第4話
魚類さんとドライブしていると「トゥルルルルルー」と電話が鳴った。
沈黙になってたのでなんとなく気分が楽になる。
「ほいこれ、お前のねーちゃんだ。」
姉貴からの電話だったのか。少しだけ億劫。
「もしも……。」
「きゃーーーーーー。たみくん元気?怪我とかしてなぁーい?」
「ここ最近で僕に最もダメージを与えたのはあなたですけど、何か?」
「あ、なんか怒ってるでしょ?」
「僕と同じシチュエーションで怒らないやつをぜひとも見てみたいよ。」
「大丈夫だよ。もうキャンプのみんなも待ってるから〜。」
「いや、日本語が成立していないんだが?」
「もう、細かい男は嫌われるぞっ!」
「そんな性格で慕われてる姉貴がおかしい。どんなトリック使ってんだ。」
「もう。おねーちゃんでしょ?」
「指摘する部分はそこなんですか?」
「じゃあ〜、おねーちゃんがみんなと仲良しになるコツを教えてあげるよぉ!」
「別にいいっ……」いや、待てよ。姉貴がよくわからん手法で仲間を増やしてじゃんじゃん成功してるのは事実だ。ここは真面目に話を聞くべきかもな。もし、僕のスキルアップにつながるならこれはチャンスだ。千載一遇の好機だ。
「ちょっと話を聞こう。どんなコツなんだ?」
「あれ、急にどうしたの?じゃあせっかくだから、おねーちゃんって呼んだら教えてあげるよ〜。」
「お、お、おねーちゃん。」
「聞こえなーい」このクソ姉貴。
「オネエチャーン」
「もう、愛情表現が下手くそなんだからー。でもまあ教えたげる。」
よし!と静かにガッツポーズをする。
とはいえ、こういうときのアドバイスは大体決まっている。
どうせ適当に誰にでも当てはまる占い師みたいな都合のいい言葉だ。
だからいい笑顔をしろ。とか相手の気持ちになれ。みたいなありふれたことを言うんだろう。
「それはねぇ……。かねだよっ!」
「へ?」血液が凍った。
「お金を上げるんだよぉ〜!」
「チョットキコエナカッタナー。」現実を受け入れたくなかった。
「人間好きなものは人それぞれでしょ?だから好きなのと交換できるお金を渡すのっ!するとね。蛆虫みたいにプライドばかり高い権力者がぞろぞろと……」
ピッ。電話を切った。
体中が冷や汗でぐっしょりだ。夏なのに寒い。ホラー特集を見たあとみたいな気分だった。
姉貴のダークサイドを垣間見た気がする。というか全部見た気がする。
純粋無垢な声音と笑顔で極悪非道な言葉を言う姉貴はまさに恐怖そのものだった。
要するに、姉貴は闇が深すぎた。
「まあなんつーかそういう人だから。気にすんなよ」と魚類の人がフォローしてくれた。
なんかこの人普通に優しいよな。ただ胸が恐ろしく真っ平らなだけでやさしいよね?
きっとハグされたら骨が当たっていたいんだろうなと想像したのは僕だけの秘密だ。
それからしばらく高速道路を走り、目が覚めるとパーキングエリアだった。
「おっ、起きたか。トイレ休憩だ。行って来い。」
眠気眼をこすりながら、意識を覚ましていく。
知らない人とドライブってのに違和感を感じる。
ポジティブに言えば新鮮って感じ。
天気はこれでもかと言うほどの晴天。自然に囲まれた空気は澄んでいて気持ちよかった。
「なんか食ってくか?美味そうなもんがいっぱいあるぞ。」
確かにお腹は空いていた。考えたら朝起きてから何も食べてない。というより食べるものがなかったのだ。
「ではごちそうさまです。」
「送迎だけでは飽き足らず、私に奢れといっているのか?」
目がマジなのやめてくれないかな。やっぱり優しいって言ったの訂正で。
そういえば財布は持っていたかなとリュックサックをあさると、子犬の可愛いポーチが出てきた。
中を除くと諭吉がすごい体制で5枚入っていた。
可愛くねぇ。
「何食いたい?」
「別に好きなの食べればいいじゃないですか。」
「連れないなぁ。ここは一緒に飯食って絆深めるべきだろ。言っとくが私は頼りになる女だぜ?料理もできるし、性格もいい。力仕事もできるからな。あれ、もう私以上の人間って居ないんじゃない?」
なんか魚類さんが自画自賛を始めたので、店内をウロウロして美味そうな物を探す。
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