海であなたを助けたのはわたくしです。なので鳥籠に入れるのはお止めください

しろねこ。

第1話 海での出会い

「大変だわ!」

 レナンは後先考えずに人が落ちた場所へと向かう。


 風魔法で何とか落ちた場所に着くが見当たらない。


 意を決し、魔法を解除して海に入る。


 見つけた。


 深い海の中で漂う人影を見つけ、急ぎ近づいて腕を掴み、魔法で浮上する。


(絶対後でお母様に怒られる!)

 そう思いながら必死で陸地を目指した。





「綺麗」

 金髪も白い肌も何もかも美しい。


 何とか浜辺にたどり着き、助けた人を改めて見たらとっても綺麗な人だった。


 っていうか憧れの人だ。


「息はしてる、体温も大丈夫。良かったぁ」

 レナンは安心した。


 この人が死んでは国が大変なことになる。


「まさかエリック様が船から落ちるなんて」

 思わずまじまじと見てしまう。


「改めて見てもやはり美しいわ。きっと将来はどこかの綺麗なお姫様と結ばれるわよね」

 羨ましいとため息をついていると、人の声がした。


(まずい、事情を聞かれたら、お母様に魔法を使用したことがバレてしまう)

 急いで去ろうとしたら足がもつれ、エリックの方に倒れこんでしまう。


 抱きつくような姿勢になってしまって顔が真っ赤になった。


「わざとじゃないんです、ごめんなさい!」

 誰も聞いていないのに言い訳をして、大急ぎで走り去った。






 体に重みを感じ、謝罪の言葉が聞こえた。


 重い瞼を何とか開けると、長い銀の髪と青い双眸、そして美しい顔が目に入った。


 慌てていたためか、女性はエリックが目を開けた事も気づいておらず、そのまま走り去っていく。


 確か海で気を失う前に見たのも銀色だった。


(セイレーンか? こんなに、美しい魔物ならばいいかもな)

 と柄にもなく思ったのだ。


 普通の令嬢が海に潜ってまで助けに来ないだろう、そこで記憶が途切れた。







「しっかり、しっかりなさってください!」

 自分の体を揺するものがいる。


「なんだ……?」

 先程の女性かと思い、目を開けるが、何となく違う気がする。


 だが、明るい金髪と青い目は若干似ていた。


(自分の見間違いか?)

 銀髪に見えた気がしたのだが。


「良かった、なかなか目を覚まさなかったので心配していたのです」

 女性は泣いていた。


 相当心配してくれていたらしい。


「君が、助けてくれたのか?」


「そうです、ここに倒れているのが見えて……」


「ここに? では海中まで来てくれたのは、別な女性か?」

 そう問うエリックに女性はハッとする。


「実は海まで助けに行ったのですが、そこまで覚えてらっしゃったなんて。私、水魔法が使えるんですよ」

 感じたのは風のような気がするが、頭痛が酷くて記憶が朧げになる。


 そこでようやくエリックの従者が現れた。


「申し訳ありません、助けに来るのが遅れてしまいました」

 従者のニコラは頭を下げた後、傍らの女性に目を向ける。


「こちらの女性は?」


「俺を助けてくれたそうだ」

 介抱してくれたのは事実だ、だからそう伝える。


 海での事は半信半疑だ。


「そうなのですね?! もし良ければ主を助けてくれたお礼がしたいのですが。お名前をお伺いしてもよろしいでしょうか」


「マリアテーゼと申します」

 義理は果たそうと思ったので城にもてなしたのだが、そのせいで予期せぬ方向に向かう事になってしまった。



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