第30話

東の街ガドラへ向けて出発した俺達。

「ここからガドラまで行ってる途中に夜になりますね」

「ワルい、先を急ぎたくて時間の事忘れてた」

街を出てガドラまで半分ほどという所で日が落ちはじめた。

「帰るのも手間だし此処で野宿するか?テント張ろう」

幸い街道沿いには綺麗な川が流れていた。

「俺がテント張るから2人は水汲み頼む」

道から少し離れた場所にテントを素早く張り釣りの用意をする。飯がないのはまずい。ニコを呼びつけて飯を頼むのもなんだか引ける気がする。

「お~い水汲んできたよ。翔何してるの?」

「釣りの用意っと良し出来た、ミナト行くぞ。今晩の飯を釣りに」

「ハイ」

「あのさ…」

「任せろって、待ってろデカイの釣って来るわ」


「いないですね」

「居ないな。一匹も釣れない」

腹が減った。これは明日街に着くまで飯はお預けコースだ。

「2人ともご飯の用意出来たよ」

えっ?ご飯。

「街を出る前にもしかしたらと思って酒場の人に頼んでいたの。あといくつか食料も買えたし」

「姉さん早く言ってよ」

「でも、2人ともすごくやる気だからなんだか言い出せなくて」

「すまねぇ麻木姉。助かる」

「食べましょう」


火を囲い交代で寝る事にする。最初は俺が番をする。

「…」

星が降りそうな程の空だ。此処じゃ無いがあの星の何処かに母さん、始がいるのかもしれない。いや、みえる訳も無い。もうこの世界には居ないのだ。別の世界で幸せになると言っていた。

結界を壊し教団中を倒す事が俺の今の道。


手持ち無沙汰になった。星は綺麗だし空気も旨い。だがやることが無い。流石に剣を振り回していたら寝ている2人に悪い。何かすることがないかと考え魔法で光を産み出す。小さな球体の魔法これなら遠くから誰かに見られても何なのかわからないだろう。周囲には誰もいない。球体を1つ素早く動かし手の周り頭の周り火の周りテントの周りに走らす。もう1つ増やし螺旋階段を登るように降るようにダンスをするように動かす。次々と光を産み出しては今度は妖精の形にしダンスさせる。ノームが穴掘りをしている。そのうち小さな頃の落書きから飛び出したように光の妖精が大勢になった。

「わぁ~」と驚く声が聞こえて振り向くと麻木姉が起きて来ていた。

「麻木姉起こしたか?」

「麻木アネって私ハルなんだけど」もうって顔をするが。

「知ってる」

「…それスゴいね」

「暇潰しに光で遊んでただけ」

「まるで元いた街の夜景のよう」

「…なぁ、麻木はどうして旅に来ようと思った?」

「そうだね~、最初私が来た時運良く帰れた時少し惜しいって思った」

「惜しい?」

「うん、私ドジだから、色々つま付いて、向こうで上手く出来てなかった。帰ってからこの世界でもっと探検?すれば良かった異世界転生の小説良く読んでたし。私も何かすごい人生生きれたかもとか。でも、あの日弟を乗せて崖に突っ込んでしまった時、すごい怖くなった。私は良いんだよもし死んでても。でも弟は違うミナトは優秀だし、皆から好かれてる。もしミナトが死んでたら帰れなかったらそれは私のせい」

「…」

「私はこの世界からミナトを元の世界に戻す為に旅について行こうって。思ったの」

「戻る?どうやって?」

「ファナリス様が教えてくれたの。この世界を元の正しい環境に戻せばもしかしたら出来るかもって」

「騙されてないか?ファナリスだぞ」

「でも私はそれを目指すの」

「はぁ、お前も大変な奴だな」

「姉とか兄とかって、生物はみんなそんななのか?」

「何それ」

「いや、別に」


光の妖精が街を踊る様子をしばらく見ていた麻木はいつの間にかまた寝てしまった。少し火を足しながらミナトが起きるまで待って交代で寝床に入る。

起きたときは朝の日差しはもう上がってしまっていた。


「朝ごはん出来てますよ翔さん」

「翔、昨日はごめんね。アタシの番も見てくれたんだよね」

「気にすんな、麻木」

「ネェちゃん駄目だよ」

ハルはミナトに駄目だしを食らってたじたじだが別に大したことじゃない。仲間なのだから持ちつ持たれつだ。昨日は実際ハルのお陰で飯抜きじゃ無かったし。朝ごはんを食べれるのもハルのお陰だ。まぁハルとは呼ばないが。





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