第2話 初恋

 数日後エリックが婚約するという話が聞こえてきて、レナンは泣いた。


 相手はエリックの事を助けた令嬢との事で、船の事故にて海に落ちたエリックを命がけで助けてくれた事がきっかけらしい。


「わたくしが助けたのに」

 初恋が無惨に散ったのもそうだが、手柄を横取りされた。


 悔しいやら悲しいやらで食事も喉を通らず、部屋に籠っている。


「まぁ! こんなに濡れてどうしたの?!」

 と、母リリュシーヌはびしょ濡れになって帰ってきたレナンにすぐに気づいたので、無断で魔法を使用した事はあっという間にばれた。


 その後にこの婚約話を聞いたのだが、さすがに娘が可哀想に思う。


「その女も強かだけど、王子も悪いわ! 助けたのが別な人ってくらいわかりなさいよ」

 気を失った人に、無茶をいうものだ。


「せめて最後に思いを告げたいの。お母様、それくらいはいいでしょうか?」

 叶わぬ恋だとはわかっているから、せめて思いくらいは伝えたい。


「わかったわ」

 魔法の無断使用も人助けの為に行なった事だし、咎めるのは可哀そうだ。


 心優しい娘の頼みに協力を約束する。


 しかし相手は王太子、そう簡単に会えるわけはない。


 普通に謁見を頼んでも縁もゆかりもないレナンと会うわけはないし、「本当はわたくしが助けました!」と名乗っても証拠もない。


「せめてお手紙を渡せたら」

 普通に出しても検閲がある、だが一平民の女の恋文など、王太子に直接渡される可能性などないに等しい。


「では直に渡しに行きましょう」

 それが一番確実だ。


「どういう方法でしょう?」

 何かコネや伝手があるのだろうか?


 リリュシーヌの計画にレナンは耳を傾ける。

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