦言が貰えて幸せですわね。ふふ。
「とりあえず王子とエレイン嬢はちゃんと婚姻してくださいね!運命の恋応援致しますわ!」
私は何となく思い立った考えが案外いいことな気がしてしまったので提案することにしました。
「陛下、今ここに公爵家の重鎮が揃っているうちにご相談があります。よろしいでしょうか?」
お父様もお母様も何事?ってお顔ですが私はこの10年を無駄にしたくないのですもの。
絶対良い方向に致しますわ。
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