第5話雪の街

 朝早く母さんは帰って来てくれた。疲れたから今日の街に行く約束は無理そうだから二人で行ってきてと言って寝てしまった。

 せっかく一緒に行けるかもって思ってたけど。母さんが忙しいのは知ってるから仕方ない。

 俺達は手紙を書いて置く。過労死しないでねって。(始は何か普通の文章だった)

 施設から出ると雪が少し降っててびっくりした。施設は寒くないから寒くなって来たことに気付かなかった。でも街はいつもより綺麗な気がした。久しぶりだからかな。始は何だかやれやれみたいな顔して俺を見る。雪が降りそうだとか季節とか分かってるのが普通だとか。良いじゃんか。雪降ったら嬉しいだろー。俺達の前の世界じゃ雪降る地域じゃなかったから、母さんが連れて行ってくれたスキー場しか見たこと無いし、雪って綺麗だよな。知ってるか?雪って水の結晶なんだぜ。始めがぽか~んって顔してる。知らなかったのかな。ふふふとアニメのキャラみたいな顔して居ると始が大丈夫?みたいな顔して見てくる。[まぁ、氷の結晶だけどね、後種類も結構あるみたいだよ]って氷は水だろ。

 とにかく俺達の向かう場所はおもちゃ売り場だ。不思議だよな、此処の街は結構大きいし、おもちゃ屋もあるし、いつもテレビで見てたアニメでは、荒野とか砂漠が出るとその周りは何にも無いって言ってたし、ほぼ文明レベル?が昔あったとか居たとかなのに。

 俺達は母さんからもらったお金で新しいゲームを買った。前の生活ではゲームをこんなに買うこと無かったよな。

 外で遊んでたし、夢中になって眺めてたら直ぐに時間が経っていた。[始め〜]何処行ったんだよ。[始めにぃー]。あれ、近くに居ないのかな。列車売り場に行って見たけど居ない。トイレ?俺も行っとこう~。この世界に来て初めて一人きりな気がしたら怖く見える。周りに居る人が急に冷たく見えた。どうしよう、壁の近くで小さく丸まって居ると俺を呼んでる声がした。

[翔何やってんの?]横を見たら街で偶に遊んだ事もあるグノが見てた。

[ちょっと疲れたから][迷子?][違うよ、でもいま一人なの!]恥ずかしい気がして怒った感じになって。そしたらグノが一緒にプラモデル見ないかって。

 付いて行った。グノとプラモデル見て話してたら少し元気になった。ちょっとして入口で始が俺を探してた。グノが始を呼ぶとこっちに来て[此処にいたのか?]って始の頭に雪が付いてる。外に探しに行ってたのか?って聞くと、そうだよって。何だよ探したのはこっちだよ。それから3人とグノのお父さんと一緒にご飯食べに行って街の中色々見て回った。そろそろ疲れたから帰ろうって、夕方の太陽になったから。

 あれっ。始が見てた噴水の方に話しかけたけど、返事が無い。ゾワッとした。でも、さっきまで一緒に居たのに、周りに居ない。今度は確信がある。さっきのおもちゃ屋?ご飯屋さん?銅像の前?何処だろ。ホントに暗くなって夜の灯りがついた。どうしようもう帰ってないといけないのに母さん心配しちゃうよ。もう一回広場に戻ったけどやっぱり居なかった。

 施設に戻ると母さんが表で待ってた。凄い怖い顔してる。

 母さんどうしよう始にぃーが居なくなった。

 母さんは施設の皆に始を探しに行ってくれとお願いして回った。俺は心配無いからと部屋に戻ってなさい、って。

 一人、部屋に戻った。何だか凄く寒い気がして、急に毛布にくるまったまま二人が戻ってくるのを待った。

 いつ頃か判んない。寝てしまった。外が少し明るくなってた。玄関の方で声がした。

[一体、何処に行ってたの!][ごめんなさい][翔と何で一緒に居なかったの!][太陽が何処に行くのか識りたかったから][まったく!それぐらい勉強して解ってるでしょ!][ごめんなさい]母さんと施設のおじさん達に囲まれた中で始が下を向いてる。[始にぃー]俺は玄関から飛び出して始にしがみついた。帰って来てくれて良かった。凄く怖かった。泣きながら叫んでいるとおじさん達も解散して母さんが僕達の手を引いて家に入る。その日はみんな疲れてずっと寝てしまった。




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