第31話

朝早くガドラに着いてわかった事は確かに少しは大きいがここも都会では無いことだった。

この町に教団の結界は無さそうに思える。

「翔、私はミナトと町の周囲を見てくるね」

「頼んだ。俺は町の中を見てくるよ」


町の賑やかな場所に行くと人だかりが出来ている。石柱がある回りでガイドのような男が大きな声で集まった人たちに語りかけている。

「ここが、かの有名な権釈大師の建てた寺院シャモ寺だよ~」

そのすぐ横にはお土産屋がいくつか出ていた。

「この水は権釈様の飲んだ湧水だよ~1本5コルド」

「焼き鳥いかがですか~」

喉も渇いていたので調査がてら1本貰う。

「なぁ、ここが有名な御利益のあるお札売ってんの?」

「そうだぜ。ここの奥の寺にいる方に寄進すれば貰えるぞ」

「何に効くんだい」

「そりゃ、家内安全とかなんとか」

「知らないのかよ」

「だから家内安全だよ!うるせぃ」

「父さんもうお水無いよ」

「汲んでこい」

「湧水は近いのか?」

「寺の中から貰うんだよ」

「それって、この辺の川の水と違うんだよな」

「あ、あったり前だろ!寺の中の湧水でい」

店主が怒る前に寺の方へ進んでみた。

中もそこまで広くない境内を歩くとよくわからん銅像?が建っている。

権釈様らしい。

「多く寄進すればそれだけご利益あるよ~さあどうする?」

誰か買ったのか、拍手が起きている。

教団のものか確かめるために輪の中に入り寺の者に札を見せてもらった。

「ニコ?これ俺にはただの札なんだが、教団のか?」

「違うね」

簡単な念話で真偽を確かめた。

これは無駄足だわ。札は丁重に返して俺は麻木とミナトに会うために宿に行く。

「やっぱり、ベッドが一番よね~」

宿に行くとベッドがふかふかだと喜びながらくるまる麻木姉が俺を見て恥ずかしそうにするが無視してミナトに話しかける。

「結界どうだった?」

「無いと思います」

「例の札、見てきたけど、教団物じゃないってさ、ニコに念話で確認したよ」

「はずれかー」麻木姉がベッドの布団を綺麗にしてお茶を出してくれる。

「なんだか高そうなお茶じゃないか?

「魔法でお茶になる花を出してみたの」

「ヘェ」

「これからどうしますか?」

「その事なんだけど、王都に行くべきだと思ってる」

「ちょ、ちょっと‼️」

ニコが念話で姉弟にも分かる強さで話しかけてくる。

「待ってよ、危ないよ」

「いやいや、すでに3つ町を回って何も無い。つまりこの辺は重要じゃ無い場所って事だろ」

「でも、いきなり教団の本部がある場所に行かなくても」

「私もまだ早いと思うな~」と麻木姉が言うのでミナトにも聞く。

「僕も翔兄ちゃんと同じ意見です」

「2対2」

「とりあえずまっすぐ王都に行く、途中の街に寄ることもあるけど」

ニコと麻木姉は渋っているけど、これが最善のはず。何よりぐだぐだしていて良いのか?


意見が割れた事で2日程ここで食料の用意や教団の話を聞いたりしてきた。

特に何かする事がないので少し離れた場所に移動して剣を出してみる。ユグドラシルの枝。刀というよりはなんというかマジで木刀。切れ味を確めるために近くの木に向かって振ってみる。

(スッ)、と言う感じで木が切れている。あー、なるほどね。

次は岩を切ってみる。(ズッ)と音が聞こえた気がする。切れた。

少し移動して鉄の残骸を見つけたので切ってみる。(シュッ)。ヘェ~~~。

「ニコ?聞いてるか?おい、ニコ!」

「どうしたの?何かあったの?」

「いや、俺剣やばくないか?」

「どういうこと?」

「鉄も切れたぞ」

「そりゃ、切れるよ」

「お~い、小僧か~わしおるぞ~剣の事はわしに聞け~」

「じいさんも居るのか?」

「うん、居るよ~。今日はファナリスと一之瀬夫妻とご飯食べようって」

「小僧やーい、お前さん。わしが教えたんやから鋼鉄ぐらい切れるワイ」

「ちょっとだけ呼ぶね」

えっ。

古い丸いテーブルにイタリアが広がっている。飯旨そう。

「はい、どうかなこの味?」

「うむ、旨い」

自然に蒸し貝を口に入れられて食べてしまった。

おいおい、何でリアルに戻ってるんだよ。

「説明が難しくなるからここの方がいいかなって」

「小僧、1つ言うぞ。わし稽古つけた。お前強くなった、更にお前さん光の従者なんじゃから当たり前よ」

じいさん解らんわ。

「あんた、馬鹿なの?」

はい出た。毒舌妖精。

「剣の神様に教えてもらって並みの達人に成るわけ無いじゃない」

「いや、俺素振りやら、走り込みとかばっか、やってただろ」

「わしのオリジナルの教え方と光の空間の相乗効果」

「あと、ボクの特訓とかかなぁ」

すげぇ、神様力。

「でも、お前さんにはがっかりしてる」

「何で?」

「わしが教えた型毎日してないじゃろ

「あ~、忘れてないよ」

「ニコちゃんちょっと空間用意してちょ」

「わかりました」

えっ、ちょ。

「小僧?~テメェなーに忘れてんだ?毎日やれって言ったよな」

「あー、いや爺さん」

「よし、構えろ、すぐ構えろ」

「待って~~」

構える前にぶちこまれた。その後ボコボコにされて起きた。いて~よ。

「僕も優しくしすぎたかなぁ」

って膝枕してくれていたニコが上から顔を覗く。いや、まじで今は勘弁してくれ。

「ちょっと油断してたわ」

「そろそろ立てる?ハルやミナトが探してるかもよ」

そうだった。あれからどれくらい経った?すぐに戻らないと。

「よし、じゃ、行ってらっしゃい」

戻って見るとほとんど時間はかわってないようだったが町に戻る。

どうやら、ミナト達はまだ買い物から帰ってなかった。


少しして横になっているとドタドタと音が聞こえる。

「翔兄ちゃん居る?大変だよ!教団の連中が現れた」

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