第34話
小人の潜入で許可証は必要ないと解ったとはいえ何があるかわからないので人目を避けて西にあるルナの村からラハナスに入る事にした。ラハナスは時計回りにニレの村、シフォの村、モルネの村、ルナの村、ルピナの村とある。ルナの村は山側に近く人は少ないはず。
「兵隊さん多いですね」
「多いなー」
「多いわね」
おかしい。人の出入りが一番多いのは南のモルネの村側のはず。
「早めに宿を取ろう」そう2人と話した時に声を掛けられた。
一目で分かる黒髪の美少女だ。何処かしら魔女なんではと疑いたくなる美貌をしている。
「あんた達、よそ者?」
「旅の人間ではある」
「はぁー、それでこっちに来たんだね」
溜め息を吐く少女。持っていた野菜を置き、店の中に入っていく。
「こっち」
俺達は店の人に挨拶して中に入った。
「で、なんか後ろめたい事でもあるからこっちの村から入ったんでしょうけど、今は隠れた方がいいかもね」
「宿屋ないか?近くに」
「あるよ、私の家」
少女と一緒に歩きながらなんで兵士が居るか聞くと
「最近人攫いの連中が出てくるって噂なの」
「それにしても多くないか?」
「この村の中で拐われた人が居るのよ」
「なんで捕まらないんだ」
「だから、こんだけ兵士が居るのよ。ここが家」
看板に薬草店と宿屋の文字が書いてある。
「ベッドはふかふかよ」そう言うと少女は奥に入って行く。
宿屋の部屋に着くと一息つけた。
「う~ん、変に兵士さん達に目をつけられたくないし結界どうします?」
「情報がないし、捜索範囲が広いからな少し様子見だな」
王都には早く行きたいが仕方ない。
ぶらぶらしてみようと宿屋を出る。
果物屋の前でさっきの美少女に会った。
「あら、ストーカー?」
「なんでだよ」
「だってわたし、可愛いから」
「おいおい、エル、俺達と遊ぼうぜ」
いかにもなチンピラが3人やってくる。
「こんなところで何してるんだよ」
「見てわからない?買い物」
「美少女にからむチンピラ三匹か」
「なんだお前、エルの彼氏か何かか?」
「宿屋の客だが?そんなことよりも恥ずかしいぞ、お家に帰りな」
「テメー舐めてんのかよ」とチンピラ常套句とともに胸ぐらを掴んでくる。
「はぁ、いいから落ち着いて帰れよ、悪いことすると神様にどやされるぞ」
「神様~?笑わせんな。今のお前を神様は助けてくれるのか?あぁん」
あっそうか。殴ろう。殺さん程度に。
必殺!軽く触れる小指。
ブン‼️ピトッ‼️
ズッ~~ドン‼️
おお、飛んでから落ちるまで間隔あったなー。
「おおおお~い。ぶっ飛んだぞ❗️なんだよアレ、お前何やったんだよ」
チンピラが飛んだチンピラに駆け寄って睨んでる。
なんだ。もう一回ご所望か?
あっ、逃げた。
「あんた、どんな加護持ってるのよ、怪力とか何か?あいつら最近変なのとツルンデルから関わりたく無いのに。あんた早めに別の村に行った方が良いよ」
行ってしまった。う~ん。助けただけだが。まぁいいか。夕方まで散歩でもしながら結界を探すか~。
「帰ってきた、帰ってきた。翔兄さんご飯食べに行こう?此処ご飯出るらしいよ」
「そうなのか。行こう」
此処の宿屋の飯も上手いし布団もふかふか、2、3日泊まろう。
ガタガタ。ガタガタ。朝からうるさい。下で何かあったようだ。眠い。
眠気が覚めて下に降りると宿の食堂がぐちゃぐちゃになっていた。
近くにいた同じ宿泊客に聞く。
「何があったんだ?」
「朝早くに誰かが荒らしたらしいんだって」
「・・・ふーん」
美少女のエルが片付けをしているのが見える。
「おい、美少女!ちょっと」
「何か?」
「こういう事はよくあるのか?」
「無いわ。十中八九きのうの連中」
「で、どんな感じ?お店」
「食堂は片付ければいいけどお店の方が大変。薬草は取りに山に行かないと」
「手伝おうか?」
「別にいらないわ、ご飯は別の所で食べて来てね」
麻木姉弟とよその村に行ってみるが、どうも大き過ぎるからなのか調べる段階にまで時間がかかる。人が多い。
それに兵士が邪魔だ。町中ウロウロされては調査出来ない。
「どうする?別の村に泊まってみる?」
「兵士が居る間は無駄だろうなー」
夜中に布団から出て通りを眺めていると、下の宿屋から声が聞こえる。
また、あいつらか?と降りていくと宿屋の家族が話をしていた。
「最近の嫌がらせは限度を越えています」
「わかってるさ。しかし、誰が関わってるか、わからない。兵士かもしれん」
「どういう事?」
「取り引き先の店が安くするように言ってくる。しかもそれを誰かに言わせられてるみたいなんだ」
「なんで、薬草がないと困るのはみんななのに」
「明日はまた別の所に話に行かないといけない」
「なら薬草は私が取りに行ってくる」
「待て、最近の山は例の人攫いが出るって噂だ。お前に何かあったら」
「大丈夫。私の加護知ってるでしょ」
「気をつけてね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます