第5話 最強に可愛い清楚系ギャルが彼女になった

 この日、俺は音無さんの顔がまともに見れなくなった。

 あれから話すこともできず、時間だけが過ぎていき――放課後。


 俺はそのまま家へ帰ろうとしたの――だが。



「待ってよ、井ノ出くん」

「……音無さん」



 名前を呼ばれ、しかも腕を引っ張られていた。

 ……怒っていないのか。


「なんで避けてるの」

「いや、だって……俺は最低なことを」

「ううん、嬉しかった。こうして話せるようになったし」


「え……」


「だから、もっといっぱいお話ししよ」



 振り返ると音無さんが抱きついてきた。



 ……!?



 音無さんの小さな身体が俺の胸の中へ。

 はじめての女の子に抱きつかれて、俺は頭が真っ白になった。


 なぜ。

 本当になんで……?



「音無さん、俺……」

「ねえ、井ノ出くん。キスの先もしよっか」

「……え?」


 いきなり制服を脱ぎ始める音無さん。

 ちょ、え!

 教室でなんてことをっ!


 俺は思わず止めた。


 教室内には、もう誰もいないけど危険すぎる。



「なんかね、井ノ出くんと話すようになってから……わたし、変なの」



 まてまて、これやっぱり催眠術掛かってるんじゃ……? よく見ると、音無さんの目はどこかおかしかった。息も乱れているし……まさか、本当は効いていたのか?


 分からない。

 分からないけど、でも、また音無さんと話せて嬉しい。


「お、落ち着こう」

「……ダメ。キスしたい」


 と、音無さんは俺に襲われてしまった。

 まるで貪るようにキスをされて……俺はされるがままになっていた。



 これ、どう考えても催眠術の効果っぽいぞ!?



 普通、ここまで大胆になるだろうか。

 あの超クールな音無さんが……ありえない。昨日から掛かったままだったんじゃ。


 そうだ、催眠術は“解く”こともできる。


 俺はいったん音無さんを引き剥がし、彼女の耳元で囁いた。



「音無さん、眠りから覚めて」



 手を鳴らすと、音無さんはハッとなって俺から離れた。



「…………え」

「音無さん? 大丈夫かい?」



「わたし、なにを……でも、覚えてる……。わたし、井ノ出くんとキスを……」



 一気に赤面する音無さんは、涙目になりながらも走って行ってしまった。


 ……ということは。


 やっぱり俺の催眠術は成功していたんだ!!!



 それが何よりも嬉しくて、感激した。

 そうか、俺の催眠術が強力すぎたんだ。



 俺も教室を出て帰宅することにした。



 校門まで向かうと、そこには音無さんの姿があった。あれ、帰ったんじゃ?



「……井ノ出くん」

「うっ……ごめん、なさい」


「馬鹿。催眠術なんて使わなくても、わたし、井ノ出くんのこと好きなのに」


「マジで!?」

「だからもう催眠術禁止ね」


「えぇ……」

「ダメだったらダメ。ていうか、記憶には薄っすら残ってるんだよね。キスとか印象が強いものは覚えちゃうのかも」



 そういうものなのか。

 結構、記憶が朧気というか曖昧にはなるようだが、身体的接触は記憶に残りやすいのかな。これは興味深いな。



 ◆



 その後、俺と音無さんは学年一のバカップルとして有名となった――。


 催眠術のおかげで最強に可愛い清楚系ギャルを彼女に出来たのだ。




【あとがき】


 ありがとうございました!

 一旦、ここまでとさせていただきます。

 また長編化等検討したいと思います。

 応援ありがとうございました。

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催眠術で好きな子に告白してみた 桜井正宗 @hana6hana

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